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無限の世界  作者: 蒼風
終章「太古の時間流れる世界」
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終章二話「立ちはだかる存在」(2)

 二人の目の前に現れた巨大なゴーレム。それは少し前にレグナエル達と戦っていたタイプと同種のものなのだが当然二人がそんな事知る由もない。ただただその大きさに目を見開くばかりだ。


「…………大きいね」


 ふと、漏らしたリアのそんな呟き。それに刀弥は内心で同意しつつも注意深く巨大ゴーレムを注意深く観察する。

 その大きさに驚きはしたが二人の足は止まっていない。刀弥が先行する形でそのまま巨大ゴーレムに近づいていく。

 これに対し巨大ゴーレムは静止。右腕を大きく振り被り右から左へとスイングの準備に入る。

 そんな巨大ゴーレムの動作を見てリアが足を止めた。その代わりというよりに刀弥がさらに速度を上げる。

 距離はもう時期で腕の範囲内に入るという距離。既に巨大ゴーレムはいつでも振り回せる段階だ。刀弥が範囲内に入った瞬間、その腕をフルスイングしてくるだろう。

 刀弥は巨大ゴーレムを見据える。腕だけでないのは他の攻撃手段を警戒しての事だ。

 そうして彼の身が腕の範囲内に入った瞬間――巨大ゴーレムはその巨大な腕を振り回した。

 腕だけでなく腰や反対の腕もしっかり動かし、それによって振り回されそうになる体を両足でしっかり支えての全力の振り。当然、当たれば人の身などいともたやすく押し潰されることになるだろう。

 けれども、刀弥は即座に回避に移ることなく前進を続けていた。今やその瞳は己に迫ろうとしている強大な腕へと注がれている。

 待つのは軌道修正の難しいタイミング。そしてその瞬間が来た時――


 刀弥はその巨大な振り抜きを上へと回避した。


 斬波の足場を使って駆け上がったのだ。宙へと飛び立った彼の身を巨大な腕は追うことが出来ず彼の足下を過ぎ去るに留まる。

 しかし、直撃は避けたとはいえ大質量の移動だ。当然、それによって押しのけられた風が下から刀弥を煽る。

 けれども、それを事前に想定した刀弥はバランスをとる事で風に対処。そのままゴーレムの眼前まで近づくとその首元めがけて刀を走らせた。

 音もなく首と胴体が分かたれた巨大ゴーレム。先に首が地面へと落ちていき、その後に巨体が後ろへと仰け反るように倒れていく。

 そんな巨体から飛び降りる刀弥。そうして彼は後ろから追い付いてきたリアと共にさらに先へと進んでいった。

 とりあえず一難が去ってほっとする二人であったが、直後その表情が固まる。奥の建物の角からさらに巨大ゴーレムが姿を現したからだ。それも三体も。

 思わず刀弥は背後を見るが、やはりというべきかそこには巨大ゴーレムの胴体部を乗り越えてやってくるゴーレム達の姿があった。

 前後を挟まれた。と、なれば左右に逃げるしかない。

 幸いというべきか左右は森林で障害物は多いが通り抜ける事ができる。

 迷わず刀弥はリアを抱え上げて右の森林へと向かった。それに反応してゴーレム達も道を外れ二人を追いかけていく。

 視界には近づき大きくなっていく森。

 そうして二人が森林地帯に入り込んだ時である。木々の中から新たなゴーレム達が姿を現した。

 小柄で痩せたと言ってもいいほどの細い手足と胴体。恐らくこういった場所で力を発揮するタイプのゴーレムなのだろう。

 それを証明するようにゴーレム達は木々を足場にように使って次々と飛び移り二人を翻弄していく。

 二人はそれを悔しげに見つめ――てはいなかった。代わりにあるのはやはりという表情だ。

 前後の挟撃と左右への逃げ道。その構図が目の前にあった時、刀弥はすぐにこれが誘いだという事に気が付いた。目的地上、左は選べないため十中八九選ぶのは右だ。ならば当然、それを予見して待ち伏せをする事ができる。

