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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章三話「そして拠点へ」(8)

 刀弥がレナスと一方、他の方ではどうなっていたかというと……

 ロアン達の方もまたさらに激しい戦いを繰り広げていた。

 既に戦いの勝敗はロアンが制御装置を破壊するかどうかの一点に集約されており、両者そのために行動を集中させている。

 レグイレムはロアンの進行を阻止するため、彼に攻撃を集中させようとしロアンの味方はロアンを制御装置に辿り着かせるために彼を守る行動をしていた。

 レグイレム達はロアンに向けて魔具の銃口を向け、それをヴィアンや部下達が射撃で妨害する。

 当然、それだけで全てを妨害しきれる訳はない。いくつかの射撃は放たれロアンの元へ飛んでいく事になるが、それらはレリッサや幾人かの部下達が迎撃する事でロアンを守っていた。

 一方、レグナエルの方はと言うとリアがしっかりと妨害していた。

 基本的に彼女が行っているのはレグナエルの力を削ぐことだ。いくつもの攻撃を絶え間なく繰り出す事で相手に防御行為を行わせてロアンへの攻撃の力を削ぐ。

 力を削がれた攻撃はロアンでも十分に対処可能だ。実際、今も左へとサイドステップする事で直後に出現した黒い球体攻撃を回避している。

 制御装置を破壊されればこの拠点はそのほとんどの機能を失う。戦力的にはそうなってもレグイレムはロアン達を倒すことは可能だろうが、大部分の機能が死ぬ以上、ここに居続けるのは困難だし、何より次の襲撃を迎撃できる訳がない。最終的には破棄せざるを得ないだろう。

 また、レグイレムにとってはこちらの方が一番の問題なのだが、制御装置が壊されると現在修理中のゲート装置が修理できなくなる可能性がある。

 ゲート装置の修理は一部は今の技術でも可能なようだがいくつかはこの遺跡に残っている設備を使わなければならない。当然、それらはこの遺跡から動力を得ているので遺跡が止まると動かなくなる。

 そういう事情もあって今、レグイレム側は遺跡を止められる訳にはいかないのだった。


 レグイレムの兵達が一斉に銃の引き金を引こうとする。

 銃口の先にいるのはロアン。しかし、多くは引き金を引き切る事ができなかった。

 ヴィアンを始めとした射撃手達がそれを射撃によって妨害したからだ。

 手や足を撃たれたり重傷を追ったことで射撃できずに終わるレグイレムの面々。だが、それでも幾人かの射撃は成功する。

 銃口より解き放たれた風弾の群れ群れがロアンへと迫り――しかし、剣や棍棒によって防がれてしまった。

 風弾を迎撃したのはレリッサを始めとして近接戦闘が得意な者達だ。彼女達の役割は妨害が失敗し射撃が放たれた場合、その射撃を撃ち落としてロアンを守ること。

 妨害と盾。この二つによってロアン達の部隊はロアンを守っていたのだった。

 彼らの対応に焦るレグイレム側。

 既に状況は一つのパターンに入っている。これが続くとなると待っているのは制御装置の破壊だ。

 そうなるとレグイレム側はこの状況を打破するために新たな手を打たなければならない。

 その事はレリッサ達も重々承知であり、それ故に敵の微細な変化を見逃さないよう細心の注意を払っていた。

 けれども、レグイレム側に変わった様子は見られない。先程と同じようにロアンへの集中射撃を続けようとするだけだ。

 それを妨害するヴィアン達の部隊。自分達は全く狙われていないのだ。ならば、彼女達は射撃に集中できる。最も、そう思わせての不意打ちが来るのではと思って警戒はしているのだが今のところ全くその動きは見られない。

 打開策を見つけれなかったのか。湧き上がるそんな考え。だが、そんな楽観をヴィアンもレリッサも否定する。

 敵はこれまでこちらに尻尾を掴ませず、さらには出し抜いて目的の物を手に入れる事ができる程の組織なのだ。そんな組織がこのままこちらの目的を果たさせる訳がない。

 何かがある。そう直感しより警戒を強める二人。

 と、ここで敵が変化を見せてきた。

 変化があったのはレグナエルだった。彼はこれまでロアンだけに向けていた魔術の攻撃をヴィアンやレリッサ達の部隊に放ち始めたのだ。

 いきなりの標的変更。これにレリッサやヴィアンは対応したが他の者達はそうはいかなかった。弱体化しているとは強力で奇襲性の高い攻撃だ。何名のか味方が為す術なく黒い球体に飲まれてしまう。

