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無限の世界  作者: 蒼風
八章「王都襲撃」
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八章三話「救援」(4)

 リーゼンオルグ城の屋上へと降り立ったロアン達。彼らはすぐに階段を降りて城内へと入っていく。

 途中、通りすがりの兵に戦況を尋ねるとロレットは謁見の間にやってきたルードと戦闘中、他のレグイレムの面々は妨害をこじ開けながらデータベース室を目指しているという事だった。ロアン達の現在の位置を考えるとその間の通路で待ち伏せすることが可能な状況である。


「よし、それじゃあ待ち伏せで連中に対応するぞ。城の兵は向こう側の通路から接近。挟み撃ちにする」


 挟み撃ちの胸を兵に伝えて部下を引き連れ目的地へと急ぐロアン達。やがて、彼らは目的の場所に辿り着いた。


「いいタイミングだったみたいね」


 レリッサが見つめる先にいるのは集団の先頭を走るレグイレムの兵。どうやら向こうも丁度やってきたらしい。


「接敵!! 攻撃始めろ!!」


 ロアンの命令にすぐさま部下達が射撃を始める。相手の方もロアン達の姿に気付いたようで同じように射撃で応戦してきた。

 その場に生まれた応酬による停滞。けれども、停滞は敵の新たな動きによって打ち破られる。

 集団より二人の男が突出してきたのだ。気配からしてかなり実力者。これにロアンとレリッサが応じた。

 鞭のように伸びた剣の攻撃をレリッサが短剣で防ぎ、もう一人の男、ゲイウスがマントの影から取り出した大剣にはロアンが剣の腹を殴り逸らす。

 直後、響いたのは大剣が床を穿つ衝撃だった。その余波で土煙が舞い、それが通路を満たしていく。

 利かなくなった視界。けれども、そんな中でも両者の戦闘は継続していた。

 行き交う弾。交差する刃。そして繰り返される回避と反撃。

 視覚が駄目なら聴覚を頼りにすればいい。床を踏む音で相手の位置はわかるし、蹴り足の音で跳躍もわかる。攻撃も風を切る音や殺気で感知する事ができる。

 轟音が響いた。ゲイウスが大剣を振るいそれが壁を叩いのだ。そのまま大剣を振りきったのだろう。擦れる音と壊れる音が同時に響きながら動いていく。

 その音を頼りにロアンが身を伏せ大剣をやり過ごすと直後、相手へと肉薄した。風の流れで剣の動きはわかる。動きが分かれば相手の位置だって見当がつく。

 相手の姿が見えた。土煙の向こうに黒い衣服が確認できる。そこへと向かってロアンが拳を放つ。

 その殺気に反応して衣服が動く。

 遠くなる衣服。相手が後退したのだ。間合いの外へと逃げられ拳が空を切る。その直後に響く前方上方から連続的な破壊音。相手が天井を斬りながら大剣を振り下ろしているのだ。

 それに気付いたロアンは横へと回避。振り下ろしによって生じた風を受けながら再び接近し拳を見舞う。

 相手へと向かって伸びていく拳は、しかし相手の腕によって阻まれた。けれども、ロアンの拳の威力は高く相手の体はその威力によって吹き飛んでいく。

 それを確認しロアンはすぐに別のターゲットを索敵。やがて、右前方の方から味方ではない射撃音が聞こえる事に気付くとそこへと向かって全速力で駆け出した。

 接敵と同時に回し蹴り。蹴りは敵の頭部に直撃し敵は昏倒。体は壁へと激突した。

 それを激突音で確認したロアン。そうして次の敵の位置を探ろうとしたその時だ。背筋に悪寒を感じ彼は急ぎその場から退避した。

 直後、彼のいた場所を高威力の攻撃襲いかかる。

 攻撃の種類は斬撃の斬波。威力や範囲から考えれば獲物は大剣程の大きさだ。

 すぐにロアンは攻撃手を先程の敵ゲイウスだと判断し、攻撃方向へと跳躍。しかし、既にゲイウスはロアンの右側面に回りこんでいた。

 真横から放たれる強大な殺気にロアンは首をそちらに向けるが移動中の体までは向けることは出来ない。

 そのまま、大剣の直撃を受けようかというその時、横から援護が放たれた。

 援護の主はヴィアン。彼女はゲイウスの右側――ロアンから見れば正面やや右側の方向――におり、そこから射撃を放ったのだ。

 弾は大剣の腹にいくつか着弾。衝撃により僅かに左、ロアンの後方側へとずれる。

 それを見てロアンは腕を後方へとスイング。斬波の壁を生み出しその叩いた反動で僅かでも距離を稼ごうとした。

 その試みは上手くいきロアンの背後を大剣を通り抜けていく。

 大剣の衝撃で風が生じ、その風がロアンの身を追い越していった。その風に煽られながらロアンは振り返りゲイウスへと迫っていく。

 そんなロアンを眺めていたヴィアン。と、唐突に彼女は首を後ろへと引いた。直後、彼女の頭部のあった場所を敵の銃弾が抜けていく。

 すかさず弾が飛んできた方向からやや右側へと銃撃を行うヴィアン。敵の射撃直後、敵がそちらへと動いたのが足音によりわかったからだ。

 予想通り敵はそこにいたようで、視界の遮られた土煙の向こうで呻く声が返ってきた。

 その声を確認としてヴィアンは次の標的を探すために辺りの気配を探ろうとする。

 そこへ何かが渦を描いて飛んできた。

 反射的な飛び込み動作で軌道上から逃れるヴィアン。渦は彼女の靴を掠めそのまま進んでいったかと思うとその線上にいた他の仲間を斬り刻んだらしい。肉の斬れる音と共に叫び声が響いてきた。

