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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章三話「そして拠点へ」(6)

 そこかしこで繰り広げられる戦闘。もう物陰に隠れて攻撃しあっている所はどこにもない。ロアン達の陣営は時間がない事から敵側は勝負を掛けに出たロアン達を潰すために一気に攻めに回ったからだ。

 ロアンは制御装置を破壊するため、そこへ向って掛けている。先程、いくつか銃撃を放ってみたのだが、それでは制御装置が壊せなかった。制御装置のボディ部が予想以上に固かったのが原因だ。

 そういう訳でロアンが直接殴るために向かっているのである。

 当然、そんな彼を妨害しようと敵達が攻撃を向けようとするのだが、ヴィアンの援護射撃やレリッサの死角からの攻撃のせいで彼一人に集中する事ができないでいた。


「!? 飛んで!!」


 が、そんな彼に妨害が飛んでくる。妨害の力の正体は黒い球体。唐突に出現するせいで回避も難しいのだが、そこはリアが警告を飛ばしてくれるおかげでロアンはどうにか回避する事ができていた。

 一方はリアはというとその妨害攻撃を飛ばした主へと向って攻撃を放っている。

 いくつも風矢が妨害主――レグナエルと向って飛んでいく。が、それらの攻撃は全て彼の眼前で弾け消滅した。

 手応えとしてはまるで壁にぶつかったかのような反応。それが彼の持つ武装の一つの能力だと理解するリア。

 彼女の見つめる先、そこにいるレグナエルは己の武装を展開していた。

 彼の武装は二つ。杖と背後に浮かぶ二つの球体だ。

 背後の二つの球体は青緑の光を放ちながら僅かながら上下に揺れ浮かんでいる。はっきりいってあれがどういったものかリアにはわからなかったが、どういう訳か球体が発する光に何か引っかかるものがあった。

 もう一つの杖の方は木製の杖と機械部品が合わさった少し不可思議な外見だ。木製の杖の上部分を機械が覆うように装着されている。本来杖単体だったものに機械を後付けしたのだ。

 この考えをリアが確信できるのには理由がある。彼女はその杖の外観を見てその杖が何かを知っているのだ。


「アーマス・フリッグ……」

「ほう、さすがはマグルカの人間といったところか。この杖がなんなのかを知っているとは……」


 余裕のある驚きで返答するレグナエル。対してリアは知っていて当然だと内心で返事を返す。

 アーマス・フリッグはリアの世界ではある事で有名な杖だった。

 世界最高の魔術補助具の製作者が生み出した杖。その力は高速の魔術式構築に特化したものでその点では世界最高の性能を誇っている。

 当然、この杖は唯一無二にであり存在するのは一本のみ。本来であれば認められた魔術師か国によって保管、管理されるべき代物である。

 だが、だいぶ前にこの杖は盗まれた。その時の持ち主の死体を残して――

 当然、大規模な捜査が行われた下手人の正体も盗まれた杖の行く先もわからず結局その事件は迷宮入りとなった。

 その杖が今、形を変えて目の前に存在する。それの意味する所は……


「……あなた達が盗んだのね」

「私の要求を満たす杖がこれしかなかったのでね。持ち主には残念な事をした」


 ちっとも悔いている様子も見せずそう応えるレグナエル。

 それにリアは苛立つが、それよりも今は敵の力を考えるのが先だ。

 機械の方がどういうものかはわからないが魔術の補助具を用いる以上、彼が用いるのは魔術だという事だ。

 先程からロアンに向かって放っているのもそれで間違いない。実際、リアの魔術師としての長年の感覚がレグナエルの魔術を感知している。

 恐ろしく早い魔術式の構築。さすがはかの有名な杖だ。それに感心しつつリアは再び魔術式の構築を始める。

 放つのは炎の砲撃。目的はレグナエルの妨害を阻むことだ。

 対人で使うには過剰ともいえる攻撃。だが、リアにはある予感があった。そしてその予感通りの事が起こる。

 なんと、炎の砲撃が先程の風の矢群と同様に彼の眼前で遮られたのだ。今回は範囲も広かったため遮断の形状もはっきりと把握できた。

 形状はレグナエルの前方に半球状。恐らく全方位に守りに力が働いているのだろう。炎の砲撃を完全に防ぐことからもかなりの防御性能を持っているのは間違いない。

 リアは風の矢を大量に展開し絶え間なく連続で放つ。当然、彼女の放った攻撃はレグナエルの守りに阻まれる事となるが構わない。今大事なのはレグナエルの意識をロアンだけに集中させない事だ。攻撃を受ければ防げるとはいえ意識をロアンだけに向けるわけにはいかないはずである。

