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無限の世界  作者: 蒼風
七章「明かされる全容」
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七章三話「潜入」(7)

「順調なようだな」

「無論ですとも」


 大きなディスプレイに映される第二演習場の映像。それを眺めながら最高司令とアルドルは会話をしていた。


「スライムは元から核を破壊されない限り再生能力が高いことが特徴ですが、多く場合小型であることと力が小さく知能も低いために人に簡単に狩られてしまう弱い存在でした。けれども、その再生能力は兵器として見た場合、なかなか魅力的です。そのため、かなり昔からスライムの強化は多くの組織で試みられてきました」


 そう言ってアルドルは映像の方へと意識を向ける。

 映像ではスライムが大気の砲撃を今まさに放とうという所だった。その攻撃を赤髪少女が竜巻の壁で防ぐ。


「けれども、遺伝子操作、薬、機械や魔具等様々な方法が試されましたがこれまで成功した例はございませんでした」

「だが、君は成功させた。方法は確か遺伝子操作だったかね?」


 その言葉にアルドルは頷きを返す。


「はい。正確には遺伝子操作と薬の投与です。遺伝子操作の方は強化するだけなら随分前から発見されていたのですが、代わりというべきか致命的なまでに短命となってしまうために使い捨てとして運用することさえできませんでした。その問題を解決させたのがこの薬です」


 その言葉と同時に戦闘を映していたディスプレイの上に新たな小さなディスプレイが展開された。

 新たなディスプレイに映されているのは薬の映像とその効能の数値と説明文。


「この薬は先の遺伝子操作の欠点を克服するために私が研究開発したものです。大体一度の投薬で一週間程度持たせる事ができます」

「それだけ持たせられるなら運用もいろいろと考えることができるな」


 再生能力を上手く活かして運用させることができれば簡単には落とされることはないだろう。少なくても例えやられたとしても相手に多大な消耗を強いたり囮として十分な役割を果たした後になるはずだ。

 最も今回は相手に対して相性が良い。刀や短剣ではスライムの核まで攻撃が届くことはまずないだろう。

 唯一、魔術の使い手が届く可能性のある攻撃を持っているがそれもスライムの能力でどうにかなっている。

 いける。これならターゲットを倒すのも時間の問題だ。そう判断するアルドル。

 と、その時、ターゲットのうち少年がスライムへと向けて走りだした。


「さてさて、今度はどうするつもりかね」


 楽しげな表情でディスプレイを眺めるアルドル。この時、彼はスライムの勝利を微塵も疑っていなかった。


  

      ――――――――――――****―――――――――――



 刀弥が初撃に選んだのは斬波だった。それを幾つも曲線軌道で放つ。

 放たれた斬波の群れがスライムの端々を削り取っていくが、当然その程度ではスライムのダメージとはならない。

 だが、それでも攻撃をしてきた刀弥に対して危険意識が働いたのかスライムが攻撃を飛ばしてきた。

 飛んできた触手を斬波で撃ち落とし刀弥はさらに距離を詰める。

 己に課した役割は時間稼ぎと囮。だが、だからといって倒すことを諦めたわけではない。スライムの気を引き続ける意味でも彼は倒すための攻撃を続ける。

 刀の峰側を使っての斬波。しかし、これはスライムの表面辺りで受け止められ散ってしまう。

 そこへ反撃の突進。迫り来る軟体の巨体に刀弥は左へと飛んで回避すると振り返りざまに突きの斬波を放った。

 今度の攻撃は体内に入り込んだ。けれども、斬撃の時と同様に核に届く前に威力を失ってしまう。

それを確認して刀弥はバックステップ。直後、彼のいた場所をスライムの触手が襲い掛かった。

 触手を斬りつけそのまま接近する刀弥。そうして視界いっぱいにスライムの体が見えるまでスライムに近づくと突きを放ち直接体内から突きの斬波を放つ。

 今までより目に見えて勢い良くす進む斬波。だが、それでも中央にある核まで辿り着かない。大体四分の三辺りの距離で消滅してしまう。

 そんな傍にいる刀弥にスライムは触手を放とうとするが、既に反撃を予期していた刀弥は至近距離から離脱していた。それでも触手は放たれたが既に幾度も見ている刀弥はそれらを難なく斬り落とす。

