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無限の世界  作者: 蒼風
八章「王都襲撃」
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八章一話「王都を目指して」(8)

 リアは自分が助かったことに安堵を得ていた。

 もし、彼の助けがなかったら自分はゴーレムのガトリングに狙われていただろう。

 その事に感謝し刀弥の方へ視線を向けるリア。そうして彼女は彼の背後から近寄る小柄なゴーレムの姿を認めた。

 刀弥はリアを助けるために攻撃に全力を割いており背後のゴーレムの存在に気付いても避けることができない。

 リアは急ぎ構築途中だった魔術式の構築を再開した。

 現在、魔術式の構築度は七割。間に合うかギリギリだ。とにかくリアは構築に意識を集中させていく。

 音が聞こえなくなり熱や湿度も感じられなくなった意識。僅かな視界だけが外界と意識を繋いでいる。構築の速度は上昇した。だが、それでも余裕があるわけではない。

 八割。小柄なゴーレムが短剣を左右に広げ振るための構えを作っている。刀弥はまだ動けない。

 九割。小柄なゴーレムが短剣を振り始めた。ようやく刀弥が動き出したが逃げ切れないのは一目瞭然。早く早くとリアは念じるように意識をさらに集中させていく。

 そうして構築完了。急ぎ彼女は風の矢群を放った。しかし、リアと小柄なゴーレムの間には刀弥がいる以上、直線上には撃てない。けれども、だからといって迂回軌道では時間的に間に合うはずもない。

 故に彼女が狙ったのは視界に僅かに映る刀弥の体が遮っていない部分だった。風の矢群はそこを目指して互いに集い束ねあっていく。混ざり合い折り重なりあい一本の大きな矢のようになっていく風の矢群。小柄なゴーレムの短剣の刃は刀弥の背中すぐそこまで迫っている。

 間に合ってと願いながらそれを見つめるリア。

 そうして彼女の攻撃はどうにか間に合った。纏まった巨大な風の矢が小柄なゴーレムの右肩部分を穿ったのだ。

 矢の威力によって吹き飛ばされる小柄なゴーレム。九死に一生を得た刀弥はすぐにその場から離脱。斬波によって大柄なゴーレムを狙おうとするが、既に大柄なゴーレムの方は刀弥から十分な距離をとっていた。

 距離から見て打っても躱されると判断した刀弥は追撃を中断。すぐにリアの元へと駆け寄った。


「大丈夫か?」

「うん。刀弥のおかげでなんとかね。それよりもそっちこそ大丈夫?」

「ああ、リアのおかげでな」


 そんな会話を二人はしているが無論相手への警戒は忘れていない。

 ゴーレム達の方も互いに合流しており、いつでも動ける姿勢となっていた。


「じゃあ、いくか」

「うん」


 刀弥のその言葉に頷くリア。直後、刀弥が駆け出しそれを見て小柄なゴーレムも動き出した。

 それに合わせてリアも大柄なゴーレムもそれぞれの動作を始める。

 最初に攻撃を始めたのは大柄なゴーレム。大柄なゴーレムは刀弥と小柄のゴーレムと直線になる位置に移動するとなんと小柄なゴーレムの真後ろからガトリングを放ち始める。

 放たれた弾群(だんぐん)は真っ直ぐ飛んでいき、そのまま小柄なゴーレムに当たるかと思われた瞬間――小柄なゴーレムが右へとその体を動かした。障害物がなくなった事で弾群はそのまま正面にいる刀弥に向けて飛翔していく。

 その弾群をリアの力場の盾が弾いた。

 周囲に散っていく弾群。そんな弾群を防ぐ盾に守られながら刀弥は大柄ゴーレム向けて斬波のための構えを作ろうとする。

 だが、そこへ側面から小柄なゴーレムが襲いかかってきた。気付いた刀弥は慌てて構えを解き小柄なゴーレムの短剣を防ぐ。

 続く二撃目をバックステップで躱した刀弥。彼はすぐさま踏み込み小柄なゴーレムに斬り掛かる。

 小柄なゴーレムは右側の短剣でこれを防ごうとするが勢いを殺しきれず僅かながら後ろに吹き飛ばされてしまう。どうやら先程のリアの攻撃で右肩辺りに支障をきたしたらしい。

 ならば、チャンスだと刀弥がさらに接近を試みようとするが、小柄なゴーレムが大きくジャンプすると同時に大柄なゴーレムからのガトリングが飛んできた。仕方なく刀弥はステップでこの攻撃を回避すると大柄なゴーレムに狙いを変える。

