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無限の世界  作者: 蒼風
終章「太古の時間流れる世界」
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終章一話「流れ着いた者達」(3)

 ゴーレム達を見つけた新たな招かれざる客。それは当然、刀弥達の事であった。

 刀弥達からしてみればいきなりゴーレム達が現れて攻撃を受けたのだ。さすがに驚き結果、初手の反応が逃走になってしまったのであった。


「なんでいきなり攻撃してくるの!!」


 声を荒らげて抗議の声を上げるリアだが、当然ゴーレム達はそんな彼女の抗議に怯むことも応じることもなく射撃を続けていた。

 この間に冷静に戻った刀弥はゴーレム達を迎撃すべく手を刀の取っ手に持っていったが直後、その考えを一旦中断することにした。新たなゴーレム達が姿を見せたからだ。


「まずいな」


 嫌な予感が頭をよぎりふとそんな言葉を漏らしてしまう。

 彼が考えているのはゴーレム達がこのまま増え続ける可能性だ。その場合、適当な迎撃では焼け石に水。やがては物量に飲まれてやられてしまうだろう。

 この危機を脱する方法があるとすれば、それはこのゴーレムが襲い掛かってくる原因を取り除くことだ。そうすれば彼らが刀弥達を襲うのをやめるだろう。

 刀弥は考える。ゴーレム達が襲いくる理由を。そしてその理由をどうやって取り除くかを……

 考えられる可能性はあのゴーレム達がこの世界の守護者で自分達を侵入者だと見て排除している可能性だ。刀弥としてはこの可能性が一番高いと踏んでいる。

 と、なると刀弥達がやらなければならないのはこの認定を外す事だ。そうすれば現在の危機は脱することになる。

 ただ問題なのはどうやって外すかだ。恐らくゴーレムを制御している装置がこの世界のどこかにあるのだろうが、その場所がわからなければ――。

 いや、と刀弥は思い直す。ひょっとしたらゴーレム達がやってきた方向にその装置はあるのかもしれないと……

 刀弥達が動き回っていた少しの間、二人は巡回するゴーレムを全く見ていない。そこから推測できるのは侵入者の発見は別の方法で行い発見と同時にゴーレムを出撃させるという方式だ。

 この方式が正しいならゴーレム達が普段待機している場所に制御装置がある可能性が高い。そしてその場所はゴーレム達のルートを追っていけば辿り着ける。

 思考は僅かな間。どの道、時間がないのだ。迷うくらいなら根拠のある方角に行った方がマシである。


「リア。ゴーレム達の動きを魔術で探れないか?」

「え?」


 そう言ってリアに尋ねる刀弥。だが、刀弥の意図を知らないリアは混乱するだけだ。

 それで説明不足であることに刀弥は気付き、彼女に自分の考えを伝える。

 このおかげでリアもようやく事態を理解した。彼女は刀弥に頼み、僅かばかりの間ゴーレムを引きつけてもらうと魔術を使って周囲のゴーレムの存在を探る。

 やがて、その探りが終わったリア。彼女はゴーレム達のルートや移動方向から大まかなやってくる方角を推測しその方向を示す。


「……とりあえずはあの建物からだな」


 その方向に存在する建物は見える範囲では一つ。まずはそこに行こうという事になった。


「こいつらはどうするの?」

「走るのが優先だ。相手をしてもキリがないし向こうに情報を渡すことになる」


 要するに戦えば戦うほど不利になるという事だ。

 無論、全てのゴーレムを無視しきれる訳ではないが、それでも戦闘は最低限で済ませたいのが本音ではある。

 そういう理由でゴーレムに背を向けて走りだす二人。順序はリアが前、刀弥が後ろという順番だ。

 これはリアを守るためである。魔術師であるリアは走っている間の魔術式構築はかなり難しく、それ故にゴーレムの射撃に対して身を守る術がほとんどない。そのため、刀弥が後ろに付く事でそれらからリアを守ろうとしているのだ。

