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無限の世界  作者: 蒼風
八章「王都襲撃」
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八章一話「王都を目指して」(7)

 時間はロアンが砲撃装備のゴーレムと戦っていた辺りに巻き戻る。


 嵐のように飛んできた実弾をリアは己を吹き飛ばすことで回避する。


「っ」


 わかっていても急な加速による負荷に思わず苦悶の表情を浮かべてしまうリア。そんな彼女を追ってガトリングの射線が動き出した。

 迫る射線にリアは防御を選択。眼前に力場の盾を生み出す。

 規模の大きい魔術式で組まれた魔術の盾である。期待通り盾は弾丸の嵐に耐えてみせた。

 そうして防ぎ続ける程、少しばかり。相手のゴーレムが放っていた右腕側のガトリングの射撃を止めた。銃身が熱くなりすぎたのだ。ガトリングが使えなくなる事を恐れ右側を冷却のために休ませ反対の左側のガトリングでリアを狙おうとするゴーレム。

 その合間を狙ってリアが反撃に出た。風の矢群をゴーレムに受けて放ったのだ。

 避けることも考えて一帯にばら撒くように放たられた風の矢。それをゴーレムは左のガトリングで撃ち落としに掛かった。

 精確な挙動で一本また一本と矢を撃ち落としていくゴーレム。だが、どれほど精確であろうとどれほど連射できようとも一度の射撃で落とせるのは一本のみ。無論、ゴーレムはある程度弾を放ったらすぐに次の矢を狙っているし狙っているのも自身に当たると推測されるものだ。効率としては悪くない手法である。

 とはいえ、右のガトリングが使えない以上、迎撃に集中せざるを得ずその間リアへの攻撃はできなくなる。

 その隙を利用してリアは新たな魔術式の構築に入っていた。

 構築したのは炎の砲撃。熱を撒き散らしながら直進していくそれ。

 さすがに砲撃を撃ち落とすことはできないのだろう。ゴーレムはすぐさま横へと飛ぶことで砲撃を回避。直後に左のガトリングを休め右のガトリングで反撃に出ようとした。

 その展開を予期していたリアは急ぎ単発の炎弾を足元に射出。爆発で姿をくらます。

 敵を見失い周囲に警戒を広げるゴーレム。そこへ再び風の矢が襲い掛かってくる。

 ゴーレムは風の矢を迎撃するために右のガトリングを射撃。だが、風の矢は複雑な軌道をとることでガトリングの攻撃を避けてしまう。

 それでも構わずゴーレムは射撃を続ける。矢の性能から軌道は発動時の設定だと踏んだのだ。ならば、撃ち落とせる可能性は十分にある。

 予測不能な乱数軌道で進む矢群。だが、それは避けるというよりも相手にとって当てづらい軌道というだけだ。当然、いつかは当たる事になってしまう。

 その証拠といわんばかりに数を減らし始める風の矢群。そのペースからゴーレムに到達する前に全て撃ち落とされるのは必至である。

 けれども、ゴーレムが迎撃に集中しているおかげでリアへの攻撃は手薄だ。その間にリアは新たな風の矢群を構築し放つ。

 砲撃系が簡単に回避されてしまっているのに対して風の矢群等の手数のタイプは回避しきれないためか迎撃という対応をとってくれる。そのため次の魔術の構築がしやすい。故にリアは数で攻めることにした。とはいえ、相手のゴーレムの性能を考えると単調な行動は対策をとられやすいと考えるべきだろう。

 この行動を時間稼ぎとして次の手――勝負を決めるための手段――を考えなければならない。

 取得している魔術式とこれまで敵の行動パターン。それを闘いながら脳内で組み合わせ並べ替え、時に変えながらシュミレートしていくリア。

 一方、ゴーレムの方も迎撃の精度と速度が徐々に上昇していた。リアの思考パターンを読んでいるのか複雑な軌道をとっているはずの矢群の軌道先へとガトリングを向け放ち始めているのだ。

 最初こそ精度が悪かったがその精度も幾度もリアが手段を繰り返す度に上がっている。精度が上がれば全てを撃ち落とす時間も必然的に短くなる。それはリアの魔術式を構築する時間を削っているのに等しかった。

