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無限の世界  作者: 蒼風
八章「王都襲撃」
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八章一話「王都を目指して」(9)

 そうして最後はレリッサとヴィアン達のところである。

 小柄なゴーレムを二体撃破して勢いづいたヴィアン達は残りのゴーレム達もこのまま一気に殲滅しようと列の壁を前進させているところだった。

 対しゴーレム達はガトリング装備の大柄なゴーレムが弾幕を放ち相手に防御の動きをとらせると、その隙に砲撃装備のゴーレムが砲撃で連射していく。

 砲撃の威力に押され壁が崩れかけるヴィアン達だが、それでもどうに堪えることには成功した。お返しにとばかりに銃で反撃するが、いかせん威力が低いせいか結果は僅かに装甲を削る程度のもの。小柄なゴーレムであれば普通にダメージが通ったが、やはり巨体通りの重装甲だという事なのだろう。

 それでも彼女達は射撃を続ける。例え決定的なダメージをすぐには与えられなくても蓄積させれば破壊には到れるのだ。ならば、牽制にはなる。

 相手も闇雲に攻撃を食らうつもりはないようで距離を詰めてくる様子はない。どうやらヴィアン達を殲滅した後進むつもりのようだ。なお、近接戦闘の小柄なゴーレムは大柄なゴーレム達に守られるようにその背後に立っている。先程、二体撃破されたのを見て迂闊に突破を掛けるのは危険だと判断したのだろう。

 そんな中でレリッサもまた銃と防御系の魔具を持ってゴーレム達と対峙していた。短剣で射撃戦をしていてはすぐに手持ちの分が尽きてしまうためだ。後ろの仲間から自分用の装備を受け取り彼等の列に加わっていた。

 彼女達の射撃の狙いは首元や腕の隙間。装甲の薄いそこを狙うことでどうにか相手を潰そうという狙いだ。

 と、砲撃がレリッサのいる場所に向けて放たれた。すぐに気付いたレリッサは盾を身構え砲撃を受ける。

 受けるときのコツは姿勢を低くし防御を斜め上に構える事。そうする事で着弾面積は小さくなるし衝撃を後方斜めしたへとする事で吹き飛ばされるの距離を短くできる。

 さらに受けた際に全身に力を入れ過ぎないようにする事も忘れてはいけない。力んでしまえば体が硬くなり砲撃の衝撃をその身で全て受ける事になってしまう。なので、ある程度力を抜くことでそのダメージを抑えようというのだ。

 その試みが上手くいきレリッサはダメージと後退を最小限に抑えることができた。すかさず彼女は撃ってきたゴーレムに向けて反撃を撃つ。

 彼女の撃った弾丸はいくつかが右腕部と胴の隙間に命中。が、破壊には至らず代わりに弾かれたような音が返ってきた。

 既に幾度も聞いたその音。そんな音にレリッサは感情を回すことなく射撃を続けようとした。しかし、そこに別のゴーレムがガトリングを撃ち放ってくる。

 仕方なく射撃を中断して防御をかざすレリッサ。彼女が攻撃を防いでいる間、空いた別の隊員が射撃を敢行する。

 そんな感じで攻撃と防御を入れ替わりながらゴーレム達の進行を阻止するレリッサ達。言葉にすると非常に地味な戦闘であるが、大事なのは目的を達成すること。そういう意味では彼女達の目的は達成されていた。とはいえ、敵も諦めない以上、目的である防衛を完全に達成するためには相手の撃破が必要事項となる。

 レリッサはヴィアンを見る。彼女の視線は『そろそろこちらから攻めないか?』という合図だったのだが、視線に気付いたヴィアンが首を横に振って応える。

 反撃が認められずレリッサはブスッとした表情になってしまうが、不満は口にしない。攻めを行うということは守りを疎かにする事である事は彼女も理解しているからだ。タイミングが悪ければ相手に突破を許してしまう事になってしまう。要は今はまだ我慢の時間帯であるという事だ。


「はあ、いつまで待てばいいんだか……」

「……無駄口禁止」


 思わずこぼれてしまった愚痴に注意を促されてふくれっ面になってしまうレリッサ。その表情で彼女は注意を促しがヴィアンを睨むが彼女はどこ吹く風とばかりに意に介さない。

 しょうがないのでレリッサは攻撃のタイミングが来たこともあって敵ゴーレムに不満をぶつける事にした。

 彼女の放った弾は左腕と胴の隙間に吸い込まれ――その腕を断つことに成功した。


「よし!! 私って天才!!」


 その成果に喜びの声を露わにするレリッサ。だが――


「あなただけの成果じゃない」

「……ぶー」


 冷静なヴィアンのツッコミを受けてしまいその感情も急速に萎んでしまう。最も、実際全員が攻撃を浴びせ続けたまたまレリッサの番で破壊できただけなのでヴィアンの指摘は間違っていない。

