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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章三話「そして拠点へ」(1)

九章最終話の始まりです。

どうぞよろしくお願いします。

 ロアン達が敵の防衛を中央から突破した後の事……

 彼らはどうにかレグイレムの拠点である遺跡の中へと侵入する事に成功した。ただし、潜入した直後に乗り物は諦めざるを得なくなったが……

 理由は侵入直後の迎撃だった。

 遺跡の扉を強引の破壊し、いざ中へと飛び込んだ瞬間だ。いきなり敵の派手なお出迎えを受けてしまった。

 その『お出迎え』のせいで大半の乗り物が大破。結果、彼らは徒歩で遺跡の奥へと向かわざるを得なくなってしまった。

 幸いにしてお出迎えをしていた連中に関しては乗り物の大破直後、ロアンの突撃とその混乱を突いたリアの炎弾による一斉攻撃で退避させることには成功した。外からの戻りは残った仲間達がやってくれているはずだ。

 そうして現在。刀弥達は大きな通路を敵の妨害を受けながらも進んでいた。

 曲がり角の壁。そこに身を隠して敵の射撃をやり過ごし、一番薄くなったのを見計らって近接戦闘の者達が飛び込む。飛び込んだのはロアン、レリッサ、刀弥に近接戦闘を得意とする者達。

 そんな彼らに敵が銃口を向けようとするが、速度を上げたりジグザグに動いて軌道を読ませない事で彼らはこれらに対処。そうして間合いに入った所で各々(おのおの)の攻撃で敵を倒していく。

 彼らのおかげで敵の攻撃が薄くなった。その隙間を逃さず射撃を得意とする者達が攻撃を開始する。

 リアが炎弾の群れを降り注がせ、さらに生じた混乱を他の者達が射撃で着実に仕留めていく。だが当然、そんな状況の中でも的確に動こうとしている者達はいた。彼らは混乱を立て直すべく指示を飛ばそうとするが、その途端それを見つけたヴィアンの狙撃によって地に伏す事となってしまう。

 徐々に数を減らしていく敵。が、そこへ新手が現れた。


「ちっ、やっぱり来やがったか」


 新たな敵の姿を舌打ちをするロアン。とはいえ、皆ショックは少ない。なにせここは敵の拠点だ。その程度の展開驚くに値しない。

 とはいえ、このまま全ての敵を倒しながら行くというのは不可能だ。どう考えても数の差が圧倒的すぎる。


「ヴィアン!!」

「今終わったわ」


 準備をしている仲間に催促の呼びかけをするロアンにその当人であるヴィアンが即座に返事を返す。それが意味している所は準備が完了したという事だ。


「よし、行くぞ!!」


 声を張り上げ走りだすロアン。その掛け声に他の者達も反応した。全員、ロアンと同じ方向に向って駆け出したのだ。

 先頭はロアンが務めその周囲を刀弥やレリッサといった近接が得意な者達が布陣する。

 リアは最後尾、ヴィアンは皆に囲まれた中央だ。

そのまま一同は一塊となって敵の増援部隊の方へと突っ込んでいく。

 これに増援部隊は迎撃を判断。部隊は足を止め静止すると所持していた銃型の魔具を構え一斉に射撃を放とうとした。

 けれども、増援部隊が足を止めた瞬間、それを見計らってロアン達の部隊は先頭集団側が左右に別れた。

 先頭集団だけが割れたので当然、そうして見えるのは先頭集団によって隠れていた中央の集団の面々だ。その中で彼らが注目したのはど真ん中にいる人物。つまり、ヴィアンだった。

 彼女はある物を掲げていた。両手を使ってようやく支えるだけの大きさと重さをもった巨大な砲を……

 直後、その砲が光を焚いた。光の後に続くのは轟音と力の固まりの直進だ。

 その力に増援部隊は中央を貫かれた。無事だった者達もその力によって生じた衝撃波によって吹き飛ばされ壁に激突。気を失い動かなくなってしまった。

 その中をロアン達は突っ切って行く。砲撃を放ったヴィアンはというと走りながら溶けてしまった砲身を破棄。新たな砲身を取り付けている最中だった。


「ヴィアン。後何発だ?」

「砲身、パック共に残り三発分よ」


 抑揚のない声で返ってきたヴィアンの返事。

 その返事にロアンは少し思案を始めた。


「ヴィアン。足りると思うか?」

「帰りを諦めても足りないでしょうね」


 その返答にロアンはため息をもって同意を返した。


「……当たり前だが戦闘はできるだけ避けるように立ち回らないとな」

「それを簡単に許す相手じゃないでしょうけどね」


 全くだ。とそんなヴィアンの返答に返事を返すロアン。

 と、そんな時一同は分かれ道に差し掛かった。


「ヴィアン?」

「右は……来てるわね。左はまだ見えないわ」


 ヴィアンが言っているのは分かれ道の先の様子だ。彼女は小型の偵察用ゴーレムを双方の分かれ道にそれぞれ飛ばしており、その先の映像をゴーグル型の受信機で受け取って見ている。

