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無限の世界  作者: 蒼風
終章「太古の時間流れる世界」
224/240

終章一話「流れ着いた者達」(4)

「第二標的グループ。第二九部隊からの離脱を確認」


 話す相手のいない空間に響き渡るそんな声。

 声の質は透き通るように高く丸みを帯びており、典型的な幼い少女の声質だ。

 実際、その外見も幼女のそれである。

 背中まで伸びた長い金髪。着ている衣服は真っ白なワンピースでそこから白くて短い手足が飛び出し伸びていた。

 彼女がいるのは広い空間。かなり広い空間で少女が部屋の中央にいるにも関わらず壁がぼやけかけて見える程である。

 そんな場所で彼女は部屋の中央にある長方形型のオブジェクト、その上に腰掛けて座っていた。

 呟いた彼女の視線の先には何もない。けれども、彼女の意識内では二つの映像が視界の映像と共に映しだされていた。

 一つはレグナエル達の映像。そしてもう一つは当然、刀弥達の映像だ。

 二つの映像をひとしきり見た後に彼女は頭の中にある指示を思い起こす。

 直後、視界に新たな映像が追加された。新たに表示されたのはこの世界の地図情報。それを幾度化の拡大を行った後、二つの光点が地図の映像に表示される。もちろん、光点はレグナエルと刀弥の現在位置だ。

 二つの光点は共に同じ箇所を目指していた。ゴーレムの製造、管理、制御を司り、加えて最奥に『この場所』を持つこの施設にだ。少女としては己が生み出された理由のためにもこれを阻止せねばならない。

 少女はいくつもの展開をシュミレートする。驚くべきことにどちらの標的グループも多くのケースでここまで辿り着くという結果が生まれていた。

 その事実に多少、不機嫌だという感情情報が浮かび上がってくるが、思考はそれを無視。新たな対応を演算し始める。


「シュミレーションナンバー九三九九九番を採用。これより本内容をこのシュミレーションへと変更する」


 零す言葉は指示だ。命じる相手が傍にいるわけではない。そもそも口に出す必要すらない。あえてそうしているのも習慣だからに他ならない。

 彼女の指示はこの世界にとって世界を管理する神の言葉だ。創造主達に匹敵はしないが、それでもほとんどの命令は順守しなければならない。

 彼女の言葉に従い世界が動く。

 装備を切り替え、ルートを変え、陣形を変えていくゴーレム達。

 今回、彼女が変えたのは両者の分断だ。

 戦力を見た場合、それぞれの標的が各個で動くよりも合流して一塊になられた方が厄介だ。それ故に両者を合流させないようレグナエル達への戦力を少し減らしその分を刀弥達の方へと回したのだ。