 その事に気が付いた刀弥は抱え上げた時にその事をリアに話してある事を頼んでいた。

 彼が頼んだのは敵ゴーレムの不意打ちに対しての迎撃。刀弥がリアを抱え上げたのは運ぶためではなく魔術式の構築に意識を回してもらうためだったのだ。

 彼女が用いた魔術は先程用いた竜巻。ただし、今回は壁ではなく攻撃のための運用である。

 唐突な真下から反撃に小柄なゴーレム達は抵抗する間もなく竜巻に飲まれる事となった。そのまま螺旋描きながら上昇。最後は宙に放り投げられる事となる。後はただ地面に激突あるのみだ。

 金属音。ぶつかり砕けひしゃげる音々が重なり周囲に響き渡る。後に残るのは静寂と瓦礫と化したゴーレムの遺体ともいえる残骸だ。


「急ぐぞ」


 しかし、それを見送ることもなく二人は進む。背後から二人を追いかけるゴーレム達の存在に気が付いていたからだ。

 木々の間を縫うように止まる事なく進む二人。が、森を出て通路にでた所で前方からやってきたゴーレム達の射撃に襲われた。


「対応が早いな」


 この動きに刀弥は少し驚いたが、それでも動きは止めることなくゴーレム達に接近。刀で彼らの戦闘能力を奪っていった。


「急ぐぞ。こいつらは足止めだ」


 目的は後ろから追いかけて来るゴーレムの一団を二人のもとに辿り着かせること。先の二人の動きに対する対応としてすぐさま送った少数だったのだろう。

 そう判断して刀弥は急ぎこの場から離れようとした。

 が、そこへ正面から新手が姿を見せる。

 今度のゴーレムはずんぐりとした体系だった。胴体部が太く大きく、そこから手足が飛び出しているような形状。その背中には二門の方が背負われている。どうやら砲撃用のゴーレムのようだ。

 数は五体。新たに現れたゴーレム達は地面の上をスケートで滑るようにして移動して二人の方へと近づいていたが、ある程度進んだかと思うと唐突にその接近を止める。

 その行動に刀弥達は疑問を持たない。既に二人はこの後に何が起こるのか見当がついていたからだ。

 向こうが行おうとしているのは砲撃。あの場所から一気に二人を仕留めようというのだろう。

 だが、ここで止まっていけない。なにせ背後からはゴーレムの一団が接近中なのである。もし、ここで対処のために止まってしまえば途端に追いつかれてしまう。

 と、なればどうするかは考えるまでもない。迷わず刀弥は前に出た。リアと砲撃ゴーレム達との間に自分を置く位置取りで彼は砲撃ゴーレム達との距離を詰めていく。

 直後、砲撃ゴーレム達の砲撃が放たれた。同時ではなく砲撃を切らさないための時間差による連続発射だ。

 時間を置いて飛翔していく砲弾。その砲弾を刀弥は当たるものだけを見極めて対応していく。軌道を変え斬波で迎撃し時に砲撃の爆発で速度を上げる。

 そうやって刀弥は瞬く間に砲撃ゴーレム達の元まで接近。うち真ん中の一体の足元を刀で切断した。

 崩れる一体。その間に他の四体が刀弥に向きを合わせる。

 向けられる砲門。対して刀弥は足元を切断した砲撃ゴーレムに干渉した。崩れていく砲撃ゴーレムの倒れる方向を変えたのだ。

 直後、砲撃が放たれたのと右側の砲撃ゴーレムと刀弥の間に崩れ落ちた砲撃ゴーレムが割って入ってくるのは同時だった。

 右側の砲撃は崩れ落ちた砲撃ゴーレムに当たった事で爆発。その役割を無理やり終わらせられる事となってしまった。

 一方、左の砲撃はというと刀弥がスライディングで砲撃の下を潜る事で回避とした。そのまま彼は手近な一体へと迫り剣戟を見舞う。

 切断された砲撃ゴーレム。その間にもう一体を刀弥は斬波で切ると、旋回し反対側のゴーレムの元へと向かっていった。

 そこへ残った二体からの二度目の砲撃が飛んでくる。けれども、刀弥はそれらを避け、さらにはその爆発を利用して加速するとその勢いのまま一体を両断。次の二体目は追加の砲撃を許すことなく刀を投じることで撃破とした。

 刺さった刀を抜いた刀弥は追いついたリアと合流するとすぐさま疾走。

 そのまま砲撃ゴーレムの残骸群を後にしたのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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