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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章二話「森林戦」(4)

 刀弥達の乗った乗り物を含め襲撃部隊達の乗った乗り物が速度を上げていく。

 それを生い茂った木々の中から確認したカルリィは己が跨るファーブアルのボスに指示を出した。


「左右から追わせなさい」


 その指示の直後、ファーブアルのボスは雄叫びを上げる。仲間達に指示を送っているのだ。

 間もなくしてボスの指示を受けたファーブアル達が左右に別れて乗り物の後を追い始めた。それを見てカルリィは笑みを浮かべる。

 乗り物の行く先には伏兵が潜んでいるからだ。彼女の直下の部下ではないが、今回の策に伴い借りた者達だ。それであの乗り物を含め襲撃部隊を壊滅させる。

 既に一緒に来ていたゲイウスとベリーヌは倒されてしまったようだ。だが、それで退くという選択肢が頭に浮かぶカルリィではない。むしろ、ここで活躍できれば彼らより上に行ける好機だと考えていた。


「さあ、私の手駒達。しっかり働きなさいよね」


 その言葉通りファーブアル達は乗り物に振り切られないようにその速度を上げていく。

 そんな彼らに対して乗り物側からは射撃が放たれた。恐らく牽制目的だろう。

 この攻撃にファーブアル達は反射的に回避を選択、それぞれが散るように安全な木々の枝へと逃れていった。しかし、そのうちの一体が突如、体を痺れさせ地面へと墜落してしまう。

 原因はレリッサの放った狙撃であった。彼女は弾幕の回避先を読み、そこへ狙撃を放ったのだ。

 同じような事は他の乗り物でも起こっていた。弾幕でファーブアルの動きを制限、誘導しそこへ必中の狙撃を当て倒す。これによってファーブアル達は確実にその数を減らしていく事となった。

 けれども、カルリィに焦りはない。ペースを見る限りファーブアルが全滅るよりも早く予定の地点に辿り着く目算があったからだ。

 もうひと押しとカルリィはボスのファーブアルに散った仲間を合流させるよう命じる。集合による集団圧力で彼らの速度をさらに上げるためだ。

 だが、その予想に反して相手側がとった対応は密集だった。乗り物が密度を上げるように近づきあい濃い一塊へとなったのだ。

 そこから行われるのは密度の濃い弾幕。退避できる空間が少なくなった弾幕の防衛にファーブアル達は攻めあぐね乗り物にそれ以上近づけないでいた。

 そこへ煙幕が広がっていく。

 霧のように辺り一帯を覆い始めていく煙幕。おかげでカルリィは敵を視認する事ができないでいた。

 しかし、ファーブアルにはそれ程影響はない。彼らは目だけで相手を補足している訳ではないからだ。音の反響、熱の気配、さらには匂いをもって目標を補足し追いかけている。故にいくら視界を遮ろうがファーブアルが乗り物を見失う可能性はないといえた。

 だが、相手とて愚かではないだろう。ひょっとしたら予想していない手がある可能性もなくはない。

 ならばとカルリィは一つの結論を出す。突撃を掛けているファーブアルのうち何体を少し後ろに下がらせるのだ。そうするば先のを対処されても下がらせた分で追撃を掛ける事ができるようになる。

 幸い、数はまだ十分に余裕があった。

 早速カルリィはファーブアルにその事をやってもらおうと、口を開きかけた――その時だ。

 突然、カルリィはファーブアルから飛び降りた。飛び降りた理由は感からの警告だ。 なんとも曖昧な理由であるが、今回はそのおかげでカルリィは助かった。彼女が飛び降りた直後、彼女の乗っていたファーブアルのボスが断たれたからだ。