実際、その狙いは上手くいった。レグナエルの攻撃の精度が落ちたのだ。どうやらあの守りは攻撃を受ける度にレグナエルの意思で展開しているらしい。

 そうなるとあの守りは魔具によるものだと考えられる。と、なれば怪しいのは背後の浮いている球体だ。あれを壊す事ができたなら彼の絶対的な守りを崩すことができるかもしれない。だが。そのためにはその守りをどうにか抜ける必要がある。

 守りを突破するにはどうすればいいか。その案は既にリアの中にある。後は現状を利用して形にするだけだ。

 そうしてリアは魔術式を構築し炎弾の群れを一斉に生み出しレグナエルに向けて放った。

 無論、レグナエルはその攻撃をこれまでと同様に守りによって遮る。炎弾は遮断の壁にぶつかって次々と爆発を起こす。

 爆発によって巻き起こる煙。おかげで一時とはいえ視界が遮られる。

 周囲を煙で覆われたレグナエル。だが、彼は動じたり周囲を見回すような事をしない。何故なら彼自身既にリアの狙いに見当がついているからだ。

 そして彼の予想通りのものがきた。煙を突き破って再び炎弾が襲いかかってきたのだ。

レグナエルの意思で守りを展開をしているのなら彼に気が付かせなければいい。故に攻撃を見えなくさせる。最初の炎弾は攻撃ではなく視界を遮らせるためのものだったのだ。

 しかし、それを読んでいたレグナエルには効かない。既に展開していた遮断の守りが新たに飛んできた炎弾をピシャリと遮ってしまう。

 守りの外で爆音を響かせる炎弾。しばらくするとその音も止んでしまう。

 攻撃が止み守りを解くレグナエル。先程の攻撃でまた煙が出現してしまったがロアンの位置は大体予想できる。

 今度は別の魔術を使おうと魔術式を構築――



 ――しようとした所に炎の砲撃が飛んできた。


 炎の砲撃は片方の球体に直撃。砲撃の飲み込まれた球体は赤く溶けていき最後は爆散。跡形もなくなったのだった。

 その手応えに思わずよしと独り言をこぼしたリア。

 彼女の真の狙いは防御が切れた瞬間だったのだ。その時ならすぐに守りに入れないのではという予想。どうやら予想通りだったらしい。

 これで片方を潰した。ならば、向こうの防御能力は半減したはずだ。

 そう思い再び追撃の炎の砲撃を放つリア。

 けれども、その砲撃は遮断の守りによって完全に防がれてしまった。


「え……」


 予想が外れ驚くリア。外れた驚きと何故という疑問、そこに理解不能を解明しようと全力の思考が始まり――

 結果として彼女は大きな隙を晒す事になってしまう。当然、それを見逃すレグナエルではない。

 彼女に向けて魔術を撃とうとして――けれども、そこに光線が飛んできた。

 攻撃に気付いて即座に守りに入ったレグナエル。だが、光線はまだ照射され続けている。

 ようやく意識を復帰したリアがその発射元に視線を向けると、そこには大きめの銃を構えたヴィアンの姿があった。他にも攻撃を照射し続けている彼女を守るためにレリッサが周囲を動き回っている。


