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無限の世界  作者: 蒼風
七章「明かされる全容」
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七章二話「探索」(4)

「それで、これからどうするんだ?」

 全ゴーレムが完全に機能停止したのを確認してから尋ねる刀弥。

 当たり前だが求める情報が保存されているはずのないゴーレムから拠点の情報など得られるわけがない。と、なると今後の方針について見直す必要が生じてくる。


「う~ん。こうなると自力で絞り込んで探すぐらいしか手はないかしら」


 そんな彼の問いに返事とも言えない曖昧な言葉を返すレリッサ。どうやら彼女も今後の方針については悩んでいるらしい。


「せめて、もう少し確信できる情報が手元にあればいいんだけど……」


 そうしてレリッサは頭に手を置き何かを考え始めた。

 一人思考の世界に入ったレリッサに刀弥とリアは顔を見合わせる。


「何か方法があるのかな?」

「けど、自力で探すにしたって街のどこをどうやって探すつもりなんだ?」


 真っ先に刀弥の頭に浮かんだのはルブゼラの屋敷への潜入。が、その案は刀弥自身は先にも考えた通りリスクが高いと思っている。後はルブゼラが関わっている施設だが、そちらへの戦友もリスクは同様だ。

 けれども、見つけようとするなら直接その目で確かめるしかなく施設の奥にいる場合中に入るしか手はない。


「――虎穴に入らずんば虎児を得ず……か」


 どうやら自分は虎穴に入るかどうか、決断しなければならないらしい。

 溜息を吐き覚悟を決めるべきかやめておくべきかと考えてみる刀弥。


「え? なにそれ?」


 一方、リアは刀弥の呟いた言葉が気になったのか。その意味について彼に尋ねるのだった。


 と――


「――そうね。確認してみましょうか」


 レリッサがそんな言葉を呟きながら思考の世界から帰ってくる。

 そんな彼女に声を掛けようとする刀弥達。が、彼女は二人の存在を忘れているのか何も言わずそのままその場を後にしようとしている。


「って、おい!?」

「ちょっと、どこいくの~!?」


 驚いたのは刀弥たちだ。慌てて彼等はレリッサの後を追いかける。


「レリッサさん。どこにいくんですか?」

「酒場。ちょっと確認したいがことがあるのよ」


 追いついたリアの問いに対する返答に顔を見合わせる二人。が、何を確認したいのかわかるはずもない。とりあえず二人はそのまま彼女の後を追いかけることにしたのであった。

 どうやら彼女の言う酒場は一般人が暮らすエリアにあるようで、ここからだとかなりの距離がある。

 その間に再び襲撃が来る可能性もあって刀弥は身構えていたのだが、特に何かが襲い掛かってくる事もなく時間は掛かったものの一同は無事酒場へと辿り着いた。

 肩透かしを食らって刀弥はなんとも言えない微妙な表情を浮かべてしまうが、本来はその方が刀弥達にとっては都合がいい。なんとか気を取り直す。

 レリッサはというと酒場の扉を開け迷いない足取りである場所へと向かっているところだ。当然、刀弥達もその後に付いて行く。

 そうして彼女が辿り着いたのは彼女と同じくらいの年頃の女性が座る席だった。

 セミロングの青色の髪に黒い瞳。服装は茶色の大きなローブを纏っているせいでわからないが、僅かに開けた中央部から白いシャツと水色のスカートが見える。

 女性はカップを口に運んで何かを飲んでいる最中だった。湯気がでているところを見ると熱い飲み物らしい。そのまま彼女はゆっくりと飲み物を呑みほしていく。

 そんな彼女の席にレリッサが相席の許可も得ずに座った。スタスタと席に辿り着くと遠慮することもなく彼女の向かい側に座ってしまったのだ。

 レリッサの行動に唖然とする刀弥達。と――


「座る前に何か言ったら? 連れが困ってるじゃない」


 そんなレリッサに向かって先に座っていた女性がたしなめてきた。

 どうやら知り合いだったらしい。彼女の言葉に刀弥は全くだと内心で頷いてしまう。


「いいじゃない。ヴィアン。知らない仲じゃないんだから」


 そんな注意をどこ吹く風とばかりに応じるレリッサ。

 この反応にヴィアンと呼ばれた女性は思わずといった様子で嘆息した。


「あなたが知っていてもそちらの二人は知らないでしょ? 少なくても事前に知り合いだということぐらい教えておいたらどうなのよ」

「あ~。あははは……」


 どうやらそこまで考えてなかったらしい。ヴィアンの言葉にレリッサは目を逸らし乾いた笑い声を漏らした。


「全く……」

「まあまあ……」


 怒るヴィアンとそれを宥めようとするレリッサ。そうして少し経ちヴィアンの機嫌が直った後にレリッサは二人にヴィアンを紹介する。


