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無限の世界  作者: 蒼風
七章「明かされる全容」
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七章二話「探索」(6)

 レリッサに先導され監視の目を潜り時に対処しながら比較的安全な一帯へと移動した刀弥達。そこは茂みに隠された小さな池のある場所だった。

 池の中には魚の姿はなかったが、水は澄んでおり飲水として使えそうな感じではある。

 周囲を囲う茂みのせいで視界は悪いがそれは逆に言えば相手側も視界で見つけるのが困難という事だ。隠れて休むのならそちらの方が都合がいい。


「それじゃあ、ここで一休みしましょうか。見張りは二人で休むのは一人」


 数の配分が逆でないのは見張りに万が一があってもいいように備えてのためだろう。

この配分なら仮に片方が――疲れで眠ってしまっていたり襲われ無力化されたりといった――起こせない状況であってももう片方が起こすことができる。


「って事でまずは私が休むわね」

「ああ」

「どうぞ~」


 レリッサの主張をあっさり承諾する二人。なにせ、今回一番働いていたのはレリッサで間違いないからだ。

 監視装置への工作は刀弥もリアもその経験がない以上、唯一経験を持っているレリッサが行うしかない。当然、その負担は彼女に集中する事になってしまう。

 工作はミスが許されない上、かなりの集中力が必要になってくる。それはつまり精神の多大な消耗を意味している。それ故に彼等の中でレリッサが一番精神的に疲れていた。


「それじゃあ、おやすみ~」


 そう言ってスペーサーからローブ三着と感知センサーを取り出すとそローブを羽織って近くの木に背を預けるレリッサ。センサーはつまり、そっちで設置しておいてくれという事だろう。

