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無限の世界  作者: 蒼風
八章「王都襲撃」
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八章二話「開幕」(2)

「潜入部隊が動いたようだな」


 ディスプレイに表示された王都の映像を見てオルドラがそう呟く。

 ディスプレイにはゆっくりと進むドラインとそれを取り巻く靄、そしてその周囲で巻き起こっている戦いの様子が映し出されていた。

 ドラインとレグイレムの面々を同時に対応しなければならなくなったラクロマの兵達はそれ故に戦力をどっち付かずといった感じで分散させている。最も恐らくそれも少しすれば立て直されるだろうが。


「まあ、その間だけでも楽をさせてもらうか……おい、ルード。貴様も働け」

「働いてるじゃん」


 オルドラの叱咤に不満顔で反論するルード。確かに彼の言う通りルードはとりあえず一つ仕事をこなした直後であるので叱咤される言われはない。最も――


「ゴーレムを出して命令しただけだろうが」


 なので、彼が何か多大な労働をした訳ではないのだが……


「それが僕の役割じゃん。なに~? 僕も下に降りて直接殴ってこいって事?」

「違う。もっと、ゴーレムを事細かく動かせと言っとるんだ。ほら、飛空船とドラインとの距離がまだ近い。もっと離れさせろ」

「注文が多いな~」


 そう言いつつオルドラの指示通りのゴーレムに司令を送るルード。

 ルードの命令を受けて空を飛ぶゴーレム達がラクロマの飛空船へと近づいていく。接近戦を嫌ったラクロマの飛空船はその場から離脱。ルードの想定通りゴーレム達から距離をとった。


「これでいい?」

「ああ。後、教会付近で戦っている味方が追い詰められている付近のゴーレムを助けに回してやってくれ」

「はいはい」


 そんな感じでオルドラからの指示を受けてルードはゴーレム達を操っていく。


「全く、とんでもない数を展開しおって」


 愚痴るオルドラ。窓の外では視界を埋め尽くさんばかりに空を飛ぶゴーレムが飛び回っていた。地上の方でもどこを見下ろしてもゴーレム、ゴーレム、ゴーレムとゴーレムがそこら中に溢れている。


「でも、おかげで助かってるでしょ?」

「確かにそうだが……これだけ出してくれるのなら別の案を考えたものを……」

「僕の戦力をあてにしないでよ。僕は協力しているだけなんだから……」

「陽動役の人数よりも遥かに多い数のゴーレムを出しておいてよく言うな」


 彼の言う通りルードが今回出したゴーレムは陽動に参加している人数よりも遥かに多かった。軽く一〇倍は超えているかもしれない。

 彼がそれだけのゴーレムを持っていても不思議ではないが、やはり実際に目の当たりにしてみるとため息を吐くしかない。


「……ともかくだ。戦力があってもそれを上手く運用できなければただ潰されるだけの的でしかない」

「そんな事わかってるよ~。それよりも次の段階にはまだ入らないの~?」


 徐々にオルドラの口調が説教モードに入りつつあるのを感じとったルード。そうはささせないために彼は話題の転換を試みた。


「ふむ……王城は……どうやら兵を出すことに決めたようだな。城内の発着場に慌ただしい動きがある」


 彼の試みは成功したようでオルドラはディスプレイに王城の映像とともに各種センサーの情報を映し出す。

 それを見ると確かに城内の発着場各所から高い熱量や高濃度マナ反応が検出されていた。また、窓から僅かに見える人の流れも発着場へと向かう兵が多い上に城内の見張りの配置もみるみるうちに変わっている。どうやら王城内の各所から出せそうな兵を捻出しているようだ。


