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無限の世界  作者: 蒼風
八章「王都襲撃」
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八章三話「救援」(5)

 また数体のゴーレムが突きの嵐に飲み込まれた。

 破裂したかのように穴の空いたゴーレムの装甲。当然、内部機構も破損しており、再び動き出すことはない。

 けれども、ルードは損失を気にすることも反省することもなく、再びゴーレム達に突撃を駆けさせる。

 そうして起こるのは先程と同じ結果だ。

 今度は真っ二つに絶ち切られた。数は六体。ランスを持ち突撃を掛けたゴーレム達だ。

 直後、射撃がロレットへと殺到するが、彼はそれを避けたり槍で迎撃することで防いでいく。

 激しくなっていく射撃に対し感覚を傾けていくロレット。

 と、その時、ロレットがいきなり挙動を変えた。

 前へと踏み込み身を前進させようとしていた所を急遽後退したのだ。

 そこへ一発の射撃が飛来してくる。

 射撃の弾は速くそして精確にロレットの移動先を通り抜けていった。もしそのまま前進を続けていれば今頃ロレットは頭部を貫かれ倒れていただろう。

 射撃の正体は狙撃。ゴーレムの数が生み出す厚い壁の向こう離れた場所からゴーレム達の僅かな隙間とタイミングを狙って狙撃タイプのゴーレムが撃ち放ったのだ。

 ゴーレムの狙撃を避けたロレットはすぐに反転し正面の敵を削りに掛かるのだが、やはり数が多すぎる。それでも高いを実力を駆使して一進一退の状況へと持ち込んでいた。

 無論、左右後方の敵達にも気を配っており、それらについては回避や防御など最低限の行動だけで済ませていた。さすがに特定の方向へと進もうとしたら全方位へ攻撃する暇がないのだ。それにロレットとしても全てのゴーレムを倒すつもりはなかった。

 このゴーレムを操っているルード・ネリマオット。彼を倒せばいいのだ。

 命令を出している彼が倒れればゴーレム達もそれ以上の行動できなくなるはずだ。よしんば動き続けても司令官を失った人形など倒すのは造作でもない。

 そのためにも彼に至る道を作らなければならない。止まっていては待っているのは敗北だ。勝つためには進むしかない。

 ロレットは貫き撃破したゴーレムの一体を強く蹴りだした。

 勢いと体重を乗せた回し蹴り。その力によって蹴られたゴーレムは吹き飛ぶようにゴーレムの層に穴を空ける。

 生まれた道。その道をロレットは突き進む。斬波の足場を作り階段を駆け上がるように登っていく彼。その視線の先にいるのはルード。

 すかさずゴーレム達が射撃を放ちながら道を塞ごうと立ち塞がるが、ロレットはそれを突きの斬波のラッシュで強引に維持する。相手の射撃も撃ち落とす攻防一体の手段だ。と、そんなロレットに背後にいたゴーレム達が射撃を放ってきた。

 僅かな体捌き。それで背後からの射撃に対応するロレット。どうしても避けれそうにないものは隙を見て振り返って斬波で撃ち落とす。

 彼が避けた射撃は彼の傍を通り過ぎ、突きのラッシュに飲まれ消える。一部、残ったものもあるが、それの行き着く先は味方のゴーレム、つまりフレンドリーファイアだ。

 そうやって正面以外のものも対処しながらも自分が空けた穴を突き進んでいくロレット。時折、近づいてくるゴーレムもいるが、それらは間合いに入ると槍で迎撃していく。

 一方、ルードはというと当然のようにロレットから離れようとしていた。

 基本的に乗っているゴーレムがロレットに背を見せ全速力で後退。それを他のゴーレム達が全力で支援するという形だ。逃走のルートの邪魔にならないように進行方向先にいるゴーレム達は直前になって道を開けていく。まるで自前に示し合わせたかのようだ。

 障害物のない逃げ道、障害物のある追い道。加えてルードが今乗っているゴーレムはかなり速度の出せる飛行のできる鳥型のタイプのものである。速度の差は歴然だった。

 それでもロレットはルードの逃げる先を見極めるとその逃げ先へと向かって道を作成。直後に力強い踏み込みからの跳躍で一気に槍の間合いまで接近すると、その勢いのままに彼はルードへと向けて槍を突き出した。

 実力者であるロレットの突きだ。その速度は突き出した直後から速く槍の穂先は瞬く間にルードの頭部へと迫っていく。

 ルードは防御をとる姿勢を見せない。防御する気がないのかそれとも攻撃に反応できなかったのかどちらだったのかはわからない。けれども、一つ確かなのはゴーレムの方はその突きに反応していたという事だった。何故なら、攻撃の直後にそのゴーレムが動きを見せていたからだ。