 とはいえ、絶対的な陣形ではない。なにせ守れるのは一方だけだ。正面からもゴーレム達が来てしまえばさすがに守り来るのは難しい。

 そこで二人はその対策としてリアの探知の魔術を使うことにした。

 基本的にはある程度進んだところで刀弥が時間を稼ぎ、リアが探知の魔術を使う。そして、周囲のゴーレムの動きから目的地へ向かえかつ比較的安全なルートへと逃げる。

 これで可能な限り戦闘を抑えたのだ。戦闘も基本は回避と攻撃の迎撃に徹し、実際戦うとしても道を作るのに必要な最小限に留めている。

 そうやって疲労や情報の漏れを抑えつつ進んでいく二人。と、その時、二人は道端であるものを見つけたのだった。


「……ゴーレムの残骸?」


 リアの言葉通り、二人が見つけたのはゴーレムの残骸だ。

 残骸は道に沿うようにいくつも転がっている。積み重なり方から見るに自分達の方から奥へという順で残骸は生み出されたようだ。


「俺達の他にも誰かここにきてしまったのか」


 それがすぐに思い浮かぶ可能性。実際、他に自分達と同様の人がいても不思議ではない。


「それにしても強引だね」

「道をこじ開けて進んでいるって感じだな」


 そうと思うのは残骸の数がかなり多いからである。

 自分達と同様の行動をとっているなら残骸は散発的に固まっているはずだ。けれども、この残骸はあちこちに散らばっている。まるで道を整備する際に邪魔だった土を横に退()けたかのように……


「ねえ、刀弥。この攻撃――」

「俺も同じ事を考えた」


 転がる残骸に残る攻撃跡。それを見て二人はレグイレムの創設者であるレグナエルと彼に従うレナスを思い浮かべたのだ。


「あの場にいたし、いても不思議じゃないな」


 ただ、もしその予想通りなら厄介な事になる。

 あの装置を修理していた以上、彼らの目的はここである可能性が十分に高い。ならば、ここに来た彼らは己の目的を果たすために動くかもしれないのだ。

 だが、それと同時に刀弥としてはこの可能性は低いとも考えている。

 理由は戦力だ。攻撃の種類からして向こうはレグナエルのレナスの二人だけしかいない。その状況で目的を達するというのはかなり難しいだろう。それは向こうだって理解しているはずだ。

 と、なると取るべき選択はこの世界からの脱出である。ここが目的の場所といえどその目的を達成するためには何より自身が生きていなければいけない。それができないのであれば一旦目的は諦めるべきだ。具体的に言えばこの世界から脱出し後に攻略できるだけの戦力を連れてくるという事である。

 レグナエル達の作った道は迷いなく刀弥達が目的地と定めた建物へと向かっていた。どうやらあの建物にこの状況を解決する手段があるのは間違いないようだ。

 そうとわかれば迷う必要はない。二人は一気に進むペースを上げた。

 風の砲撃で正面のゴーレムを押しのけ道を作ると、二人一気にその道を駆け抜ける。

 左右からは押しのけられたゴーレム達が二人を止めようと体を割りこませてくるが、刀弥の放った斬波によって足を斬られ動けなくなってしまう。

 それを横目に進み続ける二人。が、そんな二人の正面でゴーレム達が壁を作り始めているのが見えた。

 このままではゴーレム達の壁に正面から突っ込み戦うことになってしまう。が、ここで戦闘ために足を止めればその瞬間、後ろから追いかけて来るゴーレム達に追いつかれて終わりだ。無論、無策で突っ込んで突破できそうな壁ではない。

 どうするか。一瞬、思案するリアだったが、その思考は次の瞬間、刀弥に抱きかかえられた事で吹っ飛んでしまった。


「え!? ちょっと、刀弥!!?」


 いきなりの事に慌てふためくリア。一方刀弥はそんなリアの驚きの声に反応もせずそのままゴーレムの壁へと向かって走って行く。

 飛んでくる射撃や接近してくるゴーレムを左右のステップやターンで躱しゴーレムの壁に迫っていく刀弥と彼に抱かれたリア。

 そうして彼がゴーレムの壁に突っ込もうというその時だ。

 唐突に刀弥は己の身を上へと飛ばした。彼は斬波の足場で階段状に上ったのだ。

 この予測していなかった機動変化に一瞬、動きを止めるゴーレム達。が、次の瞬間には元に戻り刀弥達を逃さないとばかりに重火器を空に行く二人へと向け、そして放つ。

 が、刀弥は当たらない。彼は足場の斬波で左右へと避けながら地面の方へと降りていく。

 そうして降り立つと同時にリアを降ろす刀弥。その直後、リアが自分達とゴーレムたちとの間に竜巻の壁を展開する。

 二人を追おうとしたゴーレム達は竜巻に阻まれ追いかけられない。その間に二人は一気にゴーレム達から距離を離していく。

 こうして刀弥とリアは僅かながらも一旦ゴーレム達の追撃から逃れることに成功したのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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