 断った主は風野 刀弥。いつの間にか彼はカルリィの傍まで近づいていたのだ。

 この事実にカルリィは驚く。自分達を補足されていたからだ。気配を殺し木々に姿を隠していたにも関わらず向こうは自分達を見つけ攻撃を仕掛けてきた。

 一体、いつ、どうやって自分達を発見したのか。その疑問を抱きながら困惑するカルリィ。無論、その隙を刀弥は見逃さない。

 彼は再びカルリィに近づくと今度は斬り上げを放つ。

 困惑のせいで反応の遅れたカルリィはそれでもバックステップで下がる事でこれを回避。そうしてから腰に下げた鞭を手に取ると即座にそれを刀弥に向って振るった。

 早業で繰り出された鞭の一撃をしかし、刀弥は一太刀で迎撃する。

 鞭の先端が宙を舞い、そして枝に掛かった。

 主武器を破壊されたカルリィは刀弥に対して有効な攻撃手段を持たない。当然、彼女は逃げることを選択した。

 緊急用に常備していた閃光の魔具を袖から取り出した投げつけたのだ。

 すぐさま辺りに光と音が響き渡り、それによって枝葉がざわめいた。

 この隙にカルリィは逃走を開始。今いる場所から飛び降りて別の枝に移るとそれを足場にさらに別の木へと移動しようとした。

 が、その軌道を斬波が遮る。

 移動を中断せざるを得なくなってしまったかルリィは再び落下。今度は地面に着地してそのまま走って逃げようとした。

 そこへ刀弥が落下とともに刃を突き立ててくる。先程もそうであったが閃光の魔具の影響を受けている様子は微塵もない。

 横へと飛んでその刃を避けるカルリィ。そうしてから起き上がるとついでに拾った小石をいくつか投げつけバックステップで距離を取っていく。

 飛んできた小石を上半身の動作と刀の斬撃で対処した刀弥。その上で彼は偶然足元に転がっていた小石を蹴り上げる事で反撃の糸口とした。

 小石を避けている間に力を溜めカルリィに急接近する刀弥。そこから横薙ぎ、振り下ろし、振り上げ、一回転しての横薙ぎと連撃を繰り広げていく。

 守勢に回ったカルリィはただ避けるだけだ。後ろに飛んだり伏せたり木々を障害物としたりする事でどうにか耐え忍ぶ事ができていた。

 守りに入りながらカルリィが考えているのはこの状況からの脱出方法だ。

 カルリィの最大の武器は生物の精神支配。だが、人間相手には通用しないので刀弥に使うことはできない。加えて戦闘のせいで近隣の獣はまず逃げているのでそれらを利用するという方法も使えない。

 襲撃をしている連中を戻すにしてももう少し近づく必要がある。つまり、現状は何をするにしても八方塞がりの状況だ。

 故にカルリィはきっかけを待つ事にした。宛はある。時期にファーブアルに追われている乗り物の群れが仲間の待ち伏せにあうのだ。そうなれば目の前の敵もそちらに意識を回さざるを得なくなり隙がでてくる。隙ができれば後は付け込み逃げ切るだけだ。逃げ切れば後は手駒を補充し再度攻撃の準備を整える事ができる。

 そんな流れを再確認しながら刀弥の猛攻を凌ぐカルリィ。そして乗り物が目的のポイントに差し掛かった。

 味方が奇襲を掛けるタイミングが近づきカルリィは刀弥の動きに集中する。だが、味方の襲撃はそれよりも先に雷の鉄槌が落とされた事で始まることはなくなった。

 広範囲の雷の攻撃。それが放たれた場所は味方が潜んでいる場所である。まさか、向こうに先手をとられるとは思っていなかっただろう。潜んでいた味方は防御も回避もする事なく雷に飲み込まられる事となった。

 想定外の事態。味方が敵の攻撃にやられるのを見てカルリィが思ったのは何故という疑問だ。

 何故、味方が潜んでいる場所を特定できたのか。考えてみれば自分が見つけられたのも妙である。

 驚愕と疑問による思考。その二つによってカルリィの意識が埋め尽くされる。当然、そうなれば生まれるのは僅かな意識の隙だ。

 そして、今の刀弥はその隙を見逃さない。彼は地面を強く蹴ってカルリィへと近づくとその勢いのままに刀を振り抜いた。

 思考に多くの意識を割いていたカルリィは反応が遅れ対応が間に合わない。

 そのまま彼女は刀弥の刃に倒れることとなったのだった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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