 刀弥が近寄るための一歩を踏み出すと同時、リアが牽制のための風の矢群を小柄なゴーレム目掛けて放った。

 自身を狙って飛んでくる風の矢の群れを小柄なゴーレムは飛んだりステップする事で回避する。が、数が多い。必然的に避ける事に集中せざるを得ず小柄なゴーレムは刀弥へ妨害に行くことができないでいた。

 その間に刀弥は大柄なゴーレムとの距離を一気に縮めていく。

 接近に気付いた大柄なゴーレムが弾幕を張りながら後退しだすが大柄で重武装、加えて刀弥の方に体向けたまま足を後ろに下げての後退のため速度などあるはずがない。弾幕を避けながらでもあっという間に追いついてしまった。

 そのまま刀弥は刀を振るう。狙うのは残った左腕と胴体の接続部。胴体や頭部ではないのは相手の攻撃能力を確実に奪いたかったからだ。胴体では斬りきれない恐れがあったし的が小さく高い位置にある頭部は狙いづらい。

 しかし、左腕の接続部なら右腕で斬れる事が証明されている上に位置的に狙いやすい。

 攻撃能力を奪うことができれば実質、一体を破壊したのと同義である。少なくても小柄なゴーレムを狙う際に邪魔をされることはない。

 金属がぶつかり合う音と何かが断たれた音が響き渡った。当然、音の正体は刀弥がゴーレムの腕を断った音だ。

 攻撃の要となる腕を失ったことで大柄なゴーレムは最後の意地とばかり刀弥に向けて体当たりを仕掛けてくるが速度のないその体当たりを刀弥は余裕で躱す。

 そうして彼は大柄なゴーレムから離脱。攻撃能力が残っている小柄なゴーレムへと向けて駆けていった。

 大柄なゴーレムの方にはリアが炎弾の群れを放ちとどめを刺そうとしている。武器を失った大柄なゴーレムに防ぐ術はなくただ体を動かし回避するしか抗う手段は存在しない。

 あちらはこのまま彼女に任せてしまっていいだろうとそんな判断を下す刀弥。と、そんな思考の間に小柄なゴーレムとの距離が詰まってきた。

 小柄なゴーレムは迎撃の構えを見せておりどうやら先程のように片方の短剣で攻撃を防ぎもう片方で反撃を行うつもりのようだ。

 だが、そう何度も同じ手を使わせるつもりなど刀弥にはない。彼は間合いに入る直前に斬波を放つ。

 近距離で放たれた斬波に小柄なゴーレムは回避を選択。右へとステップ一つで回避しようとする。

 けれども、斬波をそれを追い掛けるように方向を変えた。元々、刀弥は相手がその方向へと避けるように斬波の狙いを調整し曲がるように放っていたのだ。回避直後の小柄なゴーレムはすぐに新たな回避には移れない。必然的に防御を選択せざるを得なかった。

 右の短剣で斬波を相殺するゴーレム。ぶつかり合った衝撃で右腕が弾かれ上半身が回る。

 その様子を側面から見つめる刀弥。瞬間、彼は一気に小柄なゴーレムに迫った。

 既に左腕は前方、刀弥から見て左側の位置にある。弾かれた勢いはまだ切れていない。つまり、すぐには刀弥の方へと振り回せず無防備だという事だ。

 その千載一遇の好機を見逃すことなく刀弥は刀を振り下ろす。

 走る刀の刃は小柄なゴーレムの胴体に入り込み、そのまま体を真っ二つ。刃が下から抜け出たところで小柄なゴーレムの体は左右二つに割れたのだった。

 リアの方を見てみると既に終わったらしく、手を振る彼女の向こう側にところどころ黒く焦げた大柄なゴーレムの残骸を見ることができる。

 それを確認して戦闘の緊張を解く刀弥。こうして二人の戦闘は幕を閉じたのであった。


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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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