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無限の世界  作者: 蒼風
八章「王都襲撃」
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八章三話「救援」(7)

 全力の回し蹴りを大剣で防がれる。

 ぶつかり合った衝撃で両者の距離が開くが、その距離も両者の足が地面に付けば途端に〇へと変わってしまう。

 大剣を殴り逸らし、肘打ちを防がれ、叩き斬りをステップで避け、横膝蹴りを潜られ、足払いを飛んでそこからの(かかと)落しを耐え切られる。

 一進一退の攻防を繰り広げるロアンとゲイウス。無論、周囲も戦闘の真っ最中だ。

 銃弾が飛び交い激励と叫びがそこかしこに飛び交う通路。通路は既にあちこちがボロボロな状態だ。穴はあちこちに開いており、切り傷は天井にまで届いているものもある。

 倒れている者の数も決して少ないわけではない。

 死んだ者、気絶した者、意識はあれど体が動かない者。ある者は壁に背を預けて倒れ、またある者は床に横たわっている。中には窓の外まで吹き飛ばされた者までいる程の激しい戦闘の有り様だ。

 ゲイウスの大剣がロアンの右手甲のガードを吹き飛ばす。

 その勢いでロアンの体が左へと倒れ反射的にロアンは左手で己を支えてしまう。

 そこへ返す刀で大剣が反転し襲いかかってきた。

 ロアンは倒れている最中だ。右腕は吹き飛ばされた勢いが消えておらず左腕は今自分を支えているので使用は不可。つまり、腕で庇うことも躱す事も出来ない。

 首元に向かって迫ってくる刃。ロアンはそんな中で必至に抵抗しようとするが、体が回避行動に入った時には既に避けきれない状態となっている。


「くっ」


 漏れでた悔しげな声。その直後に大剣がロアンの首を両断する――はずだった。

 起こらなかった結果。代わりに行ったのは金属がぶつかり合う音だ。

 目の前にいたのはレリッサ。彼女がゲイウスの攻撃で防いだのだ。両手の短剣を交差させその交差点でガード。ロアンを庇うために接触と同時に後ろに飛んで威力を殺すことは出来ない。そのため、彼女の短剣は大剣の威力に耐え切れず損壊。亀裂を走らせ、そこからバラバラに崩壊していったのだった。

 当のレリッサは衝撃に耐え切れず吹き飛び、それにロアンも巻き込まれる。

 転がる二人。全身が打撲で痛むが、大剣で両断されるよりはマシだ。

 すぐに起き上がった二人はレリッサが新たな短剣を引き抜き投じその間にロアンが接近を試みるという連携をとった。

 ゲイウスは短剣を大剣を盾にして防御するとロアンに向けて回し蹴りを放つ。

 左から迫る右足をロアンはスライディングで回避。そうしてからすれ違いざまに右腕を相手の右足に絡めるとそのまま腕を振って相手の姿勢を崩した。

 足を引っ張られ転んでしまうゲイウス。そこにロアンが起き上がりかけの膝曲げ状態から回し膝蹴りをぶち込む。

 足を引かれ転んだゲイウスはうつ伏せの状態。それでも攻撃に気配に気付いたのか即座に前転をする事でこの攻撃を回避した。そうして前転と共に身を翻すことでロアンへと向きなおると彼に向かって大剣を振り下ろするために身構えようとする。

 しかし、そこへレリッサの短剣が飛んできた。既に身構えたゲイウスは大剣を盾にする事ができない。

 仕方なく攻撃チャンスと引き換えに後退することで短剣を回避するゲイウス。けれども、レリッサの狙いはゲイウスの攻撃妨害だけではなかった。

 当たるはずだった標的がいなくなった短剣はそのままゲイウスの眼前を通過。勢いの続くまま飛翔していき――やがて、鞭剣でヴィアンの周囲を囲もうとしていたベリーヌの元まで届いた。

 驚いたのはベリーヌである。まさか、他の仲間へと向けられた攻撃が自分へ至るとは思っても見なかったのだ。

 ベリーヌは攻撃を中止し飛んできた短剣を鞭剣で弾く。当然、その間にヴィアンは危険地帯から脱出。安全な距離まで逃れていた。ベリーヌもその事は認識していていたが、今はそれよりも反撃のほうが優先だ。レリッサへと向けて鞭剣を飛ばす。

 飛んできた鞭剣の剣先を短剣で弾くレリッサ。その後、すぐにベリーヌの元へ近づこうと彼女は右足を踏み込もうとするのだが、そこへゲイウスの振り下ろしが襲いかかってきた。

 跳躍一つで接近しその落下も利用して叩きつけるように振るわれた大剣。さすがに防ぎいるのは無理だと判断したレリッサは目的方向とは別方向へと飛ぶことでこの攻撃を回避した。

