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無限の世界  作者: 蒼風
八章「王都襲撃」
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八章一話「王都を目指して」(5)

 飛空船が壮大な空中戦を行っている間、刀弥は甲板にいた。

 敵飛空船を眺めることに夢中で中に戻ることを失念したいのだ――一応、船内に退避するよう警告する警報と放送は鳴ったのだが――。おかげで振り回され柵にしがみつく羽目になってしまった。

 下手したら落ちてたなとそんな感想を抱きながら急いで彼は船内へと戻ろうとする。

 敵飛空船はバージン達の奮闘のおかげで見事撃墜された。今も上部を燃やしながら自分達の船の傍を通り過ぎようとしている。

 すれ違っていく敵飛空船。そんな飛空船に視線を投げかけた刀弥は……


「ん?」



 ふと、船体下部、側面ハッチが開いていることに気が付いた。



 いつ開いたのか。そんな疑問が頭を過る。

 その時だ。彼の眼前に複数の影が着地したのは……


「!!」


 反射的な動作で右手を刀へと伸ばす。その間にも影の一つが刀弥の接近。直後、武器がぶつかり合う音が響き渡った。

 反応が遅れていたら危なかったことを認識ながら一旦、距離をとる刀弥。彼の眼前にいたのは複数のゴーレムだった。

 数は十体。以外にも多い。その中で刀弥に襲い掛かったのは小柄なゴーレム。右手には短剣を握っておりそれを刀弥に向けて振り放ってきたのだ。刀での防御が間に合わなかったらその短剣で心臓を刺し貫かれていただろう。

 ゴーレム達はその小柄のゴーレムともう一体を残して動き出す。うち一体はたった一度の跳躍で船橋に到達。窓の向こうに向けて持っていた砲を構える。

 いきなりのゴーレム達の出現に船橋にいたメンバーはまだ思考が追いついていない。今も放たれようとしている砲撃をただ呆然と見ているだけ――


「させるか」


 否、一人だけ違う反応を見せた。ロアンだ。

 彼は窓の傍まですぐに駆けつけるとその勢いのままに飛び蹴り。窓を突き破ってゴーレムを蹴りつける。

 蹴りを受けたゴーレムはそのせいで砲塔の向きが変更。砲撃はあらぬ方向へと飛んで行くこととなった。

 砲撃を行ったゴーレムは吹き飛ばされながら体制を立て直し着地。一方のロアンも着地し双方は見合う形となる。

 一方、残ったゴーレムは甲板を走りながら飛空船後方へと向かおうとしていた。そこへレリッサやヴィアン、リア達がドアを蹴破って現れる。


「いかせないわよ!!」


 そうしてレリッサはゴーレムの姿を認めるなり短剣を投げ放った。

 放たれた短剣はゴーレム達によって簡単に防がれてしまうが、元々牽制目的だ。その間に兵達が展開、配置に着く。


「迎撃」


 ヴィアンの紡いだ一言。それで戦闘が開始しされた。その中をリアは潜り抜けて刀弥の元へと向かう。

 現在、刀弥は二体のゴーレムと戦闘中だった。敵は先の短剣を用いた小柄なゴーレムと大きな二門のガトリングを左右の腕に装着させた大柄なゴーレムだ。

 大柄なゴーレムがガトリングで刀弥を動き回らせ動きの早い小柄なゴーレムが背後や側面など死角を突く。そういう戦術で刀弥を攻める二体のゴーレム。それに刀弥は苦戦させられていた。

 どうにかギリギリの所を対処しているが、一人では厳しそうだ。

 故にリアは彼の元へと向かうことにしたのだ。

 兵とゴーレム達の戦場を抜けると、彼女はすぐさま魔術式を構築。大柄のゴーレムへと炎の砲撃を放った。

 この攻撃に気付いたゴーレムはすぐさま右へと跳躍することで回避。そうしてからリアの方へと己の向きを変える。

 一方のリアはこの間に刀弥の元へと接近。刀弥も(つば)競り合いをしていた小柄ゴーレムを押し返すとすぐさま彼女と合流を果たした。


「刀弥」

「リア」


 互いに呼びかけ合う二人。そうしてから同じく合流した二体のゴーレムに視線を戻す、


「どうやら敵の置き土産のようだな」

「元から二段構えだったって訳だね」


 恐らく特攻失敗時の保険のために積まれていたのだろう。提供したのはルード辺だと刀弥は当たりをつける。

 ゴーレム達の目標は十中八九この飛空船の破壊。要するに航行不能にする事で王都への急行を阻止するつもりなのだ。


「絶対に阻止しないとな」

「だね」


 場合によっては空中から真っ逆さまになってもおかしくない状況。加えて損傷によっては遅れが生じる可能性だって有り得る。それはなんとしても避けたいのが刀弥達の本音なのだ。

 しばしの間、睨み合う両者。けれども、その睨み合いも長くは続かない。

 直後、ゴーレム達が動き出した。小柄なゴーレムが飛ぶ様に甲板を駆け、大柄のゴーレムが滑るよう回り込みながらガトリングを放ってくる。

 刀弥は右へリアは左へと飛んでガトリングを躱す。そうして刀弥は小柄のゴーレムと接敵。リアは大柄なゴーレムへと火球の群れを放った。

 襲い来る火球の群れをガトリングで撃ち落としに掛かる大柄のゴーレム。一方、小柄なゴーレムの方は刀弥と一進一退の攻防を繰り広げていた。

 いつの間にやらもう一本左手に握った短剣も用いて果敢な攻めを繰り出す小柄なゴーレム。さすがの刀弥も刀一本では捌き切れない。仕方なく初撃を刀で受け流し続く二撃目を体捌きで避けることで対処する。そうして二連撃が終わった直後に反撃の一撃を見舞う。