 それはレリッサとて自覚しているが、折角気分が高まっていたのだ。そこに敢えて水を差す必要はなかったのではないかというのが彼女の本音であった。

 ふてくされた表情を見せるレリッサであるが、戦闘の方に関しては手を抜いていない。しっかりと防御し的確かつ精確に射撃を継続していた。

 やがて、新たな方法を導き出したのかゴーレム達が新たな動きを見せる。

 彼らが始めたのは自分達を密集させての前進。その配置は先頭、その左右後方にガトリング装備のゴーレムを、後方に砲撃装備を置いて最後尾に近接装備のゴーレムという配置だ。どうやら強行突破を図るつもりらしい。

 配置からして最後尾の近接装備が本命。恐らく他のゴーレムを犠牲にしてでも機関に近づき破壊するつもりなのだろう。

 それを示すかのようにゴーレム達の攻撃が一箇所に集中する。

 最初こそ隊員はその猛攻にどうにか耐えていたが、時間が経過する毎に堪えきれなくなり遂には砲撃によってその身を吹き飛ばされることとなった。

 吹き飛んだ事で列の壁に穴が開き、ゴーレム達の集団はすぐさまそこへと殺到しようとする。

 無論、ヴィアン達の方もそれを簡単に許すつもりはない。

 急いで一人一人の間隔を開けることで開いた穴を塞ぎつつ、まずは先頭のゴーレムに攻撃を集中させる。

 攻撃を一身に浴びる大柄なゴーレム。威力の低い攻撃と入っても数を受ければたちまち固い装甲も損耗していく。さらに言えばはそれまでもいろいろと攻撃を受け続けていたのだ。大柄なゴーレムの装甲はみるみるうちに各部を削り取られていった。

 肩部、腰部と最初こそ大柄で当たりやすく破損程度なら問題なさそうな部分から破損を始めたが、やがては腕部や肩の関節部など重要な部分が吹き飛んだり動かなくなり始める。そして終いには右足部がやられ、これ以上進むことができなくなったゴーレムは大きくよろめき甲板へと倒れることとなった。

 先頭の仲間がやられた事で後方左右にいたゴーレムは左右に割れさらに後ろにいた二体は右へと迂回することで倒れた仲間を避ける。

 乱れる陣形。その隙を突いてヴィアン達は孤立したゴーレムに射撃を敢行した。左へと避けたゴーレムに攻撃を集中させたのだ。

 先程と同じような光景が繰り返されゴーレムが瓦礫となり変わる。それに目もくれる事なく新たな標的へと銃口を向けるヴィアン達。

 既にゴーレム達はヴィアン達の列の壁まであと少しという距離まで迫っていた。正直、この撃破ペースでは突破されてしまう。


「っ、レリッサ!! あなたは近接装備を他はこのまま残りのゴーレムを狙って」

「了解~」


 相槌と同時に駆け出すレリッサ。既に彼女は銃と防御の魔具を地面に投げ捨て得意の獲物に持ち替えていた。

 仲間の射撃が背中から通り過ぎて行く。その援護を受けながらレリッサは小柄なゴーレムへと接近していった。が、そんな彼女の前に砲撃装備のゴーレムが立ち塞がる。

 目の前に現れたと同時の砲撃。姿を認めた瞬間、体を回して横へと飛んでいたおかげでこの攻撃の回避に成功するレリッサ。そんな彼女へと向きを直していく砲撃装備のゴーレム。

 他の皆の攻撃は残ったガトリングを装備したゴーレムが一身に引き受けている。彼等の進行は止まらない。避けたレリッサを横を通り過ぎて行くゴーレム達。

 急ぎレリッサはその後を追い掛けようとするが、その瞬間小柄なゴーレムが短剣を投じてくる。

 飛翔してくる短剣の狙いはレリッサの頭部。短剣を持ち上げて防ぐには間に合わない。即座の動作で彼女は頭を動かし短剣から逃れた。その短剣がロアン達の戦場へと飛んでいっているのに気付かないまま……

 攻撃を躱したレリッサはすぐさま追撃に体勢に入る。身を低くして全力疾走。相手も前進のため正面を向いているので牽制や妨害の攻撃が飛んでくる可能性はかなり低い。

 相手は味方の攻撃によって遅延を余儀なくされ自身には何の障害もない。

 追いつける。と、総判断した時だ。突如、盾となって先頭を走っていた大柄なゴーレムがさらに速度を上げた。

 加速しながらヴィアン達の列へと突っ込む大柄なゴーレム。だが、かなり無理をしているようだ。その証拠に被弾もしていないのに装甲がどんどんと剥がれ落ち、さらには各部で小さな爆発まで起きている。

