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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章一話「集う者達」(4)

 主砲に飲み込まれた黒の飛空船。その結末は無論爆散だ。

轟く爆発音と輝きを増す赤い炎の光。

 残骸を燃やしながら落ちていく黒の飛空船。

 それを背後に置きながら刀弥達の飛空船は森の上スレスレを飛行していた。

 黒の飛空船に向けて放たれたリアの魔術。その狙いは攻撃ではなく一時の時間稼ぎと目眩まし、そして追尾弾の迎撃だ。

 一石二鳥ならぬ一石三鳥。それと同時に飛空船は急速旋回し既に発射準備を終えていた主砲を黒の飛空船へと向ける。後は放つだけだ。

 その結果が今の有り様である。

 とりあえず現在の危機を脱した刀弥達の飛空船。だが、ほっとしてばかりもいられなかった。

 襲撃が来たという事はもうここは敵の領域内に入ったということだ。また新たな飛空船や妨害が来てもおかしくない。

 なによりも問題なのは他の飛空船が現在どうなっているのかが不明だという点だ。センサーにも視界にも船影はおろか戦いの光すら見つからない。

 既に戦いは終わったのか。はたまた、まだ遠く見えないところだ戦っている最中なのか。

 生死はおろか戦いが集結したかすら不明。しかし、それを気にしている余裕はなかった。

 ここが敵地だというのならいつ新手が来てもおかしくはない。ならば、早急かつ可能な限り急いで目的地べきだろう。

 そう考えこのまま目的地に向こうと船長が指示を下そうとしたその時だった。

 突如、真上から攻撃反応が来た。船長の咄嗟の指示で右へと船を傾ける飛空船。

 その判断が直撃を避けた。だが、攻撃を避けきれた訳ではない。攻撃が飛空船の主機関を傷つけたからだ。

 この影響で主機関はその出力を徐々に低下。飛ぶことを維持することさえも難しくなってくる。

 木々が割れていく音。次に響いたのは巨大な質量が地面に擦れる音だ。

 土埃と木屑が宙を漂い、響いた轟音でそれに驚いた獣達が逃げていく。

 轟音は暫くの間続いた。

 やがて、音が止み森の中に静寂が戻った頃……飛空船は森の中に不時着していた。

 地面にぶつかり擦れた衝撃で船体はかなりダメージを受けている。船体の一部は大きな傷を作っていたり、場合によっては部位が外れてどこかへと飛んでいってしまってと見るからにひどい有様だ。