 今、語ったヴィアンの報告。戦闘を避けるなら左に行くのが正解だ。だが、問題は道の行く先だ。

 今回の襲撃の具体的な目的は拠点の使用不能状態に陥らせる事が第一目的、第二目的はそれが無理だった場合、レグイレムに大損害を与える事である。奪われた物の奪還は第三目的。つまり、余力があればやってくれという事だ。

 ロアン達が探しているのはこの遺跡の制御を司る場所。そこを潰す事ができれば遺跡の機能は止まり拠点としての大部分の能力を失う事となる。

 つまり、ロアン達の勝利条件とは遺跡の制御部分を発見し、これを破壊する事であった。

 当然、先ほどの偵察用ゴーレムも敵の存在確認だけがその役割ではない。道先に目標があるかの確認もまたそれに課された大切な役割であった。

 今回の場合、敵のいないルートを選ぶ事で敵との戦闘を避ける事はできるが、そのせいで目的地に辿り着けないのであれば本末転倒。要するにどちらの道を選ぶのかを判断するためには敵の存在有無ではなく、どちらの道に目標があるのかが判明しなければならない訳なのだ。

 左は敵がいないが、だからこそ守るべきものが存在しないという可能性がある。

 右か、左か、ひとしきりの思考。そうしてから、ロアンはヴィアンにこう問うた。


「ヴィアン。避難の動きはあるか?」

「……右の方は荷物を持って避難しているわね。逆に左は静かなものよ」


 新たに得た情報。その情報を頭の中に追加してさらに考えるロアン。

考えるのは人の有無が意味するものだ。単純に考えるなら右側の方が人が多い、即ち主要となる施設が多いからだと言える。逆に左側は主要ではない用途や設備の部屋が多いという事だろう。

 本来であれば電源装置や制御ルームは守りやすくまた何かあった時すぐ駆け付けられるよう入り口付近に専用の通路をとって向かえる場所に設置される。大抵であれば一階や地下だろう。だが、入口付近にはそれらしい道はなかった。恐らくかなり昔に建てられた遺跡のせいだろう。時代が違えば常識も違うのも道理だ。

 と、なれば定説は捨てるしかない。

 右が主要で左はそうではない。左から敵が来ない以上、切り捨ててもいいという場所つまり外れだという推測できる。

 ならば右側が正解という事になるのだが、ふと、頭に引っかかることがある。右側が避難しているということだ。

 これまでの彼らの成果を考えるならかなり優秀な組織だ。そんな所が事前に非戦闘員を避難させないものなのだろうか。そこに疑問を覚えたのだ。

 避難と敵の接近はこちらを騙す芝居であり左こそが本命。浮かび上がった仮設。その仮説を確かめるためにロアンはヴィアンに新たな確認を取る。


「……ヴィアン。供給伝達用と思われるラインはどっちが太いんだ?」


 その問いにヴィアンは先行する二体の偵察用のゴーレムの視界を巡らす。やがて彼女は天井付近を一筋に走る膨らみと光のラインを見つけた。


「……これかしらね……左。右は半分くらいの太さになっているし光量も小さいわ」


 ロアンの予測が正しければそのラインの中には動力を供給するラインも含まれているはずだ。それが左の方が太く右が細いのであれば分岐部分で枝分かれしているからという可能性が高い。


「左へ行くぞ」

「わかったわ」


 ロアンの決定にヴィアンは疑問も問いもなく即座にそう応える。それは他の面々も同じだ。

 ロアンがこの場での最高指揮官だ。そうである以上、彼の決定は絶対である。それは同行している刀弥やリアも事前に同意している。

 時間がない以上、余計な問答や確認をしている暇はない。最高指揮官がそう決定したならそれを前提に動くだけだ。

 こうして一同は分かれ道を左へと進んでいったのだった。

 

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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