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無限の世界  作者: 蒼風
七章「明かされる全容」
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七章二話「探索」(5)

 翌日、刀弥とリアはレリッサと共に街の外、森へと向かった。無論、ヴィアンから荷物を受けてることも忘れてはいない。

 一体、どうやって用意したのか、合流したヴィアンはレリッサが注文した荷物を全て欠けることなく揃えていた。

 あの話からまだ半日も経っていないにも関わらずこれだけのものが揃う。

 一体、どんな手段を使ったのか、驚きと呆れ、興味を覚える刀弥だったが今意識を向けるべきは彼女のほうではない。そのまま荷物を受け取ったレリッサに導かれその場を後にしたのだった。


 森はセブロンからそれほど離れていない場所にあった。方角は最初に刀弥達が入った入口とは反対方向。そのせいで刀弥達は来る時に森の存在に気づけなかったのだ。

 森の中は静寂が全てを支配する世界だった。

 人はもちろんだが虫や鳥、獣といったものの気配すらない。

 そんな森の様相に刀弥は驚きと共に空虚な感情を得ていた。

 命のない世界とは活動のない世界。その静寂が心を安らがせることはなく、逆に人の心の中にある不安と恐怖を増大させていく。心なしか木々が作る影が深く見える。


 命のない森とはこうまで冷たく静かなものなのか。森の中を歩きながらそんな感想を抱く刀弥。

 と、唐突にレリッサ手を上げ止まれの合図を送ってきた。

何だと思いながら身構える刀弥達。そうしてそっとレリッサの傍まで近づくと彼女が見ているものを見る。

 彼女の視線の先にあるのは一見するとただの森の光景。けれども、よく見るとある木の小さな穴の中から微かに光るものがあるのを刀弥は見つけた。


「監視装置ね。確かあのタイプは映像情報で侵入者の有無を確認するタイプだったはず」

「もしかして当たり?」


 レリッサのその言葉に反応するリア。しかし、レリッサは首を横に振って否定する。


「自分の領地に黙って入ろうとする不躾な連中がいないかを見張っってるだけかもしれないわ」

「……それでどうするんですか?」


 ここで時間をとられている訳にはいかない。そのため、刀弥は二人の会話に割り込み行動方針を尋ねることにした。

 彼の問いにレリッサは装置の周囲を見回す。


「他に装置はなさそうね……そうね。避けましょう。わざわざ見つけた端から処置する必要はないんだし」


 処置とは恐らく監視装置に見つからないための工作を施す事を指しているのだろう。

 確かに見つけた端からそんな事をしていたら時間が掛かってしまう。回り道できるならその方が簡単だ。

 彼女の提案に刀弥とリアは頷く。レリッサはそれを確認するとすぐさま歩き出し二人を監視装置の死角へと先導するのだった。


 その後も様々な装置を見つける事になる三人。時には工作を施し、時には死角となる道を通りって三人は奥地を目指す。

 奥に進めば進むほど増えていく監視装置。その度に相手の重要なところへ侵入しているのだと確信する。


「随分と警戒が厚くなってきたわね。巡回のできる装置まででてきたし」


 草むらに隠れながらその向こうを見るレリッサ。彼女達の瞳の先にあるのは浮遊して移動する機械のような物体だ。

 形状は円柱状の物体の下部にリング様なものが付いたような形状で、円柱状のほうは常にグルグルと回っている状態だ。

 数は見えるだけでも五機。それ以外にも遠くのほうで似たような音が聞こえるのでもっといるのだろう。

 無論、これらだけでなく映像情報を取得するタイプや通過に反応するタイプ、はては熱を探すタイプまでそこら中に仕掛けれている。


「一体、これだけの数。どうやって対処するつもりなんだ」


 明らかに多すぎる監視装置。どう考えても全てに処置を施していては時間がかかってしまう。時間がかかれば当然巡回型に見つかる可能性もまた高くなる。


「さすがに巡回型は手が出せないわね。何かあれば怪しまれるだろうし」


 当然だ。巡回が止まったりすれば監視している人員が不審がるだろう。場合によっては新たな巡回型が来る可能性だってあるし、最悪即警報だ。


「じゃあ、どうするんだ? …………まさか、強行突破とか言わないよな」


 最悪の事態であればそれで打開して脱出するのも悪くない。だが、刀弥達はルード達の拠点を探しにこの森へと侵入したのだ。有無の確認もできないまま去っては潜入した意味がない。