 自壊を恐れぬ突撃。それでヴィアン達は大柄ゴーレムの狙いに気が付く。しかし、だからといって列に穴を開ける訳にはいかない。故に彼女達はそれよりも先に撃破しようとさらに狙いを絞っていく事にした。

 彼女達の攻撃を受け装甲を壊れされていく大柄なゴーレム。だが、彼女達の奮闘むなしくゴーレムは列に突撃、自爆を起こして列に大きなを穴を作り上げた。

 爆風によって吹き飛ぶ面々。その間に残りのゴーレム達は速度を上げて悠々と列を通り抜けていく。そうしてゴーレム達はヴィアン達の列を突破すると砲撃装備のゴーレムが砲を構えて静止。ヴィアン達の方へと振り返るとその砲を掃射した。

 砲撃が線を作って周囲を薙ぎ払う。避ける者、伏せる者。隊員達はそれぞれの判断で砲撃から逃れようとする。

 砲撃の掃射はしばらくの間続いた。幾度も円弧を描きその度に隊員達は必至に動きまわる。

 後ろを追いかけていたレリッサもその一人だ。ただ、彼女の場合追い掛ける足を止める事はなく跳躍することで砲撃を回避していたが……

 そうしてしばらく続いた砲撃だったが、やがてその砲自体に異常が生じ始めた。

 元々、これだけ長時間を放ち続けられる設計ではなかったのだろう。砲口部分が赤く熱を帯び始め、それを契機に砲全体が赤に染まり始める。そうして砲口がその熱で溶け始めた頃、遂に砲が爆発。連鎖的に他の部分も爆発を起こし自壊を始めた。

 爆発が始まったと同時にゴーレムは砲を手放している。とはいえ、完全に対比できたわけではなく片腕は爆発に飲まれて破損、半身程焼け焦げる事となった。

 相手の攻撃が止んだ事でヴィアン達は急ぎ小柄なゴーレムに向けて射撃を始めようとするがそのゴーレムが盾となってその攻撃を阻む。

 ゴーレム自体は少しの時間で破壊。完全にその機能を停止したが、その間に小柄なゴーレムとの距離はかなり開いてしまっている。追いかけ続けていたレリッサを除いて。


「この……」


 最早、自分が最後の砦だと悟り躊躇なく己の力を出しきり速度を上げていくレリッサ。見れば小柄なゴーレムは後数歩で甲板の終わりへと差し掛かろうとしている。

 甲板が終われば後は船体を伝って主機関の所へと渡るだけだ。その時間は甲板を渡り切るよりも遥かに短い時間で済むだろう。

 残り猶予はもうない。小柄なゴーレムが甲板を飛び降りるのを見て一気に勝負を掛ける事にしたレリッサ。彼女は己が持っている全ての短剣をその手に掴む。

 そうして甲板が終わると同時に停止。反動で前に乗り出そうとする身をコントロールするとその勢いを回転へと変えさらに短剣を飛ばす力へと転化させる。

 勢い良く投げられた短剣。それらは回転し弧を描いて小柄なゴーレムへと迫っていく。

 これにゴーレムは走りながら迎撃。残った短剣一本で全ての短剣を打ち落とした。

 しかし、その行動はレリッサも予測済みである。当然、それを見越した既に手を打っていた。

 突然、小柄なゴーレムが挙動を崩す。この想定外の自体にゴーレムは己の状況を確認することを判断。カメラを下へと動かし己の現状を確かめてみることにする。

 下へと動く視界、そしてそれに映ったもの。それは砕け散った己の右足だ。足首辺りから完全に破損しておりこぼれ落ちた破片が空の中へと吸い込まれていく。

 何が起こったのかはデータベース内にある過去ログを見てすぐにわかった。己の右足が威力の高い攻撃によって破損したのだ。

 そうレリッサは先の攻撃の際、一本だけ手元に残しそうして攻撃を終えた後その手元に残した短剣を体を壊すのを覚悟で全力で投じたのだ。

 肉体のリミッターを外し全身を使っての投擲。結果、その投擲はレリッサに多大な負荷を掛けたが投じられた短剣は剣先を敵ゴーレムへと真っ直ぐ向けながら飛翔することとなった。

 当然、先に投じられたものよりも早い速度のそれは小柄なゴーレムの迎撃の最中に命中。その右足を破壊するに至ったのだった。

 破壊の衝撃で船の壁から剥がれ落ちることとなったゴーレム。見たところ飛行能力はなさそうなので後は真っ逆さまに落ちるしかないだろう。

 なんとかなった。そう判断し息を吐くレリッサ。

 だがその直後、ゴーレムは自爆を敢行。爆発が僅かながらに主機関を飲み込んだ。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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