 だが、こんな攻撃を簡単に受けてくれる相手ではない。相手の方も避けたり受けたりする事で防ぎすぐさま反撃を放ってくる。

 受けては返し、返しては反撃に転じられ。そんな攻防が続くがやはりというべきか手数の多い小柄ゴーレムのほうが主導権を握る時間は多い。

 なにせ、相手は両手で武器で持っているため間隔の短い攻撃が可能なのだ。おまけにそれ故に攻防と役割を分けることもできる。

 回避からの耐えまない攻撃と防御からの即座の反撃。その二つの選択肢を持って小柄なゴーレムは刀弥に攻めかかってくる。

 対する刀弥にも有利な点がないわけではない。一つは相手が短剣故にリーチでは刀弥のほうが勝っているという点だ。

 刃が短く軽い故に短剣は取り回しやすく片手でも容易に振るえるという利点があるが、しかし、刃が短いという事はその分だけ間合いが短くなるという事だ。

 一般的な剣もそうだが刀弥の刀と比べてもそのリーチの差は一目瞭然だ。無論、距離にすれば一歩二歩で届く距離ではある。大した差には見えないかもしれない。

 だが、戦いにおいてはその程度の距離は互いに調整することが可能な距離だ。と、なれば距離を調整することで相手が届かず自分だけが届くという状況に持って行くこともできる。

 実際、刀弥もその利点を行使している。短剣の間合いのギリギリ外へと逃れ自身はそこから刀の反撃を放つ。間合いが長いからこそできる戦い方だ。

 小柄なゴーレムは刀を一方の短剣で防ぐが間合いの外故に反撃ができない。反撃をしようと思うならばまず距離を縮めるという行程が必要になるのだ。

 このようにして刀弥は小柄なゴーレムの連撃に対抗していた。

 一方、リアの方はというとこちらは派手な戦闘となっていた。基本的には大柄なゴーレムがばら撒くガトリングに対しリアが回避や防御で対処。そうして装填や砲身の冷却のタイミングを狙って砲撃や一斉射撃等の反撃を放つという形だ。

 時間的に見れば大柄なゴーレムが主導権を握っている時間が多いが、要所での反撃ではリアが惜しいところまで押し込んでいる。そういう意味では互角の戦いをしているといっていいだろう。

 そして、船橋に砲撃を放とうとしたゴーレムと対峙しているロアンの方だが、こちらは少し特殊な状況にへと陥っていた。ゴーレムの砲撃をロアンが迎撃するという構図が延々と繰り返されているからだ。

 ゴーレムが構え放った砲撃をロアンは引いて溜めた拳で破砕する。それが終わると反対の拳をためそれを新たな砲撃の迎撃にあてるのだ。

 無論、理由はある。ロアンの背後には船橋が存在するのだ。これでは避けた瞬間、砲撃が船橋に当たってしまう。

 もちろん、司令室直撃ではないが真下を破壊されたとあっては構造的に上部にある司令室だって危険だ。そうなれば放棄するしかない。

 だが、ロアンに防御手段はなく、攻撃に対抗できるとしたら後は迎撃のみ。そして砲撃を破砕するほどの威力となるとある程度の溜めが必要となる。

 それ故にこのような構図が繰り返されることとなっているのだ。現在は、砲撃の間隔と拳の溜めの間隔が合致しているおかげで自身も船橋も無事だが、相手とて愚鈍な人形ではないはず。何かしらの手段を思考しているはずだ。

 故にロアンはそれまでにこの状況を脱する必要がある。そういう状況がロアン側では展開されていた。

 そして最後、残ったゴーレム達とヴィアン、レリッサが率いる部隊との戦闘は船後方で展開されていた。

 ゴーレム達の狙いは船尾下部にある機関の破壊。そこを破壊されてしまうと飛空船は空を飛ぶための力を失い落下してしまう。

 もちろん、それを避けるための副機関は存在し実際にはそこをやられただけですぐ墜落という事態にならないが、だからといって王都まで飛行を続けられる状態ではないのも確かだ。当然、王都へと向かうためには近隣の基地へと寄って修理を受ける必要が出てくるだろう。当然、到着の時間が大幅に遅れるのは避けられない。

 ゴーレム達は火器を持っているし当然、最悪の場合自爆の特攻も考えられる。彼等を機関へと近づかせて良いことは一つもない。

 それ故に彼女達は一列となって彼等の進行を阻んでいた。現在、レリッサ達の装備は範囲が広く防御性の高い防御系の魔具と片手でも扱える風弾系の銃型魔具。攻撃能力こそ低いが防御能力の高い装備編成のおかげで通常ならば列にそうそう穴が空くことはない。

 だが、相手側のゴーレムの装備が問題だ。ガトリング装備の大柄なゴーレムが三体、砲撃装備が一体、短剣装備の小柄な機動型ゴーレムが三体という編成。相手が重火器となるとさすがに防御能力の高い防御系魔具でも不安は残る。

 その上、残る三体は機動力重視だ。火気で抑えつけ機動力で側面から襲う。あるいはそのまま機関へと向かわせるという戦術も可能だ。

 もちろん、レリッサ達はそんな事を許すはずもない。

 小柄なゴーレムが動き出した瞬間、すぐに射撃を放ち迎撃。連携することで相手の動きを誘導し見事二体のゴーレムの破壊に成功した。

 こうして敵飛空船の撃破から少しばかり。事態は新たな展開へと進展したのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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