 もう時間がない。だが、策はまだ浮かばない。その事実に内心焦るリア。そして全ての矢群を撃墜され次の魔術式の構築も間に合わなくなったその時――



 ゴーレムが今まさにリアへと向けようとしてた右ガトリングが右腕ごと切断された。



      ――――――――――――****―――――――――――



時間を少し戻して刀弥の方。

 正面から放たれた突きを大きく弾き体勢が崩れた所に返す刃で横薙ぎに払う刀弥。そうしてゴーレムが下がった所を今度は突きで追撃した。

 この攻撃にゴーレムは右の短剣でその突きを外へと逸らして対応。それからそのまま懐へと入り込み左の短剣で刀弥の左脇を狙ってくる。

 それを刀弥は右へと体をズラして回避。刀を構え直すと再び横薙ぎでゴーレムの体を断ちにいった。

 対してゴーレムは跳躍で刀を飛び越すと左の短剣を投擲。クルクルと回転しながら飛んできたそれを顔を動かすことで避けた刀弥はすぐさま反撃の振り下ろしを放つ。

 甲高い音。刀弥の刀をゴーレムは右の短剣で防御。そこへ投じた短剣がブーメランのように返ってくる。

 音から短剣の接近に気付いた刀弥は安全位置へと退避。そしてゴーレムが戻ってきた短剣を掴むのを眺めながら構えを直し再び接近、ゴーレムに左上から右下への斬撃を見舞った。

 ゴーレムは左の短剣で刀を軌道を逸らして防御。軌道を書き換え勢いを付与する事で刀弥に刀を振れないタイミングを作らせる。

 振り抜く勢いを付与されたことで振り抜きの勢いを止めきれない刀弥。止めきれなかった分だけ体が回り隙の時間が大きくなってしまう。

 そこを狙ったゴーレム。がら空きとなった彼の喉元目掛けて右の短剣を突き込んできた。

 刀はようやく止まったところだ。今から振ろうとしても短剣が喉元を貫くほうが早い。

 ならばと刀弥は膝の力を抜いた。体を支えていた力がなくなった事で膝が曲がり体が下へと沈んでいく。

 頭上をかすめる短剣。だが、それだけだ。刀弥を捕らえるには至っていない。

 膝が甲板を打った。膝を打った痛みが全身に走り一瞬体が強張るが、それを堪えて刀弥は刀を全力で振り抜く。

 低くなっている分、刀の軌道はゴーレムの膝を断つ軌道となっている。さすがに刃の短い短剣ではそこまで届かないだろう。

 これでどうだ。刀を振りながら敵を見据える刀弥。直後、ゴーレムは上へと飛び上がった。

 飛び上がった事でゴーレムの体は刀を縄跳びのように飛び越える形となる。だが、完全に避けきる事まではできなかった。刀弥の刀はゴーレムの右足を斬り飛ばしていたからだ。

 片足を失ったゴーレムは着地をしっかり取れずバランスを崩す。右足を失ったため体が右へと傾いたのだ。その隙を見逃さず刀弥がゴーレムに一気に近づく。

 刀弥の接近に気づいたゴーレムは失った右の足先で己を支えバランスを取ると短剣を構え迎撃の姿勢。刀弥が刀を振ったのに合わせて片方の短剣を振るって攻撃を防ぐと反対の短剣で攻撃を返す。

 これを間合いのギリギリの外に留まってやり過ごす刀弥。そうして反撃の一撃を与えようと刀を構えた時だ。ふと、それが視界に飛び込んできた。

 彼が見たのは風の矢群が尽きかけ追い込まれているリアの姿。大柄なゴーレムの精密なガトリングによって矢群が次々と落とされている。現在の矢の残り数とリアの様子から見て今構築中の魔術は間に合わない。

 故に彼は方向転換。その刃を今戦っているゴーレムではなく今まさにリアに目掛けてガトリングを放とうとしている大柄なゴーレムの腕に向けて振り下ろしたのだった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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