 早くも寝息をたてはじめるレリッサに刀弥達は苦笑。そうしてから二人はセンサーの設置にとりかかった。

 センサーは実際に設置する機器と情報を受け取る端末で構成されている。

 今回、用意された機器は五機。それを刀弥達が腰を降ろす一帯の周囲に満遍なく配置する。

 それが終わると二人は中央に戻り周囲への警戒を始めたのだった。


「……静かだね」

「まあ、他に生物がいないからな」


 あるとすれば風で揺れる木々の音くらいか。

 時間は既に空が朱色に染まる時間帯。気がつけば結構な時間が経っている。

 監視装置に気を配っていて時間の経過など全く気にしていなかったなとそんな事を考えていた刀弥。

 その時だ。刀弥の腹の虫が鳴った。

 続いて響く同じ音。隣を見るとリアが苦笑いを浮かべて刀弥の方を見ていた。それでようやく二人は今まで何も口にしていない事を思い出す。


「……………………とりあえず食うか」

「そう……だね」


 腹の音を聞かれた事が恥ずかしくて顔を赤くしてしまう両者。すぐさまスペーサーから食事を取り出す。

 取り出したのは片手で食べられる軽食。こんなところで調理など行う訳にはいかない。

手軽かつ食べやすい食事であった。

 それらを口に含みながら二人は周囲を見渡す。 

 腰を降ろしているため視界は茂みより上の部分しか見えないが、それでも人の行き来くらいなら確かめることができるだろう。

 今のところ何かが通り過ぎている様子はなく監視装置も異常を報告していない。

 それを確かめると刀弥は空を仰いだ。

 日が沈んだのだろう。僅かに赤を残すのみとなった夜空にはいくつもの星が満点に広がりその輝きを地上へと届けていた。

 森は相変わらず不気味な静寂を漂わせていたが、星明かりのおかげでそれも行く文化和らいでいる。


「本当に静かだな」


 ポツリと漏らしたそんな言葉。その声さえも遠くに届いてしまうのではないか。そんな錯覚を得るくらい今森の中は静かだ。


「……だね」


 リアが声を抑えて返事をする。発音ははっきりしているが抑えられた短い返事。その返事に刀弥はリアの方へと視線を向けた。


「とりあえず……ここまでは来たんだな」

「気が早いよ。まだここにルードとドラインがいるかわからないのに……」

「そうだった」


 うっかりしていたと刀弥は己を叱咤する。

 ここに拠点があったとしてもそこにルード達がいるかはまだ未知数なのだ。


「まあ、でも……こうなったら後はいることを祈るしかできる事なんてないんだけど」


 そんな彼の内心をフォローするかのようにリアが言葉を続けてきた。


「リアの世界の場合、祈りはどうやるんだ?」

「えっとね。こう膝を付いて……腕は自分の体を包むように抱いて、それから一回お辞儀するの」


 そう言って実際にやってみせるリア。目を瞑り両腕で自身の体をギュッと抱くその姿は女性の色香を醸し出している。スタイルがいいのもあるのだろう。腕に抱かれたことによって胸元が引き締まりそれが強調される。

 その魅惑に自然と視線が引き寄せられてしまう刀弥。けれども、なんとか意識を取り戻すことに成功した。急ぎ彼は顔を逸しそれから視界を逃す。

 顔が熱い。恐らく他の誰かが見れば刀弥の顔が赤くなっていると気付くだろう。

 リアには気が付かれていないか。ふと、それが気になって彼女の方へと視線を戻すことにした刀弥。

 すると、そこには不審げな視線を森の向こうへと送るリアの姿があった。


「どうしたんだ?」


 真剣な空気を感じ取って意識を切り替える。状況から察するにどうやら彼女は何かを見つけたらしい。そしてそれは当たりだった。


「ねえ、刀弥……あれって……」


 リアが視線の先を指差し何かを伝えようとしてきたからだ。

 腰の刀を意識しながら刀弥はリアが何を見ているのか確かめようとする。

 彼女の視線の先に見えたもの。それは明かりだった。二つの動く明かりが森の中を横切っていっているのだ。


「……乗り物のライトか?」


 明かりの大きさや移動速度からそう推測する刀弥。そうしてから彼は周囲の様子を伺い巡回型や人影がいない事を確かめるとリアにここを任せるというジェスチャーを送って明かりの方へと向かうことにした。

 茂みよりも低く身を屈めて慎重に進む刀弥。既に空は暗くなっているのは僥倖だった。周囲に監視装置らしいものは見当たらないが生き物の存在がいない分、動く影や物音一つでも警戒される可能性は高い。暗闇はそんな中でも影を見つけにくくしてくれるからだ。

 ゆっくりとだが確実に進んでいく。既に見つけた明かりは遠くへと離れてしまっているが、それがあったおおよその距離は掴めていた。

 そうして刀弥はその距離へと辿り着く。木陰からそっとその場所を伺ってみる刀弥。するとそこには大きな道があった。

 舗装はされていないが道幅は広く木々が道へと入り込んでいる様子もない。どうやら定期的に手入れのされている道らしい。

 道の先を見据える刀弥。レリッサに見せてもらった地図を思い出してみると丁度、この道の先に施設と思わしきものがあったはずだ。

 丁度いい道標を見つけたと内心で喜ぶ刀弥。っと、道の先から明かりが近づいてくるのが見えた。

 明かりの大きさは先程よりもかなり小さく一つのみ。よく見ると明かりの向こうに縦長の細長い影が見える。どうやら乗り物に乗った巡回の人間のようだ。

 木陰に隠れていた刀弥は当然見つからない。そのまま巡回の人間は刀弥の隠れいた木を通り過ぎていった。

 この様子では道は人間が見回りをしているようだ。人間相手では工作は難しい。沿って行くなら少し道から距離を離したほうが良さそうだ。

 自分達が隠れている茂みの方を見てみる。特におかしなものが見えるという事はない。これならおとなしくしている分には大丈夫だろう。

 そうしてから彼は休んだ後のことについて考えてみることにした。

 当面は朝まで休憩を続け精神、体力を回復。その間にレリッサ達に道の報告をする事になるだろう。後は休憩が終わり次第道沿いに出発。その後施設を見つけるという流れになるだろう。

 何にしても今は体と精神を休める時間帯だ。詳細は出発前に詰めればいい。そう判断し踵を返す刀弥。

 そうして彼は行きと同じくゆっくりと着実にリア達の待つ茂みまで戻っていったのだった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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