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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章二話「森林戦」(2)

 新たな敵は凶暴そうな獣を引き連れ現れた。

木々の上を乗り物にも負けない速度で軽々と飛び渡り迫ってくる三六体の獣。その姿を見て刀弥は豹を思い浮かべた。それくらい似ていたのだ。

 だが、それは豹と比べて大きな相違点があった。豹は細い枝から枝へと飛び移れない。乗ってしまえばその途端己の重量によって枝は容易くも折れてしまうからである。

 けれども、この獣は細い枝に乗ってもそんな事態にはならなかった。せいぜいなっても小石が乗った程度しかしならないのだ。おかげで軽々と枝から枝へと飛び移ることができている。

 別にその獣ファーブアルが恐ろしく軽いわけではない。ただ恐ろしく上手く自身の重量を分散させているのだ。

 そんな獣達に混じってレグイレムの部隊も動き出す。

 射撃の武器を装備した集団はは枝の上や木の影から射撃を敢行。一方近接武器を装備した集団はそのまま刀弥達へと近づいく。その中にはゲイウスとベリーヌの姿もあった。

無論、カルリィの姿も。

 ゲイウスは飛び込むと同時にその背中に背負う大剣を縦に大きく振り抜いた。

 轟音。それと共に乗り物が一つ叩き割れた。

 中に乗っていた人は断たれた衝撃で投げ出され地面に叩きつけられる事となる。そんな彼らを狙って攻撃が殺到しようとするが、そこへリアが放った火球が地面に着弾。爆発によって土煙が舞いそれが煙幕となって彼らの攻撃は失敗に終わった。

 それを見て放ったリアはほっと息を吐く。が、そんな彼女が乗る乗り物に鞭剣が伸ばされた。

 鞭剣に気が付いた刀弥が咄嗟に斬波を飛ばし鞭剣の攻撃を迎撃する。

 斬波を受けて弾かれた鞭剣は収縮。元の長さへと戻っていった。


「あら、やるわね」


 攻撃を止められた事に意外という顔を浮かべるベリーヌ。けれども、彼は気を取り直すと今度は複雑な軌道を描かせて再び鞭剣の剣先を飛ばす。

 その攻撃を刀弥は先程と同じように斬波で撃ち落とそうとしたが、軌道が複雑すぎだた。先の軌道を読みきれず斬波は鞭剣の剣先を捉える事なく傍らを通り過ぎてしまう。

 再び斬波を放とうとする刀弥だが次を撃つよりも剣先が乗り物を捉える方が早いのは明白だ。


「くっ」


 思わず漏れでた悔しさの声。と、その時その剣先が銃撃によって弾かれた。

 銃撃の主はレリッサ。彼女は刀弥の方に視線を投げかけて陽気なウインクを投げてくる。

 それを見て笑みをこぼす刀弥。

 そうだ。戦っているのは彼一人ではないのだ。何もかもを一人でやろうとは考えてはいけない。周りを頼ればいいのだ。

 ならばと刀弥は斬波をベリーヌへと飛ばす。迎撃を任せられるなら自身は攻撃による牽制だ。

 相手が防御や回避をするようになれば攻撃の頻度は減りひいては防御と同じ結果を得ることなる。

 その狙い通りベリーヌは飛んできた斬波に鞭剣での迎撃を選択した。そうなればその間に刀弥が新たな斬波を放つだけだ。

 攻撃と回避と攻撃と防御。繰り返される両者のやりとり。こうなるとベリーヌは車両に対する攻撃は減らさざるを得ない。

 結果、刀弥の目論見通りベリーヌの車両に対する攻撃頻度は目に見えて減る事となったのだった。

 けれども、襲ってくるのはベリーヌだけではない。

 ゲイウスは止められる事なく暴れまわっているし、それ以外にも兵や獣の存在もある。

 厄介なのでどうにかしたい所だが、時間がない以上、倒す時間を割り振る事もできない。

 どうするか。ロアンに視線を投げかけ尋ねる刀弥。

 と、そこへ先程の乗り物がベリーヌへと向って砲撃を打ち出した。

 さすがに鞭剣では防げないのかベリーヌは大きく跳躍して躱す。そうしてから彼は一本の木の枝の上に着地した。

 しかし、彼らの攻撃は止まない。次々と砲撃を繋げベリーヌを刀弥達の乗り物から引き離していく。

 防ぐことのできないベリーヌは避け続けるしかない。結果、彼と刀弥達の距離はかなり開くこととなったのだった。

 そこへ狙撃用の射撃兵装に持ち替えたレリッサが狙いを定める。

 ベリーヌもベリーヌで回避や立ち回りのために激しく動き回っているが、レリッサとて軍属の人間だ。日頃の訓練の成果を発揮し結果、照準をベリーヌに合わせることに成功した。