 そうして一時の安全を確保した後、すぐさま彼はあるものの場所を確認し、そして駆け出した。

 当然、スライムは近づかせまいと触手を伸ばす。それをサイドステップと旋回で回り込むように回避すると彼は斬波を足場に上へと駆け上がった。

 上をとった刀弥はスライムの直上すぐ傍より突きの斬波を放つ。

 放たれた突きの斬波。距離的には前回の二の舞いとなる距離だが、そもそも今回の斬波の狙いは核ではない。いや、最終的に狙うのは核だがそれに至るために彼はあるものを狙ったのだ。

 彼が狙ったのはスライムの体内に留まっている短剣。それに突きの斬波ぶつかり短剣が押し出される。

 彼が考えたのは既に入っている短剣を押しての核攻撃。だが、これも届くに至らなかった。


「くそっ」


 そう漏らしつつ斬波の足場を蹴ってその場から退避。直後にはスライムの反撃が通り過ぎる。

 そうやってスライムを飛び超えた刀弥。すると、今度はスライムが飛び上がり刀弥に向けてのしかかりを見舞ってくる。と、その時だ。


「準備できたわ。すぐに始めるわよ」


 背後よりそんな掛け声が聞こえてきた。その声を聞きながら刀弥は右へと飛んでのしかかりを回避する。

 のしかかりで一時動きが止まるスライム。そんなスライムにレリッサが接近していった。彼女の左手にはスペーサーよりとりだしたあるものが握られている。

 至近距離まで接近した彼女はその勢いのままに右手に握っていたそれをスライムの体内へと捻り込むとその直後離脱。


 次の瞬間、それがスライムの体内で大爆発を起こした。


 彼女がスライムの中に捻り込んだもの。それは爆破を起こす魔具だった。形状こそ以前ファルセンという世界で出会ったアレンが用いていたものと違うが効果の方はあれとほぼ同じだ。

 内部から四方へと広がる力を受けて体が散り散りとなるスライム。けれども、核を傷つけるまでには至らなかったようだ。体の半数ほどを失い小さくなりながらもスライムは生命活動を維持していた。

 だが、そんなスライムに向かって既に追撃の攻撃が放たれている。リアの風の砲撃だ。

 爆破の瞬間、間髪入れず撃ち込まれた風の砲撃は小さくなったスライムを蹴散らそうと轟音を立てて猛進する。

 スライムはまだ動けない。爆破のショックからまだ立ち直っておらず本能的に体の回収の次の行動にしようとしていたスライムはまだ避けきれる体勢になってなかったのだ。

 当たる。そう思われた攻撃。だが、ここでスライムは驚くべき行動にでた。

 なんと体内にある核を体外へと射出したのだ。射出先にあるのはまだ比較的大きめな自身の体の一部。どうやらその一部を動かすための体にするつもりらしい。

 投射の先にある体は風の砲撃の範囲外。このままでは再び再生されてしまうだろう。


「させるか!!」


 瞬間、刀弥は駆け出していた。一歩目から全力で床を蹴りつける。

 勢い良く飛び出した体を次の一歩でバランスをとり再び疾走。そうしてから斬波の足場を使って駆け上がっていく。

 横からは風の砲撃が生み出した衝撃波を叩きつけてくるが構わない。傾きかける体を強引に直しながら刀弥は急ぐ。

 体から飛び出した核の横を風の砲撃がかすめた。最初の体はそれで吹き散らされたが核の方は完全に無事だ。放物線を描いて新たな体の元へと向かう。

 刀弥と核、核と新たな体までの距離は核と体の方が短いが、再生に一動作必要な事を考えるとギリギリ間に合うかどうかといったところ。けれども、この距離まで近づいたならばこれ以上当てるために接近する必要はない。

 刀弥は刀を構える。狙うべき核を見据えてその軌道をイメージすると次の攻撃の軌道を思い浮かべる。

 後はその軌道を再現するために振り抜く方向や力加減を調整するだけだ。

 左上から右下への一閃。その形で斬撃の斬波が放たれた。

 斬波は刀弥の思い描いた通りの軌道を飛翔。それは核の方も同様で結果、斬波は核を真っ二つに斬り裂くことに成功したのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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