 これによって両者の距離は開いていきそれと平行して合流する可能性も減っていく。

 最も、出会った所で敵対していた両者が簡単に協力し合う可能性はかなり低かったのだが、その事をこの少女は知らないのだから仕方ないだろう。

 それを確認した後に少女は新たな指示をゴーレム達に与える。

 正直な所、こういった荒事は少女の得意ではなかった。

 通常の配置であったならば、侵入者の排除は彼の役割である。そして、彼の性格上、彼は嬉々としてその役割をこなしたに違いなかった。

 だが、彼は今いない。己が彼にある役割を与えたからだ。故に彼が担っていた侵入者の排除の役割も担わなければならない。

 ゴーレム達は少女の新たな指示を受けて行動を始めている。包囲の動きだ。

 だが、それを察知したそれぞれの標的達は囲いきられる前に包囲の突破を試み始めた。

 どちらも最初は砲撃で穴を開けそこを通り抜けるという動きだ。

 けれども、そのパターンは既に少女の予定に組み込まれていた。開けた道を走る標的に向かって長距離からの射撃が放たれる。

 射撃に気付いたそれぞれの標的の片方が守る動きに出た。片方は刀で当たる射撃だけを逸し、もう片方は守りの壁で射撃を防ぐ。

 それでもう一人の方も長距離からの攻撃に気付いたようだ。刀で防いだ方は相方が風の矢を飛ばして反撃に出る。もう一方は炎の砲撃で一気に始末するという豪快さだ。

 それを撃ち終えると二つの標的は移動を再開する。

 片方は消耗を抑えるために距離と戦闘回数のバランスを意識したルートを選び、もう片方は――


「? 建物の中に……」


 なんともう片方はそこそこ大きめの建物の中に入ったのだ。

 少女が把握する限り、その建物は何の変哲もない建物。特別な施設でもなければ特別なルートも存在しない。

 そんな所に入ってどうするつもりなのだろうかと少女は疑問する。これではゴーレム達に包囲されて一網打尽だ。

 だが次の瞬間、その疑問は解消することとなる。突如、建物のあちこちで爆発が起こり建物が崩壊したからだ。

 崩壊と言っても全ての箇所が崩れた訳ではない。中央部分は無事だ。崩れたのはその中央と外とを結ぶ通路部分の建物。建物は瓦礫と化して積み重なり壁となる。おかげでゴーレム達は中央の中へと入れない。

 それで少女は相手の狙いが休憩のための時間稼ぎだと悟る。

 とりあえずゴーレム達を包囲させ瓦礫を退かせる事を命じて少女はもう片方の標的へと意識を向ける。

 新たに向かわせたゴーレム達をその標的に向かうよう指示した彼女はまだ稼動していないゴーレムのリストを意識ない表示。その中から何十体ものゴーレムを起動させる。


「後は念のためこれも……」


 そう呟いて見るのはとあるゴーレムの名称とその製造番号。番号の数字は一。つまり、この世界ではこれ一体しか作られていないゴーレムだという事だ。

 正直な所、少女としてはこれを使うほどではないと考えているが、戦闘面での演算が彼ほどではない以上、不測の事態が起こる可能性は捨てきれない。

 そんな不測の事態に備えるためにこれを起動させる。

 起動し動けばこの事態はすぐに解決されるだろう。が、問題はその余波だ。

 推定される被害範囲はかなりの規模。戦闘場所によってはあの場所にすら被害が及びかねない程の力を持っているのだ。

 普通に考えればこれに頼ることなく事態を沈静化させる事はできるはずだが、失敗した場合待っているのは最悪の結果だ。それだけは彼女としても避けなければならない。

 ゴーレムに付随する情報の一つが起動へと変わる。まだ起動するだけだ。実際に出撃させるかまでは決定はしていない。

 ともかく実際どうするかはこの後の経過次第だ。そのため、少女は状況把握により意識を傾ける。

 と、その時である。

 もう一組の標的の方も大きな建物に入り込んだ。後は先程と同様の事が繰り返される。


「……こちらも時間稼ぎ」


 推測するに疲労回復のための休憩だろう。一応、瓦礫の撤去を命じるが、恐らくそれよりも早く休憩時間が終わるほうが早い。

 と、なれば――


「先に動くであろう向こうへの対処を優先」


 まずは先の標的に向かわせようとしていた戦力を先に立て籠もった方の場所へと行き先を変更させる。加えてそこから目的地への最短経路にもゴーレム達を配置。

 これで迎撃のための戦力は十分なはずだ。とはいえ、相手側も待ち構えられている事は想定しているだろう。場合によっては何らかの策を用意している可能性だってありえる。

 そうして待つこと少しばかり。突如として中から風の砲撃が放たれそこから先の二人組が姿を現した。

 包囲していたゴーレム達は砲撃とその際に飛んできた瓦礫を受けて損壊。包囲の一部に穴が生まれる。

 そこへすかさず飛び込んでいく二人。

 少女はそれを見て追加の指示を入れながらふと、視線を向ける。

 透明な床。その下に広がる膨大な数の箱群へと……

  



           一話終了

これで一話は終了。

続いて二話へと変わります。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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