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無限の世界  作者: 蒼風
九章「反撃の連合」
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九章一話「集う者達」(2)

 それは刀弥達が飛空船に乗ってこの世界『アブレラ』へとやってくるかなり前の事だった。


 どこを見ても岩だらけの洞窟を少し進んだ先。そこには自然物でもこの世界の人工物とも異なる素材でできた扉があった。扉の先にあるのは遥か昔に建てられ今もなお稼働する建築物がある。遺跡だ。

 現在、洞窟と遺跡は物と人で溢れかえっていた。

 洞窟の外、岩山や広がる森の各所には防衛用の兵器が配置され、反対に遺跡内では人がひっきりなしに動き回っている。

 人の行き来が激しいのはそれだけ人が多い事もあるが、様々な物をあちこちに運び置く必要があったからだ。

 ディスプレイ、端末、計測機器……

 運び込まれていくいくつもの品々。それが様々な所に置かれ敷設されたケーブルに繋がれていく。時折、運びこむ場所を間違えたのか入ってきた品がすぐに持ちだされるとケースも見られた。

 そんな中、最も人や物の出入りが多い遺跡の最奥にある広大なスペースでは、レグナエルとレナスがラクロマの遺跡から奪ってきたゲート装置を見上げていた。

 ゲート装置の傍には足場が組まれ人がその上に乗って取り外しやら取り付け作業をやら行っている。周囲には計測装置と研究者の姿があり、計測装置が様々な情報を計測しそれを研究者が分析する事によってより効率的にゲート装置の修理を行おうとしていた。


「……そうか。まあ、想定内の期間だな。とにかく全力を尽くしてくれ」


 部下からの報告に頷くレグナエル。そうして部下が去った後、傍にいたレナスに声を掛けた。


「と、言うことだ。恐らくその間にラクロマの連中が襲ってくるはずだ。守りの方は任せるぞ」

「既に飛空船を三交代体制で警戒にあたらせています。部隊も出撃待機中。後は司令室の設営が終わるのを待つだけです」


 そのレナスの返事にレグナエルは満足気に頷く。


「上出来だ。防衛の方は任せる。ここにあるレグイレムの全戦力を好きに使え」

「は」


 それで防衛の話は終わった。

 レグナエルはこの部屋を後にし、その後をレナスが付いて行く。

 歩く通路。そこにいる部下達はレグナエルの存在に気が付くとすぐさまそれぞれの行動を中断。会釈や敬礼で反応を返した。

 それに軽い礼を返しながらレグナエルとレナスは通路を進んでいく。

 やがて、彼らはレグナエルの私室に到着した。

 室内は置かれている家具こそ精巧で高価な品ではあるが、生活に必要そうなものだけが置かれたとてもシンプルな部屋だった。

 ゴテゴテとした感じはなく、ものがなく寂しげという感じでもないその中間。


「……それでレグナエル様。ゲート装置の修理が終わった後の行動ですが……」


 部屋に入ってすぐレナスがそんな質問を投げ掛けてきた。

 レグナエルはテーブルに置かれたカップに飲み物を注ぎ、それに一口つけた後に問いにこう答える。


「人工世界へ向かうための部隊を編成し、準備が整った後に乗り込むつもりだ。部隊の規模はかなりの規模を考えている。今のうちにいくつかの編成の候補をまとめておいてくれ」

「了解しました」


 そんなやり取りの後にレグナエルはレナスの分の飲み物も用意して渡す。

 レナスは無表情に礼を言ってそれを受け取るとすぐにそれを口に含んだ。その間にレグナエルは椅子へと座る。


「ところで、差し支えなければその人工世界についてもう少し詳しくお教え下さらないでしょうか?」


 と、そこへレナスが新たな問いを投げ掛けてきた。


「情報が多いほうが編成の参考になりますので」

「なるほど。確かにその通りだな」


 そう言うとレグナエルは自分のカップに口をつけた後、説明を始める。


「と、言っても私も詳細は知らない。が、基地を役割を担ってた以上、兵器は存在するだろう。どんなものかはわからないが、今の技術でさえゴーレムが外的に対して自動迎撃をするのだ。当然、交戦が起こる可能性は高いだろう」