「――パックの残量が切れたわ。これでこの武器も打ち止め」

「使い捨ての爆破魔具は既に使いきって実弾発射タイプの魔具ももう時期弾切れ……そうなると残っているのはこれぐらいか」


 そう言って両手で構えている風弾を放つ銃型魔具の引き金を引くレリッサ。その隙にヴィアンもまた武器をそれに持ち替える。


「ありがとうございます」

「気にしないで」


 リアの礼にそれだけを返して銃撃を放つヴィアン。見ると死角から味方を撃とうと敵をしっかりと仕留めている。

 倒れた音。それでようやく狙われていた味方は敵の存在に気が付いたらしい。

 この間にリアはレグナエルの方へと視線を戻し、風の矢群を飛ばそうとしていた。

 矢群の出現に気が付いたレグナエルは構築していた魔術式を中断。防御を発動する事でこれを防ぐ。

 破壊前と遜色ない防御力。どうやらあの球体が防御の魔具だというリアの推測は間違いだったようだ。

 そうなると気になるのはあれが本来なんだったのかという事になる。けれども、そんな思考をしている間にリアに向けてレグナエルの魔術が行使される。

 黒の球体。それに感づいたリアは後ろへと飛ぶことでそれから逃れ――ふと、その球体の範囲が縮まっている事に気が付いた。

 球体はレグナエルの魔術だ。決して魔具で行われているわけではない。

 どういうことか。それを疑問の起点として可能性を吟味していくリア。

 やがて、彼女は一つの結論に達した。


「……それってもしかしてマナの収集装置?」


 その問いにレグナエルは口の端を歪めて笑みを浮かべる。それが正解の証だった。


「おかしいとは思ったんだよね。あれだけの威力の上に無反動の魔術を個人で使えるなんてって。それだけのものになれば魔術式の規模も大きくなるから必要なマナだって物凄く多くなるはずなのに」


 構築速度は杖で問題ないが、さすがにマナの方については不思議に思っていた。だが、戦闘中ということもあり個人の才能とあえて割りきっていたのだ。しかし、どうやら真実はその球体にあったらしい。


「……嘘でしょ?」

「あそこまでの小型化に成功しているなんて……」


 その真実にレリッサはヴィアンは絶句する。最早、決まりを破っているとかそういう問題ではない。性能は本家に劣るとはいえ集約装置が持ち運べる大きさにまで小型化されている事が問題なのだ。


「どうやらこれの凄さが理解できるようだな」


 そんな二人の反応に満面の笑みを見せるレグナエル。とはいえ、二人の方も驚いてばかりはいられない。

 なにせまだ戦闘は継続中なのだ。気を取り直して二人は戦闘を継続する。

 それはリアも同様だった。

 結局のところ、目的のものを破壊する事はできなかったが、それでもマナの収集装置の片方を破壊したことで相手の力を削ぐことには成功したのだ。それに加えて防御の魔具も絞り込むことができている。どうやらあの杖の取り付けている機械こそがその魔具だったようだ。恐らく杖に取り付けることで杖からなんらかの恩恵を受けているのだろう。

 ロアンの方を見ると彼の方もかなり制御装置に近づいている。妨害さえなければ辿り着くのは時間の問題だ。

 つまり、このままレグナエルの気を引き続ければいいのである。

 ロアンの邪魔をしようと彼の方へと視線を向けてレグナエルに向かって炎弾を放つリア。レグナエルはこれを防ぐしかない。

 これまでやりとりをみてわかった事だが、彼自身の身体能力はそう高くないようだ。先程から回避をしようとせず防御一辺倒である。

 ならば、話は簡単だ。攻撃をし続ければいい。例えレグナエルが防御しつつロアンを攻撃しても性能が落ちさらに精度の落ちた魔術攻撃ならロアンでも避けることができる。

 実際、ロアンはその攻撃をしっかり範囲外にまで逃れている。間合いを完全に把握し性能が落ちたことで僅かな兆候が見えるようになった攻撃。あの様子なら不運でもない限りロアンが攻撃を受けることはないだろう。

 さすがに状況が不味いと感じたのかレグナエルの表情に厳しいが顔が浮かぶが、そこに再び炎弾が殺到する。

 防ぐレグナエル。それがリアの狙いであることは彼にもわかってるが、しかしどうする事もできない。

 そうして攻撃を続けるリア。それが彼女側の戦いだった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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