「ヴィアン・リリンス。まあ、ちょっとした情報屋だと考えといて」

「よろしく。こんな奴だけど見捨てないであげてね」


 呆れの混じったヴィアンの言葉にレリッサの瞳が細くなる。


「ちょっと、どういう意味よ」

「そういう意味よ」


 内容は嫌味の応酬だが声に皮肉の色は感じられない。そこから刀弥は二人が長い付き合いである事を感じ取った。


「……それでどういう用件でここに来たんだ」


 このままでは応酬がしばらく続く。そう考えた刀弥は時間を短縮するために自ら用件を切り出してみる事にした。


「っと、そうだった。こんな事をしている場合じゃないわ」


 すると、効果はあったようでレリッサがすぐさま我に返る。


「ねえ、ヴィアン。最近付近の街で連中を見たって連絡来てない?」

「ん~? …………そんな報告一度も来てないわ」


 レリッサの問いにヴィアンは一端を思い出そうとするすぐさをするも思い出せなかったのか、スペーサーから何やら用紙を取り出すとそれを一通り眺めた後にそんな返答を返してきた。

 連中というのはルード達の事だろう。どうやらレリッサに頼まれその手の情報の収集と管理を担当しているようだ。


「間違いない?」

「ええ、間違いないわ。言っとくけど道の方も同様よ」


 その答えに少し考えこむレリッサ。それに習って刀弥もまた少し思考することにした。


 付近の街や道でルード達を見ていないという事はルード達がまだこの街近辺にいる可能性が高いという事だ。

 しかし、問題はその居場所を探す手段を潰えている事である。


「構成員の疑いのある連中の動きの方は?」

「駄目。必ず街内で見失う」


 という事はやはり拠点は街中にある事だろうか。

 それについて候補をいくらか推測してみる刀弥。が、レリッサの判断は違ったものだった。


「街内であえて見失わせるってことは街中には拠点はないのかもしれないわね」

「……街中にあると疑わせるためのミスリードって事ね。と、なると街の外にあって連中にとって都合のいい場所……」


 場所の候補を算出するために思考しているのだろう。ヴィアンの表情が真剣なものへと変わった。


「…………やっぱり、森の中からしら」

「かしらね」


 レリッサも同じような判断だったらしい。彼女の意見に大きく首を縦に振って応じた。


「あそこならルブゼラの意のままだし範囲も広いしね。あの中に拠点を隠したら見つけるのは困難だと思うわ」

「見つけられたとしてもどうとでもなるしね」

「そうね」


 その指摘にレリッサは苦笑で答える。そうしてから彼女は刀弥の方へと向き直った。


「それじゃあ、森の中を探ってみようと思うんだけど……いいかしら?」


 許可を求める問い。その問いに対し刀弥は一瞬、思考を挟んだ後にリアの方を見やる。

 彼女の返答は任せるという信頼の頷きだった。それで彼は肩の力を抜く。


「ああ、他に心当たりがないんだ。だったら、行けるところをいくしかないしな」


 まだ街中の可能性も残っている。が、それは考えない。それに拘っていては次へは移れないからだ。ここは思い切って別の場所を探ってみるほうがいいかもしれない。そう刀弥は考えたのだ。


「……決まりね」


 彼の返答に笑みを浮かべるヴィアン。それから彼女はレリッサの方を見た。


「何が必要になる?」

「とりあえず短剣の補給をお願い。後は探索用の装備と食料にジャミング装置やハッキングツールとかも。あ、帰らないつもりだからローブか寝袋、感知センサーもほしいかしらね」


 スラスラとレリッサは要求を述べていく。その要求をヴィアンは逐次メモしていき、そうして彼女が喋り終えたのを確認すると、すぐさま席から立ち上がった。


「明日までには用意するわ。今日はとりあえず明日に備えて休みなさい」

「そうするわ」


 ヴィアンの忠告に大きく手を振り応じるレリッサ。そんな彼女の応答をヴィアンはしっかりと確認すると彼女達に背を向けそのまま酒場を後にしたのだった。


「……さて、それじゃあ私達も帰りましょうか」

「そうだな」


 方針が決まった以上、後はしっかりと準備をするだけだ。森の中という事で視界が効かない上にそこは相手の私有地だ。何らかの監視システムがあちこちに仕掛けられている可能性は十分に考えられる。連戦となる可能性もあり、極力体力を使わないよう心掛けた方が良さそうだ。

 そうやって頭の中で様々な可能性を思い描く刀弥。

 そうしながら一同は宿屋への帰路へとついたのだった。


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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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