 即座に彼女は引き金を引く。放たれたのは雷撃の弾丸だ。

 実体を持たない弾。それ故に物理的なダメージは全くないがその変わりにこの弾には雷速という圧倒的な弾速を有する特徴がある。

 着弾。砲撃に気を取られ刀弥達の乗り物から意識を放していた事も理由だろう。れリッサの放った雷弾(らいだん)はベリーヌの額に直撃した。その結果は肉体への感電だ。

 痙攣、そして硬直の後に横転。そうしてベリーヌは動かなくなった。

 死んではいない。今の雷撃に死に至るほどの威力はないからだ。せいぜい気を失うのが関の山だろう。

 だが、それでも今この事態なら十分であった。現在、レリッサ達は移動しながら戦闘をしている。動けなくなるという事は自動的に距離が離されるという事であり、それはつまり時間が経てば経つほど戦闘へ復帰することが困難になるという事だ。可能性こそ残るが今は一時的にせよ戦力を減らすことを優先すべきである。

 今度はゲイウスへと向けて撃つ。が、ベリーヌの時のを知覚していて警戒していたのだろう。攻撃の気配を気取られ発射の直前に射線から逃げられてしまった。

 放たれた雷弾はゲイウスの眼前を掠め、奥の木に着弾。木はその雷撃によってその身を軽く焦がされる事となったのだった。

 一方、攻撃を避けたゲイウスは攻撃を撃ったレリッサの乗る乗り物を新たな標的と定めたようだ。大剣を構え彼女の乗る乗り物へと接近していく。

 これに気付いたロアンとリア。すぐさま二人はそれぞれがとれる手段を用いて接近を妨害しようとした。

 飛んでくる数々の風弾と風の矢。しかし、ゲイウスはそれらを躱すあるいは大剣で迎撃し速度を落とさず迫ってくる。

 と、ここでレリッサが二回目の狙撃を撃ち放った。タイミングはゲイウスがロアンの風弾を右へと回避した瞬間だ。既に大剣は直前の風の矢を叩き落とすために振られており、刃を返そうとしてもその質量によりすぐには戻せない。そういうタイミングだ。

 迎撃もさらなる回避も不可。だからこそ、レリッサはここがチャンスだと判断して引き金を引いたのだ。

 そうして放たれる雷。しかしその直後、その射線上に遮るものが現れた。

 遮るものの正体は大木。いつの間にやらゲイウスは木を斬り飛ばしていたのだ。タイミングから見てチャンスもわかった上での

 雷は大木に着弾して消失。ゲイウスに届くことはなかった。

 その間に大剣を構え直しながら接近する。慌ててロアンが射撃を撃ちゲイウスの足を止めようとするが効果はない。

 やがて、ゲイウスは彼らの乗り物の傍まで迫った。そのまま彼は勢い乗せて大剣を振り下ろし乗り物を真っ二つにしようとする。

 唸りを上げて振り下ろされる大剣の刃。否が応でも悪い結果をイメージさせるそんな音が鳴り響くその中で一人風野刀弥が迎撃に動き出した。

 彼は乗り物前に飛び降りるようにゲイウスと乗り物の間に割って入ると空中の真っ只中であるにも関わらず刀を振り上げる。

 大剣と刀。その時点で質量の差は明確だ。それに足場の有無まで加わるのだとしたら結果は考えるまでもない。

 けれども、刀弥の顔に焦りからの焦燥感も失態から出る悔いの表情もない。あるのはただ為すという言葉を体現した真剣な表情だ。

 視線の先にあるのは振り下ろされ近づいてきている大剣。それに向けて刀の軌道を修正していく。そして刀と大剣がかちあった。

 誰もが刀弥の刀と体が断たれる事を想像した一瞬。けれども、それが現実なることはなかった。逆に大剣の刃が刀によって断たれたからだ。根本から斬られた刀の刃は宙を舞いやがてゲイウスの背後へ落ちる。

 目を見開くゲイウス。さすがにこの事態は想像していなかったのだろう。信じられないという表情で視線が刃を失った大剣へと注がれている。

 そこにチャンスとばかりにロアンが射撃を放つ。一発、二発、三発。何も考えず反射的に放った反撃。大剣に意識の大半を注いでいたゲイウスにこれを対応する術はない。

 そのまま彼は風弾に胸穿たれ地面に倒れ伏す事となったのだった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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