 そんな刀弥の質問にレリッサは笑みを浮かべて応えた。


「そこでこれの出番よ」


 そう言って彼女が取り出したのは端末とボーガン。ボーガンの矢は小型なれど機械的な姿をしており、なんらかの仕掛けが施された特殊な矢であることはすぐに理解できた。


「……それは?」


 お決まりとも言える流れをあえて踏んだ刀弥。当然、レリッサはどこか自慢げな様子で説明を始める。


「この矢は魔具や機械に突き刺さる事で魔具や機械のシステムに潜入して魔具や機械を乗っ取る事ができる矢なの。操作はこの端末でできるわ。とりあえずこれで近くにいる巡回型を黙らせるわ」


 聞いている分には恐ろしく便利な道具である。だが、便利であればあるほど怪しく思えてしまうのは人の性。刀弥もまたレリッサの説明を信用しきれずにいた。


「本当に大丈夫なのか? 向こうだって対策とかやってそうな気がするけど……」

「失礼ね。これでも軍の最新式よ」


 その言葉に刀弥は首をひねる。確かその武器は情報屋のヴィアンが用意したものだったはずだ。レリッサの説明だとラクロマの軍の装備のようだが、軍の装備が一般に流通するものなのだろうか。


「なあ、レリッサ。ラクロマだと軍で採用されている装備も一般に出回っているのか?」

「はい? そんなわけないじゃない」


 あっさりと否定するレリッサに困惑する刀弥。そうなるとますます軍の最新式の装備をヴィアンが用意出来た理由がわからない。


「じゃあ、ヴィアンって人はどうやってそれを用意したんだ?」

「はい?」


 一瞬、レリッサは『何故そんな事を聞くんだ?』というような表情を浮かべたが、すぐに何かに気づき唐突に慌て出す。


「あ、あははは……そりゃあ、情報屋なんだから蛇の道って奴でしょ」

「なんで慌て出すんだ? 後、それでいいのか軍人」


 思わず半目になってしまう刀弥。軍の採用装備を横流しされて黙っているというのは正直刀弥の感覚としては『黙っているというのはどうなんだ』という思いがあったのだ。

 無論、あの街で騒ぐのはまずいしここで捕まえたところでどうしようもないのも確かだが、せめて一言何か苦言くらい言えばよかったのではないのか。そんな感想が彼の中にはある。


「いいのいいの!! ほら、これから大きな事をするんだから小さな事なんて気にしてられないんだし。ってことでこの話はおしまい」


 レリッサはというとどういう訳か強引に話を終わらせようとしている。

 そんな慌てるほどのことを言ったかと刀弥は自問してみるが、どう考えてもそれ程の内容だとは思えない。

 責められて早く話を終わらせたいと思うのはおかしなことではないが、いくらなんでも慌てすぎだ。


「……ない危な…危う…隣街で待……ている………から……ンに持……きてもら……る……なんて……ないからね」


 と、レリッサが何やら独り言をこぼした。声が小さすぎて何を言っているのかわからなかったがほっとした表情から先程のやり取りに関することだろうと刀弥は当たりをつける。


「二人共、そんな事より早くあの監視装置をどうにかしようよ」


 が、ここでリアが口を挟んできた。

 確かに彼女の言う通りだ。相手の敷地内で潜んでいる以上、無駄な時間を使う訳にはいかない。

 問い詰めは後にしよう。そう考えて思考を切り替える刀弥。そうしてから彼はリアに頷きを返しレリッサに開始を促したのだった。

 彼の促しにレリッサは応答を返すとボウガンを構える。

 揺れることなく狙うべき標的へと精確に矢尻を向けるレリッサ。その集中力と技量に刀弥は素直に感心する。

 そうしてボウガンの矢が放たれた。

 風切音が一瞬響き、次の瞬間には矢が巡回型の体に突き刺さる。


「よし」


 そう漏らし急ぎてレリッサは端末を操作。まもなくして彼女はふうと息を吐いた。


「これでよし。もう前に出ても私達の姿は映らないわよ」


 そう言って堂々と巡回型の前に立つレリッサ。

 確かにレリッサが前に立っても警報といったものの反応がない。どうやら本当に成功したようだ。


「ついでに地図と監視装置の配置図も手に入れたわ……で、これを見てよ」


 言われ端末を覗き込むとそこには地図が写されていた。地図には森の奥、巡回型や監視装置が密集しているその中心に施設と思しき形状の絵が書かれていた。


「とりあえず目標地点はここね。この距離だと一晩超えそうね。どこか安全な場所で休みましょうか」


 そうして端末を操作して安全そうな場所を探し始めるレリッサ。

 ともかく刀弥達は目指すべき目標地点を定める事ができたのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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