 ロレットが槍を放った直後、身を上へと振り上げるゴーレム。翼を羽ばたかせ胸部を持ち上げるようにする事で体を縦へと僅かに回転させるかのような動きだ。

 そうする事でルードの位置が別の場所へと変更される。当然、槍はルードには届かなかった。代わりにその槍の穂先はゴーレムの頭部を捉える。

 結果、ゴーレムの頭部が砕かれその中身が宙にぶちまけられる事となった。ルードはというと制御を失い落下を始めたゴーレムの残骸とともに高度から床へと落ちていく。

 けれども、そんな彼を宙にいたあるゴーレムがワイヤーを伸ばしたて助けた。ワイヤーに絡まれぶらんと宙を漂う事となったルード。ロレットはそんな彼目掛けて近づこうとする。

 けれども、そんな彼の意図を妨害するようにゴーレム達が再び両者の間に立ち塞がった。

 再度、全方位より襲いかかる弾幕。その攻撃から逃れるためロレットは弾幕を掻い潜り敵ゴーレムを倒して逃げ道を作っていく。

 斬り裂き、穿ち、叩きつけ弾き飛ばす。そうやって生み出した安全地帯(スペース)に体を潜り込ませることで射撃の雨に晒される危機を尽く回避していくロレット。

 そうしてある程度の安全時間帯を確保した所でいくつもの斬波を周囲へと発射。周りのゴーレム達をあらかた両断したのだった。


「ひゅ~。やるね~。でも、おかわりはまだまだあるよ」


 しかし、削った傍からルードが新たなゴーレムを補充していく。表情から見てもまだ予備のゴーレムはまだ十分に過ぎるほどに残っているのだろう。

 その推測にため息を吐きたい気分になりながらもロレットは一回転。周囲にいたゴーレム達を斬波の一閃によって断ち切った。

 さらにそれだけでは終わらない。攻撃後、槍を片手で持ち下半身だけを止め上半身を半回転させる。後はそれによって溜めた腰のバネを解放だけだ。反動で上半身が逆回転しそれに自身の全身の力を連動し勢いを加算。そうやって生み出された強烈な力を槍へと乗せ斬波として放つ。

 結果、放たれた斬波は荒れ狂う奔流となってゴーレムの群れを飲み込みながらルードの元へと突き進んでいった。

 一方、ルードの方もこの攻撃に対する対応を始めている。

 右上、左上、右下、左下。彼の前方四箇所から新たなゴーレムが姿を現す。丸みを帯びた太めの体躯の機体が四体。それらは飛んでくる攻撃に反応し即座に行動を開始する。

 最初に起こったのはゴーレム達の胸部にある宝玉のような部分の脱着と発光だった。次に起こったのはそれらの部分が光線を発し四角形状に接続。最後はその線を枠に力場が展開される事で結果、守りの壁が出現したのであった。

 力場の壁は接近してくる突きの斬波と接触。辺りに衝突音が響き渡るが、力場の壁は欠けることなくその攻撃に耐え切った。

 攻撃を防がれたロレットは四方八方からの射撃を潜り抜けながらルードの右側面へと回り込む。

 そうして再び突きの斬波を発射。今度は六連続という手数重視だ。

 六発の斬波は様々な軌道をとってルードへと襲いかかろうとしている。正面からの一直線が三つ、左側面――ルード側から見たら背面側――へと回り込む曲線、足元を襲う角軌道、頭上狙いの曲線。

 力場の壁はまだ同じ位置に存在したままだ。仮に動いたとしても壁の幅は縦横共にルードの身長よりも少し長い程度。散らばって襲いかかる斬波を全て受けきることはできない。

 無表情のまま攻撃の結果を見守るロレット。その間にも六つの斬波はルードと迫り――



 直後、新たなゴーレムが四体出現したのと同時に防がれた。



 出現したのは先程、斬波を防ぐ力場を展開したゴーレムと同じ型。どうやら新たな機体を呼び出したようだ。

 合計八体となったゴーレムは宝玉の光線を結びを立方体状に接続。結果、前後上下左右全ての面に守りの壁を展開させたのであった。


「残念。防がれちゃったね~」


 ロレットにそう告げるルード。その表情は無邪気に笑っており声も遊び気分のように愉快げだ。人によっては苛立たしく思っただろう。

 けれども、ロレットはその程度の事で感情を乱すことはなかった。表情も変えることなくただ一心にルードの守りを観察する。


「それで……これからどうする?」


 そんな彼を試すようにルードは語りかける。やれるもならやってみろという挑発の声色ではない。どんな風に攻略するのかをワクワクしながら待っているといった感じの声色だ。


「決まっている」


 そのルードの問いに静かな口調でロレットは応じる。槍を振り上げまるで大剣を振り下ろす時のような構えをとるロレット。

 そうしてから彼はルードのこう告げたのだった。


「ただ壊す。それだけだ」


 直後、彼は槍を振り下ろした。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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