「彼らが出発すれば次の段階だな」

「いよいよ王城リーゼンオルグ城への突入というわけか」


 オルドラの台詞にウキウキとした表情を見せるルード。

 と、近くで軍側の飛空船が爆発した。ルード達が乗る飛空船を狙おうとしたのをルードのゴーレム達が撃墜したのだ。

 撃墜された飛空船は地面へと落下。いくつかの建物を巻き込みながら地上を滑っていく。


「じゃあ、相手がたくさん来るように敵をいっぱい倒すとしますか」


 そんな戦いが近くであったのだが、ルードはそちらへ視線を向けることなく話を続けている。そうして彼はパチンと指を鳴らした。

 別にこの行為自体に何かの意図や合図はない。実際はその裏でゴーレム達に司令を送っているだけである。

 司令を受けたゴーレム達はその動きを高度化。追い込みと待ち伏せ、一点への一斉射撃などさらに高度で連携度の高い行動をとるようになった。


「……おい、そういう事ができるなら最初からそうしていろ」


 そんな変化を目の当たりにしてオルドラはルードへ睨みの視線を送る。

 けれども、ルードは聞く耳持たない。今も口笛を吹いてあさっての方向を向くことで視線を受け流している。

 そんな反応にオルドラの慣れたものですぐに気を取り直すと再びディスプレイに視線を戻した。


「……北から移動砲車の集団が来ている。連中では対処が難しい。お前のがゴーレムを向かわせろ」


 無論、ルードの尻を叩くのも忘れない。先程の睨みが聞いたのかルードは諦めた様子で大人しく彼の言うことを聞いた。飛行しているゴーレムの集団が北へと移動を開始する。

 それからどれくらい時間が経った頃だろうか。

 王城の方に動きがあった。告知音と共に消していた王城の映像がいきなりディスプレイいっぱいに表示される。


「ようやく出発するようだな」


 オルドラの言う通りディスプレイには兵を乗せた輸送用の飛空船が戦闘用の飛空船と共に空へと飛び立とうとしている様子が映しだされていた。


「じゃあ、こっちも予定の位置へ移動しないとね」

「わかっている。そっちも奴らがすぐに戻ってこれないようにゴーレム共の指示はしっかりしておけ。後それと仲間達には迷惑を掛けないようにな」


 作戦の次の段階、ルードはリーゼンオルグ城への突入するグループに入っている。理由はやはりその保有戦力故だ。彼がいれば大半というかほとんどの事態に対処できるだろう。

 なお、会話からもわかる通りオルドラは居残り組である。このまま飛空船の中で戦況を眺め、指示を出したりドラインをコントールするのが彼の仕事だ。


「……ん、よし。これでいいかな」


 どうやら王都に残るゴーレム達への指示が終わったらしい。軽やかな足取りでルードは貨物室へと繋がる階段でへと向かう。


「それじゃあ、そろそろ行くね~」

「ああ、これでようやく静かになるってもんだ」

「……今回やかましかったのは君のような気がするんだけど」


 そう言い残した貨物室へと降りていくルード。まもなくしてディスプレイに後部ハッチが開いたというメッセージが表示された。それと共にハッチ付近の貨物室の様子がディスプレイに表示される。

 何の装備もつけないままハッチへと歩いて行くルード。そんな彼をオルドラを始めとした飛空船の面々は誰も止めない。どうせ自力どうにかするのだろう。そういう予想が彼等の中にあったためだ。

 そうしてそのまま空中へと飛び降りていくルード。飛び降りる際は軽くピョンと飛んだのがディスプレイ越しにも見えた。

 彼の身は重力に引かれて落下していくが少ししてルード付近に何かが現れたかと思うとそれが落下していくルードを追いかけ彼を背に乗せる。後はもうリーゼンオルグ城へと向かうだけだ。

 その行き先を追うように窓を見れば影が一つ王城へと向けて飛翔していくのが見えた。

 やがて、彼の姿が見えなくなる。思わず漏れでたため息。それが終わるとオルドラは独り言を呟いた。


「さて、ようやく舞台の開幕か。役者はそれぞれ己の役割を果たし物語は進行する……最も、結末がどうあれここまでくればあの方達の目的は達せられたも同然だろうがな」


 最後に宙へと消えていった言葉。それはオルドラの推測だ。

 不利であっても実行が決まっている作戦。ターゲットは相手にとって無視できない王都と王城。そしてここが一の世界である事とレグイレムが随分前から調べていた事。

 つまり、あの方の目的はそれだ。

 その事についてオルドラは不満はない。この事はレグイレムでもかなり機密レベルの高い情報である以上、今はまだルードに知られる訳にはいかないからだ。メンバーに教えればその途端彼に知られる可能性が高かった。当然、ラクロマ側には絶対に漏れてはいけない。故に作戦に関わっている面々には真の狙いを伏せているのだろう。

 まあ、あの方の真の狙いがなんであれ今オルドラ達がやるべきことは変わりない。全力を尽くして王城へと侵入を果たすだけだ。

 ラクロマは近年はこちらに積極的な妨害を行っている国家の一つだ。その国家に打撃を与え情報を得るのだからレグイレムにとっては利益である。

 つまり、成功したほうがいいに決まっているのだ。なら、手を抜く理由はない。


 状況の推移を見守りつつドラインに新たな指示を出すオルドラ。

 彼の眺めるディスプレイには業火広がる王都のが映し出されていたのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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