 攻撃を避けられたゲイウスはすぐに追撃に移ろうとするが、そこへヴィアンの射撃が飛んでくる。仕方なく大剣の盾と身のこなしの回避でこの射撃を対処した。

 その間にレリッサはベリーヌへと肉薄。左右の短剣による二連撃をベリーヌへと見舞う。

 これをサイドステップとバックステップで対応したベリーヌ。そして僅かに開いた間合いから彼女を攻撃しようと鞭剣を構える。

 だがその時、背後に新たな人影が姿を見せた。気配に反応したベリーヌは後ろを確認もしないまま鞭剣を収縮状態でそちらへと振り抜く。

 衝突音。ぶつかったのは鞭剣の刃と手甲だ。直後、低い位置から新たな攻撃。足元を狙った足払いである。

 それをベリーヌはサイドステップの跳躍で回避。それで足払いを飛び越えるとそのまま一気に距離を開ける。

 それを逃さまいと拳の斬波で追撃を掛けるロアン。けれども、その攻撃は鞭剣によってあっさりと落とされてしまった。

 かなり離れる事となった両者の距離。その距離を利用してベリーヌが一方的な攻撃を開始する。

 上下左右、変幻自在に襲い来る剣先。それをロアンは拳や蹴りを使って迎撃、あるいはガードしながら斬波で反撃する。

 だが、ベリーヌは鞭剣を器用に使いそれらの攻撃を防いでいく。そしてすぐさま反撃。


「くそ」


 悪態をつきながらもロアンは右へと飛ぶ。それから鞭剣が戻っていくのを見計らってベリーヌに駆け寄ろうと走りだした。その時だ。

 突然、彼の右側から誰かの背中が近づいてくるのが見えた。


「ぐわぁ!?」

「くっ」


 見えた時にはもう遅い。そのままロアンはその背中の主とぶつかり飛ばされてしまう。

 ボロボロの通路の床を滑り転がる事となった二人。転がりながら相手の方を見ると飛んできたのはヴィアンだった。手にはひしゃげた銃。どうやら銃を盾に用いたらしい。

 と、そこへ再び鞭剣。軌道からしてロアンとヴィアン両方を狙っている。

 ロアンは起き上がったがヴィアンはまだ起き上がりきれていない。そのため、彼女を守るべくロアンは鞭剣の剣先を脚甲にぶつけて蹴り飛ばした。

 鞭剣の剣先は狙い通りあさっての方向に飛んでいくが、攻撃を放ったという事は同時に無防備になっているという事も意味している。

 それをゲイウスは見逃さなかった。距離が開いているにも関わらず大剣を大きく振りかぶり振り抜こうとしている。斬波を飛ばそうとしているのだ。

 だが、彼の行為はレリッサの投じた短剣によって失敗に終わった。背後より回転しながら回りこんできた短剣を撃ち落とすために大剣を振るったせいである。

 危機を脱したロアンはすぐさま避けられる姿勢に移りヴィアンもまた起き上がった。そこへレリッサが合流する。


「無事?」

「ええ」

「なんとかな」


 敵二人に警戒を向けつつそんな言葉を交わす三人。相手の方も三人の出方を伺っているようで武器を構えはしているが動き出す気配はなかった。

 それを好機と捉えて三人はそのまま話し合いを続ける。

 まず、始めに話したのは現状確認。


「レリッサ。短剣の残りは?」

「……五本。まあ、随分と投げちゃったしね」

「私の方は銃がこの有り様。他の装備は短剣が一本と片手持ち型の銃型魔具が一丁よ」

「あの連中相手じゃ。心伴いな」


 片手持ちの銃型魔具は携帯性の高さを念頭に設計されている。そのため、威力等の基本性能が両手持ちと比べると低いのが当然だ。

 両手持ちの銃を平然と対処する彼らに使うには少々頼りなく感じてしまう。


「……それでどうするの? あの二人は私達でどうにかするんでしょ?」

「確かに他の人達じゃ厳しいでしょうね」


 部下達ではそう長い間相手をしきれない。最悪、あっという間に多大な被害を被る可能性だってあり得るだろう。


「ああ、連中は俺達で倒す。とりあえず陣形はさっきと一緒だ。一人が片方を抑えもう一人を二人で襲う。抑え、援護、攻撃は状況に応じてスイッチ。それを基本に行く」

「「了解」」


 ロアンの指示に二人は応答。声を揃えて張り上げる。


「では、いくぞ!!」


 そうしてロアンが走りだしそれにレリッサが続いた。ヴィアンはその場で待機し片手持ちの銃を構える。

 ロアンが向かっているのはゲイウス。一方のレリッサはベリーヌの元だ。

 それぞれが攻撃をぶつけあいそれが再戦の合図となる。

 こうしてロアン達の戦いは終盤へと差し掛かったのであった。

    

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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