 当然、中にいた人達も五体満足とはいかない。全員、地面とぶつかった時にその衝撃で気を失ってしまっていた。

 刀弥とリア、ヴィアンがいたのは船内にある個室の中。敵飛空船に襲われ甲板から中に戻った後、今に至るまで彼らはそこで待機していたのだ。

 不時着の衝撃で気を失ったのは二人も一緒だった。体を揺すられている気配に気付き刀弥が目を覚ますとそこには彼をゆすり起こすヴィアンの姿があった。


「起きた?」

「なんとか」


 そう言いながら体を起こしてみると体のあちこちがズキズキと痛む。どうやらいろいろと打ち付けてしまったようだ。

 刀弥が起き上がったのを確認したヴィアンは刀弥は次にまだ気を失っているリアの元へと向かう。その間に刀弥は己の状態をチェックする事にした。

 まず痛みが大きかったのは背中と頭部。どうやらそこを打って気を失ってしまったらしい。次に痛むのは足だが、これは少し休めば収まるだろう。残るはちょっとした痛みのみ。

 大丈夫だ。刀弥はそう判断した。これならすぐ動くことになっても足を引っ張ることはない。

 そうこうしているうちにリアも意識を取り戻した。ゆっくりと身を起こすが途中どこか傷んだのか顔をしかめて動きを止める。


「大丈夫か?」

「……うん。いきなりだったから驚いただけ」


 差し出した刀弥の手を取り置き上がるリア。


「二人共無事そうね。それじゃあ、他の人達を探しに行きましょう」

「わかった」

「はい」


 そうして他の面々を探すため、三人は船内を巡ることにしたのだった。

 飛空船はやや右に傾いているものの歩けない程ではない。どうやら不時着には成功したようだ。不時着の衝撃のせいだろう。様々な物が通路や室内に散乱していた。

 そんな散乱物をどかしたり踏み越えたりしながら三人は船内を歩く。

 とりあえず最初の目的地は船橋だ。理由としては船橋ならば人が確実にいるのと多くの情報を手に入れることができる場所だからである。

 けれども、その必要はなくなった。直後、船内放送が通路や部屋に響いたからだ。

 放送の主は船長。内容は飛空船が不時着した事と森の中から人の集団が動く気配があるという連絡である。その上で船長は無事な者は格納庫に集合するよう伝えてきた。

 すぐさま刀弥達は方向転換して格納庫に向かう。

 道中、ロアンとレリッサの二人と合流する事ができた。

 ヴィアンがロアン達にこれまでの事を簡潔に報告しロアンは頷きを返すと、ともかく彼らは格納庫へと向かう。

 そうして格納庫へと辿り着くと格納庫は人で溢れかえっていた。襲撃を掛ける部隊はもちろんの事、整備員、食堂で働いている者、果ては見覚えのない人物までいる始末だ。

 さすがにこれだけ人が多いと広めに空間を割り当てられている格納庫といえど手狭といった感じである。


『――大方、揃ったようだな』


 と、その時、船内放送が格納庫内に響き渡った。

 その放送に反応して刀弥は辺りを見回す。

 いた。格納庫に積まれた人員輸送用の乗り物、その屋根の上に船長の姿はあった。

 船長はそのまま話を続け、襲撃部隊はそのまま作戦を続行する事。船員は飛空船の修理を始めることを告げてきた。

 確かにここで守りに入ったら二度と攻めに回ることはできないだろう。最悪の場合、そのままジリ貧で敗北だ。それならば思い切って攻めを続行するというのはいい考えかもしれない。

 問題があるとすれば飛空船の守りだ。襲撃部隊は全員作戦続行という事は飛空船の守りは船員達だけで行うこととなる。

 まだ襲撃地点からは離れているとはいえ敵が飛空船で襲撃を掛けてくる距離だ。いずれは部隊を派遣してくるのは目に見えている。そんな連中から船員だけで自分達を守れるのか。刀弥にはそんな不安があった。

 その事は船長もわかっていたらしい。話の中でその事について触れたが、今はそれよりもレグイレムの目的を止めることが最優先だとして飛空船の事は気にするなと言ってきた。

 そうまで言われたら襲撃部隊側もやるしかない。ロアンが襲撃部隊の代表としてその言葉に応じ続いて全員の掛け声が続く。

 後は出発の準備を急いで整え、出て行くだけだ。幸いハッチは後部ハッチを開くことができた。そこから襲撃部隊は出発する事になる。

 刀弥とリアも手伝い準備は急ぎ進められていった。足は本来の予定では飛空船からの空爆、砲撃後、空中降下させて突入させる予定だった乗り物を襲撃地点へ向かうための足代わりとして使う。順当な予定が潰れてしまった以上、乗り物に出番があるかどうかもわからない。この有効利用の案に誰も反対意見は出さなかった。

 資材の量は必要な物は予定通り積み込み、その代わりに不要となった物は飛空船組に預ける。襲撃部隊としては余計な物を乗せないことで軽くなるし飛空船組からすれば使いどころがわからないものではあるが選択肢が増えるのは確かだ。

 そうして瞬く間に準備を整えた一同。最終チェックを終えると準備完了となりすぐさま一同は出発することにした。

 後部ハッチが開かれそこから襲撃部隊を乗せた乗り物が発進していく。

 一塊となって森の中を突き進む乗り物。当然、刀弥達の姿もその中にあった。

 ここから先、目的地に付くまでに激しい戦いが待ち構えているはずだ。楽には辿り着けないだろう。けれども、その事については全員既に覚悟済み。

 こうして予定外の形で彼らの作戦は始まったのであった。




           一話終了

九章の一話はこれで終了です。

次からは二話となります。

お楽しみにお待ちください。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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