 そのすぐ後、渦が元へと戻っていく。

 その際に見えた、刃と糸。それでヴィアンはレリッサが防いでいた武器を思い出す。

 と、再び殺気。どうやら敵は自分の攻撃を逃れたヴィアンの存在に気付いていたらしい。

 視界が悪い上に向こうの武器はかなり変則的な軌道をとる。撃ち落とすのは難しい。

 すぐさまヴィアンは回避を試み事にした。だが、その必要はなくなったようだ。

 その理由は突然響いてきた金属音にあった。それが響く直前、相手からの殺気が消えたのだ。

 金属は短い間隔で連続して聞こてくる。この間隔にヴィアンは覚えがある。レリッサの短剣に連続攻撃だ。どうやらレリッサが攻撃を仕掛けた事で敵が攻撃を中断したらしい。

 心の中でレリッサに感謝しながらヴィアンは後退。その戦場から離れていった。

 そのレリッサは鞭のように伸びる剣を操る敵ベリーヌ・ロイスへと攻撃を仕掛け続けている。

 先程は一撃を受けて吹き飛ばされてしまったが、すぐに体勢を立て直し再度ベリーヌに襲い掛かった彼女。それからは左右に持った短剣をベリーヌに向かって交互に振るっていた。

 その攻撃をベリーヌは左手に持った鞭剣(むちけん)で捌いていく。

 二本と一本。数の上ではレリッサの方が手数が多く、普通に考えれば全ての攻撃を捌ききれるはずがない。

 けれども、ベリーヌはその問題を鞭剣の特徴を用いて解決していた。

 一つは重量。鞭剣は収縮状態であれば大きさは通常の剣ほどの大きさで重量も構造上それよりも少し重い程度である。

 当然、一本辺りの重量は鞭剣の方が重い。武器の重量は攻撃の威力に多大な影響を与える。なら、ぶつかり合えば当然、鞭剣が勝つ事になる。

 ベリーヌはそれを理解し防ぐ際にレリッサの攻撃態勢が崩れやすくなるように弾く方向を制御しているのだ。攻撃姿勢が崩れれば次の攻撃までの時間も僅かに鈍る。そう、僅かな時間だけ。だが、それも繰り返せば多大な手数差となる。

 もう一つは伸縮可能という点。剣を伸ばせることで防御できる範囲が広がっているのだ。具体的には伸ばした剣先で最初の攻撃を防ぎ、続く二撃目を(つば)付近の部分で捌くという方法である。

 この他にも防御のない所へ攻撃を誘導して避けたり間合いの広さで牽制することで接近軌道を限定させたりする戦法をとっているベリーヌ。そのせいで攻撃の主導権をとっているはずのでレリッサが攻め切れないでいた。

 やがて、攻撃のし続けによる疲労によって転んでしまうレリッサ。すぐに姿勢は立て直したがその僅かな隙を見逃すベリーヌではない。即座に鞭剣を振りその剣先をレリッサの元へと飛ばしたのだった。

 ベリーヌの横薙ぎの一撃に復帰直後のレリッサは避けることが出来ない。せめてもの対応に両の短剣を交差させ防御しようとするレリッサ。けれども、その防御は間に合いそうにもなかった。

 攻撃に対し抗う術を持たないレリッサ。そんな彼女に向かって鞭剣の剣先は徐々に迫っていき――そこへ射撃が飛んできた。

 放ったのは土煙の向こう側にいる味方。方角的にヴィアンではない。射撃はそのまま鞭剣の剣先に衝突。数発の弾丸を受けて剣先が明後日の方向へと飛んでいった。

 微かにだが聞こえた相手の舌打ち。それにほくそ笑みを浮かべながらレリッサは再びベリーヌに接近していく。

 土煙は徐々に晴れつつあるが、戦場は既に敵味方が入り乱れた状態へと入っている。

 突入してくる敵を迎え撃とうとする味方。形としては味方の陣に敵が食い込む形となりそれが徐々に形を崩し両陣営が混ざってしまっているという状態だ。

 敵側が単体で最後尾を抜けようとしないのは一人で抜けた所で意味がないからだろう。例えここを抜けても単体では必ずどこかで終わってしまう。抜けるならある程度の集団でないと作戦は成功しない。それがわかっているからレリッサ達の部隊を倒そうと行動しているのだった。

 そこへ一際派手な音が遠くから届いてくる。

 音がしたのは謁見の間、ロレットとルードが戦っている場所だ。

 ロレットの実力をロアンやレリッサ達は知っているがルードもなかなかに厄介な相手だ。

 それを証明するかのように激しくなっていく戦闘音。こうして戦いは苛烈を極めていくのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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