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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章三話「そして拠点へ」(4)

 そこは広い空間だった。

 組まれた足場。並べられた計測装置。壁は淡く発光しその中を光のラインが踊るように駆け巡っている。

 そして部屋の中央。そこには四つの長方形の柱がそびえ立っていた。柱は正方形の形で配置されており隣接するもの同士は長方形状の棒のようなもので繋がれている。柱の根元は格子が模様が編まれており四つの柱はその模様の上に乗っているような感じだった。


「あれは……盗まれた遺跡設備。こんなところに置いているなんて」


 予想外のものを見つけて瞳を見開くヴィアン。そんな彼女の反応を見て二人はその遺跡設備を見据える。

 遺跡設備は稼働しているのかいくつかの場所が淡い発光を繰り返していた。ただ点滅するだけでなく光は血液のように所定の線を駆け巡りそして消えていく。

 なんとも言えない不思議な脈動。それをただじっと見つめていると――



 唐突に拍手の音が室内に響き渡った。



 瞬間、一同は即座に音の元へ視線を向ける。


「いやはや、よくぞここまで辿り着いた。歓迎しよう」


 彼らの視線の先。そこには一人の男が立っていた。背後には敵の部隊の姿がある。部隊の先頭には長い黒髪の女性。察するにその部隊を指揮している人間だろうとそこにいた誰もがそう思った。


「はじめまして。私の名はレグナエル・ニブル。このレグイレムの創設者だ」


 そんな彼らの視線を知ってか知らずかレグナエルは自分の話を進めていく。

 彼の言葉にロアン達は特に反応をしない。

 先頭に立っている男がそういう人物だという予想はその立ち振舞などから容易に想像できていたし、むしろそれよりも背後の部隊がいつ仕掛けてくるかの方が気になっている。

 一方、相手の方はというとそんな彼らの警戒に気付いていないのか、ただ静かに立ちすくんでいた。けれども、動き出せば即座に対応に動くであろう事は気配から察する事ができる。