 その意見にレナスも頷きを返す。


「他にわかっているのはその世界を管理しているのがゴーレムであるという事だ」

「ゴーレムが管理をしているのですか?」


 その説明に少し疑念の表情を浮かべるレナス。無理もない。施設の管理に人工知能を用いるというのは現代、過去の遺跡等でもよく聞く。だがその場合、人工知能の機関部分は施設の一部として組み込まれるのが常なのだ。

 理由としては多数の機能性と多大な処理能力を求めるが故に必要となるスペックが高いからだ。そうなると必然的に人工知能の機関部分も巨大なものとなり、移動させることが難しくなる。

 もう一つは防衛の観点だ。防衛対象が動き回れるのはある一点では逃げ回れるというメリットがあるが、守る側からすれば動き回る度に防衛の配置やパターン、サイクルなどを更新しなければならない。そのためそれが手間となり、結果それが隙となりやすいのだ。

 巨大な機関部と防衛の観点。以上の二つの要員が管理を司る人工知能を施設に組み込む最大の理由である。

 で、あるにも関わらずかの人工世界ではゴーレムを使っているという。レナスの観点からすれば非常識と言う他ない。


「記録にはそのように記述されていた。ゴーレムのサイズにもよるがもしも人間サイズだとしたらかなり高度な技術だな」

「仰るとおりですね」


 レグナエルの意見にカップを口元に運びつつも同意するレナス。そうしながら彼女は少しばかり思考する。

 今、彼女の頭の中で考えられているのは人工世界の戦力がどれほどのものかについてだ。

 人口世界へと侵攻する際、気を付けなければならないのは相手側の迎撃。なにせ、向こうは基地だ。防衛の戦力があっても不思議ではないし、最悪を想定するなら全ての兵器が完全稼働している可能性も考えなければならない。

 相手の技術レベルを考えれば人工世界にある兵器類の戦力はかなりのものが想定されるだろう。故にレグナルトはここにレグイレムのほとんどを集めたのだろう。

 全戦力をもって人工世界へと侵攻しかの文明の力を手に入れる。それがいかに本気かがよくわかる。

 ゲートの修理が完了するのはもう少し先。ラクロマの襲撃が予想される日程より少し後ほどになる予定だ。

 ラクロマの襲撃を退け、その後に準備を整え人工世界に侵攻を開始する。これが現在のレグイレムの大まかな日程だ。


「どうした?」


 考えにふけすぎたのだろう。レグナルトから声を掛けられる。

 声に気付いて我に変えるレナス。


「……いえ、少し思案をしていました」

「そうか」

「いずれにしてもまずは人工世界よりもラクロマの襲撃です。こちらの方を優先して作戦を練ろうと思います」

「……頼むんだぞ。レナス」

「お任せください。レグナエル様のお役に立つために私は生み出されたのですから」


 恭しくも座ったまま一礼をするレナス。彼女の言葉通り彼女はレグナエルの手足となるべく人工子宮より生み出され遺伝子操作と投薬強化を施された人造人間だ。

 遺伝子操作と投薬によって得たその戦闘能力は異常という程に高くそれ故に死神部隊の第零部隊の隊長という地位を得ることとなった。

 だが、その投薬と遺伝子操作の代償として彼女は恐ろしいほど短命という宿命を背負うこととなってしまったのだ。

 ただ、レグナエルのために生み出されレグナエルのためにその短い生涯を捧げ生をまっとうする。

 それがレナス・ヴァルキアの定められた人生だった。



 そうしてそれから幾ばくかの日が巡った後……

 レナスが警戒のために巡回させていた飛空船がラクロマの飛空船の集団を発見。かくしてラクロマとレグイレムの二度目の交戦は夜の空を舞台とした戦いから始まったのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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