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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章一話「集う者達」(3)

 攻撃の雨を抜けながら黒の飛空船の一隻が再び光弾を放ってくる。線を描いて刀弥側の飛空船に近づいてくる光弾は幸いにもいずれかの飛空船に着弾する事なくそのまま間を抜けていった。けれども、これで相手の攻撃が終わったわけではない。相手はまだそこにいるのだ。ならば、当たるまで撃ち続ける決まっている。

 故に飛空船群は行動を起こした。各機が攻撃から逃れるために散開したのだ。

 刀弥達の飛空船の黒の飛空船は三隻のみなので全てを狙うことはできない。そのため、黒の飛空船はそれぞれが散らばり各個撃破を狙うのだった。

 刀弥達の乗った飛空船は一隻の黒の飛空船に狙われ全速力で逃げている最中だ。

 背後から放たれる光弾。それを飛空船は左右へと己を振って回避している。

 外れた光弾が森や山々を抉り削っていく。そんな光景を横目に必至に己の危機から逃れる飛空船。

 無論、刀弥達側もただ撃たれているだけではない。狙える砲撃で反撃を試みていた。

 けれども、相手も見事だ。その反撃を最小限の回避でやり過ごし、そこから攻撃を狙うのだ。

 放たれたほとんどの攻撃は直撃コース。そうでなくても機体の僅か傍をかすめる程に精確だ。射撃手の腕がかなり上手い事が伺えた。

 このままでは撃ち落されるのは必至。そのため、飛空船は一旦、低空を逃れ急上昇することにした。一気に船首を持ち上げ黒一面の空へと飛び込んだのだ。

 当然、黒の飛空船もまたそれを追い掛け上昇を開始する。

 光の閃光をまき散らしながら空へと上っていく二隻の飛空船。やがて、高度がかなりの位置に達した時、刀弥達の飛空船が一気にその速度を落とした。

 速度差が一気に開き、黒の飛空船が刀弥達の飛空船を追い抜こうとする。

 後ろから迫る黒の飛空船の下を潜り、そこから攻撃を加えようとする刀弥達の飛空船。と、その時だ。黒の飛空艇の底部のハッチが開いた。

 ハッチの展開に気付いた飛空船の船長が左への回頭を指示し、操縦士が即座に反応する。

 直後、開いたハッチから何かが投下された。人の頭ほどある黒い物体。それが群れをなって落ちてきたのだ。魔具の爆弾である。

 船長の即座の指示が功を奏した。刀弥達の飛空船は即座に回頭した事で爆弾の炸裂範囲から逃れたのだ。しかし、そのせいで攻撃のチャンスを逃してしまい、さらには回頭した刀弥達の飛空船を追いかけてきた黒の飛空船に追いつかれてしまい再び後ろをとられる形へと戻ってしまう。

 再び背後から襲いくる光弾。今度は下降しながらその攻撃を避けていく刀弥達の飛空船は緩やかなS字軌道を取りながら地上へと向って全速力で降りていく。

 眼前には攻撃によって荒らされた森。そのまま刀弥達の飛空船は森の中へと飛び込んだ。

 木々を突き破りながら強引に進んでいく刀弥達の飛空船。その結果、軋み割れていった木々の破片が後ろへと飛ばされていく。

 背後から追い掛ける黒の飛空船は木々にぶつかったところで大した損傷ではないが障害物が大量に現れた事で光弾が刀弥達の飛空船に届きづらくなった。

 堪らず障害物の薄い領域、右後方へと移動する黒の飛空船。瞬間、それを待っていたかのように刀弥達の飛空船から光線の射撃が集中して放たれた。相手が攻撃を確実にこちらの飛空船に届かせるために真後ろから離れる事を読んでいたのだ。右後方だと判断したのは微妙に位置を調節して相手の位置を右寄りにしたため。そうすれば相手は近い方である右へと行くと踏んだのだ。