 ただ、ロアン達の動きを待つ相手。チャンスを伺うロアン達。

 両者睨み合いの状態の中、レグナエルは己の話の続きを始めていた。


「よくここまできたものだ。さすがはかの世界の兵士達だ」


 彼の賞賛の言葉に無言を貫く一同。最も、相手もその程度の反応予想通りだったのだろう。特にリアクションもする事なく言葉を続けていく。


「さて、本題に入ろう。投降したまえ」


 ロアン達に降伏を促す一言。その直後、背後の部隊が展開した。彼らは一気に扇状の一列に広がると銃型の魔具を構える。

 そんな彼らの行動に反応して身構えるロアン達一同。しかし、そこから先の行動に移る事ができない。

 今、この状態で動けば先に攻撃できるのは相手側。それがわかるが故に動けないのだ。先手攻撃が可能である事を見せつける事によって相手の動きを封じる。

 この牽制による束縛によって動けないロアン達。そんな彼らをあざ笑うかのようにレグナエルは微小を浮かべた。


「わかっただろう。このままでは君達は死ぬ。だが、ここへ到達する程の実力(ちから)を備えた君達を無為に殺すのは少々惜しい。だから――」

「投降して仲間になれと?」


 ここでようやくロアンが口を開いた。

 彼は目を鋭く細めてレグナエルを睨みつける。


「その通りだ」

「だったら、お断りだ!!」


 一喝。その一言でロアンはレグナエルの提示した提案を一蹴した。


「やれやれ、残念だ。折角、譲歩してあげようと思ったのに」


 そんなロアンの反応に心底残念そうな表情を浮かべるレグナエル。しかし、本気で残念に思ってないのは誰の目にも明らかだ。


「仕方ない。レナス。彼らに別離の挨拶を」

「は」


 彼の指示を受けてレナスが部下に攻撃の指示を下そうとする。

 手を上げ手を降ろす動作。当然、彼女の部下はその動きを確認するためにそこに視線が集中する。

 レグナエルとレナス以外の敵が刀弥達から僅かに視線を外す瞬間。

 そこで刀弥が動いた。彼は相手に気付かれないよう体を前に倒す動作で初動のためを消して一気にレナス元まで迫ったのだ。

 そのまま彼は抜刀。刀を振り上げる。しかし、彼の攻撃はあっさりと失敗してしまった。振り上げた斬撃を彼女は右へのサイドステップ一つで躱したからだ。

 避けた彼女は腰のホルスターから片手持ちの銃剣型魔具を取り出し刀弥へと向ける。

 ゆっくりなようでいて素早くムダのない動作。そのまま彼女は銃剣の引き金を引こうとして――

 突如、倒れる味方の存在に気が付いた。

 先ほどの刀弥の一撃。狙いは彼女ではなくその背後にいた彼女の部下だったのだ。不意を攻撃だったので部下は刀弥の放った斬波に反応できず直撃。胴を深く斬られそのまま倒れてしまったのだった。

 予想もしていなかった展開に驚く敵一同。その隙は先程よりも大きい。

 当然、そのチャンスを見逃すロアン達ではなかった。彼らはその隙に武器を構えながら手近な物陰へと駆け込む。

 そうして始まったのは銃撃戦だ。敵達の方もロアン達の動きに反応して物陰に隠れたのだ。互いが物陰から射撃等の遠距離攻撃を撃ち合いそれが物陰に辺り防がれるという光景が幾度となく繰り返される。

 膠着状態。だが、こうなると不利になるのは刀弥達の方だ。なにせここは相手の拠点。まだ戦力を呼び寄せることはできるはずなのだ。時間が掛かれば掛かるほど敵の数は徐々に増えていく。

 既に刀弥達は体力的にも厳しい状態だ。この上さらに敵の数が増えるというのはなんとしても避けたい。そうなると短期で決着をつけるしか手がない。

 ヴィアンが部屋の中央に立つ盗まれた遺跡設備へと視線を向ける。

 周囲に置かれた機器や道具、装置。そこから推測できるのはレグイレムがあの遺跡設備を直そうとしているという事。つまり、壊されては困るという事である。

 とはいえ、今あれを壊したところで戦況が変わるわけではない。なので、ヴィアンはその遺跡設備のさらに奥、奥の壁際にある巨大な構造物へと視線を動かす。

 傍目には巨大な結晶体に見えるそれはこの拠点の制御装置。ヴィアンが何故その事を知っているのかといえば自国の遺跡にもこれと似たものが存在するためだ。事前に教えられた資料の中のものと酷似していたおかげですぐに彼女にはそうだとわかった。

 あれを破壊するために自分達はここまできたのだ。任務を達成するためにヴィアンは物陰に隠れて瞳を閉じ思考の世界へと潜っていく。

 そんな彼女に気が付き僅かばかりの時間稼ぎを試みることにしたロアン。彼は銃撃飛び交う空間を潜り弾いて駆け抜けると物陰に隠れていた敵を一人蹴りつけ物陰から強引に引きずりだしたのだ。

 その事に気が付いた味方がその飛び出した敵を射撃で倒す。ロアンはそれを確認するとまた一人。

 そうやって敵を確実に倒すために味方の援護をしていくロアン。けれども、それを黙ってみている敵ではない。

 三人目の犠牲者がでた辺りで遂にレナスが動いた。物陰から飛び出しロアンの元へと迫っていく。

 だが、そんな彼女の元に風の矢群が殺到する。周囲一帯へと降り注ぐ風矢の雨。範囲から逃れられないと悟ったレナスは防御行動にでるしかない。

 銃剣型の魔具をそれぞれ左右に持って矢群の迎撃にでるレナス。その命中性は高くほとんど狙いをつける間もなく射撃を連射しているにも関わらず全ての弾は風矢の破壊に成功している。

 こうしてあっという間に自分の安全を確保したレナス。すぐさま彼女はロアンの元へと向かおうとしたがその間に刀弥が立ち塞がる。

 刀弥の存在に気が付いた敵達。すぐさま彼らは刀弥へと向けて射撃を放とうとした。しかし、そうは簡単にいくはずもない。

 突如、そんな彼らの元に火球が飛んできたからだ。火球は物陰に着弾。次々と爆発を起こした。爆発の衝撃で物陰から身を乗り出せない敵達。それが火球を放ったリアの狙いだ。

 そうしている間に始まった刀弥とレナスの戦闘。

 こうして決着をつけるための一幕が始まったのであった。

  

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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