 そうやって次々とロアンを守ろうとする者達を攻撃してくるレグナエル。こうなるとリアの妨害も意味はない。ロアンの部下達は弱体化している彼の魔術でも対応しきれないからだ。できたとしてもその対応に全行動を費やしてしまう。

 結果としてロアンの守りが手薄になっていき、そうなれば当然妨害者達の攻撃も厚くなる。

 格段に増えた殺意の籠もった風弾。そんな中をロアンはどうに避けながら駆けていた。

 攻撃が来るのは背後から。後ろを見ながら走っては速度が落ちてしまう。

 故にロアンは見るのではなく聴く事で敵の攻撃を把握していた。

 風弾が大気を突き抜けるときに鳴らす音。その発生源を連続的に結ぶことでその先の軌道と時間を予測し安全地帯へと自分の身を潜り込ませているのだ。

 とはいえ、数が多すぎる。いくつかの風弾が彼の傍を掠め、彼の皮膚に赤い傷を作っていったのだった。

 ようやく敵の狙いを悟ったヴィアンとレリッサ。二人はすぐに対応に動く。

 まずやったのは味方の分散。小さくなったとはいえ黒い球体の範囲は広い。それにまとめてやられないにするためだ。

 もう一つは――


「リア。そいつを抑えるのは私達がやるわ。あなたはロアンを狙っている連中をお願い」

「わかった」


 そうして役割を交代するリアとヴィアン達。ヴィアンと部下達がレグナエルに絶え間ない攻撃を浴びせ、リアがロアンを狙う連中に火球を飛ばす。

 そうこれがもう一つの対応だ。

 現状、レグナエルが標的をロアンからヴィアン達に変えたせいで弱体化の影響が下がってしまっている。だが、だかといってレグナエルへの攻撃をやめたらそれこそ元の状態となってロアンを狙う事は間違いない。

 一方、ヴィアンやレリッサの方は二人はともかく部下達がレグナエルの攻撃のせいで十分な妨害を期待することができなくなっている。

 要するに相手の策のせいでリアと部下達がその成果を十分に出せないでいるのだ。

 そこで両者の役割を入れ替える。

 レグナエルに攻撃をするのは相手に防御行動を取らせる事で魔術を弱体化させるため、その役割はリアでなくてもいい。

 一方、妨害者への妨害はリアに変わったことで妨害できる人数が減ってしまったが、レグナエルの攻撃のせいで数を減らされたも同然の状態なのであまり影響はない。むしろ、リアだからこそ迅速に対応できる。

 加えていえばその数だってリアは範囲向けや多数の攻撃を持っているので解決だ。故にこの策はすぐに効果を発揮した。

 リアが火球の群れを生み出し敵達に向かって一斉に放つ。火球の爆発で怯む敵達。

 そんな彼女に向かってレグナエルが魔術を行使しようとするが、そこへヴィアンと部下達による射撃。

 やむなく、レグナエルは守りを展開し質を落とした魔術をリアへと打つ。

 当然、感知できるリアはすぐに対応する。

 回避。誰よりも早くレグナエルの魔術を感知できるリアだからこそ身体能力が高くなくても逃れることができる。さすがに本来の性能では回避成功率は五分五分だが、ヴィアン達の攻撃のおかげでレグナエルは防御にも力を回さざるを得ない。

 結果として形勢は元の状態へと戻ろうとしていた。

 そして、ロアンがもう時期制御装置に届くところまで迫る。

 もうひと息。それを見て気を引き締め直す一同。

 しかし、そんな状況の中でふと、ヴィアンはある方向を見た。

 彼女が見てたのは刀弥とレナスとの戦い。視線を向けたのは自身の感が警告を発してきたからだ。

 そうして袖口から飛び出た短剣を右手で掴んだレナスがその短剣を投じようとした瞬間、彼女は見た。レナスの視線が刀弥ではなくその先にいるロアンを見据えている事を……


 瞬間、彼女は理解した。レナスの狙いは刀弥ではなく今まさに制御装置に迫ろうとしているロアンへの攻撃であったのだ。


「ロアン!! 後ろ!!」


 必死に声を張り上げ警告を発するヴィアン。しかし既に投擲は敢行された後だ。

 刀弥は短剣を回避した直後、対応には回れない。リアも気づくのに遅れている。今から魔術を構築しても間に合わないだろう。レリッサも敵の射撃を迎撃しようと動いている最中だし自身は位置が悪すぎた。

 短剣が完全に機器などの影に隠れてしまっている。これでは――成功するかはどうであれ――短剣を狙うことすら不可能だ。

 真っ直ぐ迷わず標的に向かっている飛んでいく殺意の刃。

 無常にもヴィアンはそれを眺めることしかできないのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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