 密集した攻撃の圧に自ら飛ぶ込む形となった黒の飛空船。攻撃と攻撃の隙間は狭すぎて抜けることは叶わない。

 そのまま攻撃の雨を浴びることとなってしまった。

 前面部の装甲が次々と剥げ落ちていく黒の飛空船。だが、その速度が落ちる様子は見られない。そのまま刀弥達の飛空船へと徐々にだが接近していく。

 その光景に特攻という言葉が頭の中を過る船員達。すぐさま船長が上昇を指示するとこれに操縦士が応えて飛空船は森の中から脱出。再び障害物のない空へと躍り出た。

 速度が戻り距離が僅かに開く二隻。と、その時、黒の飛空船が上部後方の部分から攻撃が発射された。

 攻撃の種類は実弾。機械的な外見をしておりそれが背部から推進力を放出して大気の中を突き進む。

 数は四つ。一旦、上昇した後に向きを変えて刀弥達の飛空船へと追いすがってくる。

 左右に動こうが上下に上下に振れようが関係ない。糸や鎖に繋がれた物の如くピッタリと後に突いてくる。機械式の実弾系追尾弾だ。

 無論、撃った後の黒の飛空船が大人しく結果を待ってはいない。当然、逃げる先へと向けて光弾を放ち刀弥達の飛空船の動きを牽制していた。

 動きを妨げる光弾の雨と背後からの実弾系追尾弾。厄介なのは相手がまだ一番最初に放った主砲を残しているということだ。恐らくこれらの攻撃をなんとか脱した瞬間を狙って放ってくるつもりなのだろう。さすがにその状態では回避できる余裕はない。

 故に刀弥達の飛空船は追い詰められないように立ち回る必要があった。

 迫ってくる追尾弾を光線で撃ち落とし刀弥達の飛空船。実弾故に当てることさえできれば撃ち落とす事は可能だ。

 そうやって光弾を避けながら追尾弾の数を減らそうとする刀弥達の飛空船だが、黒の飛空船はその度に新たな追尾弾を飛ばしてくる。

 完全なイタチごっこ。おまけに追尾弾迎撃のために攻撃をそちらに割り振っているせいで黒の飛空船への攻撃は手薄となり、それ故に向こうは攻撃を気にすることなく攻撃に集中する事ができていた。

 相手の光弾が刀弥達の飛空船の装甲を削る。直撃ではなかったもののそれでもそれなりの装甲が宙へと散っていった。

 相手の命中率は徐々に上がってきている。まだ大きなダメージは受けてはいないがそれも時間の問題だろう。

 このままでは相手の追尾弾が切れるよりも先に飛空船が落とされるのは必至。と、なれば助かる可能性は一つしかない。即ち、撃墜されるよりも先に相手を落とす事だ。

 幸いにも逃げまわっている間に策を一つ形にする事ができた。早速それを用いることにする。

 水平方向へと速度を上げていく刀弥達の飛空船。それを追尾弾と黒の飛空船が追いかけて来るが牽制と迎撃の光線を放つ事で相手の思い通りにはさせない。

 飛んでくる射撃を右へと避ける黒の飛空船だが追尾弾は避ける事はできない。また一つ迎撃された。

 新たな追尾弾を放ちながら光弾の反撃を見舞う黒の飛空船。それを刀弥達の飛空船は急上昇をかける事で回避とする。

 再び昇っていく刀弥達の飛空船とそれを追う黒の飛空船。二隻の追いつき引き離されのレースは突如、刀弥達の飛空船が速度を落としたことで終わりを迎えた。

 再びの急減速。また、それからの背面回りを警戒する黒の飛空船だったが、刀弥達の飛空船の狙いは違った。よく見ると飛空船の甲板上に人影が存在したのだ。

 甲板にいるのは長い赤い髪の少女。リアだ。彼女は黒の飛空船を見据え、そして近づいたタイミングで魔術式を構築する。

 結果、起こったのは雷槌(らいつい)による飛空船への穿ちであった。

 近距離、それも広範囲の魔術攻撃ではさすがに避けきれない。とはいえ、所詮は個人で用いる程度の魔術だ。飛空船に大した損傷など与えられるはずもない。

 実際、その通りだった。攻撃を受けた衝撃で黒の飛空船は一瞬制御不能となったが、それだけだ。制御はすぐに取り戻され損傷を確認しても大した損傷は見受けられない。

 苦し紛れの奇襲。そう判断した黒の飛空船の船長。そのまま新たな指示を出そうとしたその時だ。


 突如、刀弥達の飛空船が放った主砲が黒の飛空船を飲み込んだ。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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