表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限の世界  作者: 蒼風
七章「明かされる全容」
156/240

七章二話「探索」(2)

「……あのでかい屋敷がルブゼラ氏の自宅。基本的に仕事もあそこでやっているそうよ」


 レリッサが指差す先を見る刀弥達。すると、そこには広大な庭と巨大な屋敷が広がっていた。

 窓の配置から見て屋敷は三階建てだろうか。屋根や壁、窓の縁など各所ところどころに装飾が施されているのが見えることから外観にもかなり気を配っているのがわかる。

 庭も手入れされた花や園、意図的に配置された木々が美しく飾られており、屋敷と庭その二つが相まって幻想的な雰囲気を作り出していた。


「……なんていうか豪華だな」


 その外見に刀弥はそんな感想しかでてこない。


「あの木々とかは他の世界から取り寄せた感じだね。この世界じゃ見なかった品種だし」


 一方、リアはというとその外見に圧倒された様子はなく、むしろ楽しげな様子で屋敷を見回していた。


「大枚はたいて運んできみたいよ。噂じゃそれを巡って激しい戦闘があったとかっていう話だし……」

「なんというか、呆れる話ですね」


 『全く』と呟く刀弥。そうしてから彼は屋敷の敷地外へと視線を移す。

 この一帯はどうやら富裕層が集まっているエリアらしい。どこの土地も皆、庭付きの屋敷が建っているのが見えた。

 出入口である門には見張り――人間、ゴーレム、なんらかの装置問わず――が備えられており不躾な客人は入口の時点で拒絶の洗礼を受けることになるだろう。


「……で、なんでルブゼラの屋敷へと向かってるんだ?」


 既に何度も投げかけた質問を再度口にする刀弥。

 そう。実のところ、刀弥達はどういう目的でここにいるのかもわからないままこの場所まで連れてこられたのだ。

 事の発端は昨晩の襲撃の翌日である今日の昼頃に遡る。いつレリッサが来るのかと待ち構えていた二人の元へようやくレリッサがきたかと思うと昨日言っていた説明はどこえやら。『付いて来て』とだけ言って二人をここまで引っ張ってきたのだ。

 その間、刀弥が何度も先の問い掛けを飛ばしたのがだが『後で説明するから』の一点張りで未だに答えてもらっていない。

 さすがにそろそろ教えてもらえるだろうと思って先の言葉を口にした刀弥。

 すると、その予想通りレリッサは二人の方へと振り返り頷きの後にその説明を始めたのだった。


「理由は簡単よ。この街の支配者であるルブゼラ氏がレグイレムと繋がりを持っているからよ」

「「!?」」


 その言葉で目を見開く刀弥とリア。その一言はそれだけ二人にとって衝撃的だったのだ。


「基本的にはレグイレムに金を出して武器を買うという武器商人としての交流が主だけど、最近はきな臭いことにも手を貸すようになったみたいね。屋敷に関係者がよく出入りしているの?」

「じゃあ、そこにルード達もいたのか?」


 その問いにコクリと頷くレリッサ。ただその表情は少し険しかった。


「でも、その後が駄目だったのよね。向こうの警戒に気をつけてたら撒かれちゃった」


 残念という悔しげな表情でレリッサが答えてくる。とりあえずルード達はこの近辺にはいるらしい。


「けど、そうなると街中が怪しいのか」

「過去のケースじゃそう見せかけて街の外だったっていうパターンもあったから確定とは言い切れないけどね」


 そう言われると確信が持ちづらい。つい刀弥は悩んでしまう。


「仮に外ならどこが怪しいんだ」

「近隣にこの一帯では珍しい森地帯かしら。あそこ、ルブゼラの私有地になってるし……」


 ふと、街の中に輸送車が入ったと出入口の見張りが言っていたのを思い出したが、それ自体はどうとでもなる。積み荷や当人達を降ろした輸送車に偽装を施せば大概は誤魔化せるためだ。


「中も外も怪しい訳か」


 また、怪しい候補が増えたことに嘆息してしまう刀弥。と、ここでようやく彼は話が脱線していることを思い出した。


「……それでルブゼラの屋敷に向かってどうするつもりなんだ? …………まさか、潜入して何か手掛かりを探すつもりじゃないだろうな?」


 もしそうなら危険だと刀弥はそう考えていた。

 仮に潜入が露見すればその途端相手は大手を振って刀弥達を犯罪者として追い詰めることができるからだ。

 現状でも街の支配者として、ある程度思い通りにする事ができるのだ。これに大義名分まで与えてしまえば街に居られないどころか街の外へ逃げ出すことも困難になる可能性だってある。


「残念。外れよ」


 けれども、刀弥の予想は外れていた。

 否定したレリッサが再度屋敷の方へと目を向ける。


「実のところ、昨日の襲撃者を捕まえて情報を白状させるのが本来の予定だったの。最もそれも自決されたことで失敗しちゃったけど、排除が目的の相手があれだけで諦めるはずないでしょ?」

「……それであえて相手の鼻先をうろついている訳か」


 彼女の狙いは簡単だ。相手の襲撃者を誘い出してそいつから情報を得る。ここまでくれば襲ってくる相手は手練でありそいつが無関係の外部の人間である可能性はかなり低い。それはつまり拠点の情報を持っている可能性がかなり高いという事だ。


「現状はそれ狙いね。もちろん駄目だった時の事も考えるわ。私としては予定通りの流れのほうが望ましいけど」


 それは刀弥達とて同じだ。下手な事態が起こることなく敵の拠点を見つけることができるのがどれだけ望ましいか。

 と、そんな時だ。


「……あんた達か? なんかガキを追っている三人組ってのは?」


 ふと、そんな風に声を掛けられた。

 その声に三人は一斉に声の方へと振り返る。すると、そこには身なりのみすぼらしい男が十字路の傍の壁に背を預けて立っていた。服が汚れているのか背中が付いている辺りの壁が若干汚れている。

 別に刀弥は綺麗好きという訳ではないが、それでもその事になんとく嫌な気分にさせられてしまう。


「そうだけど。何?」


 だからか、その返答には若干不機嫌な色が混ざっていた。

 実のところ、用件に関しては少しばかり予想がついている。当然、真の狙いの方も……

 

「いや、俺はこの辺を縄張りにしている情報屋なんだが……実はな、あんた達が探している人物に関する情報を持ってるんだが……買わないか?」


 そんな彼等に男が用件を切り出す。その内容は刀弥にとって想定内のものだった。


「いいわよ。ここで教えてくれるのかしら?」

「さすがにここはまずい。ちょっと付いて来てくれ」


 そう言って男は十字路の曲がり角を指さす。


「……ええ、そうね」


 それにレリッサが頷き応じると男が歩き出し刀弥達はその後を付いて行くことになった。

十字路の先は細いを道となっており道の先はいくつもの十字路によって通路を成している。

 そんな通路を男の誘導にそって道を進む三人。

 幾度も曲がり角を曲がり幾度も同じような場所を巡る。

 そうしてその果てに辿り着いたのはどこかの広間だった。

 大きな壁に空いた穴。そこを通って進んだ先にあったのがこの場所だ。壁の向こう側の空間は広いが薄暗く汚いところであちこちに廃棄物が転がっている。


「ここは?」


 思わずそんな事を尋ねる刀弥。

すると、男が振り返りこう答えてきた。


「廃棄場。金持ち連中がいらなくなったものを捨てる場所さ。お宝目当てで物色しに来る連中も多いが今は日が経っちまってゴミしか残っていないから誰も来ないって状態だ。あんた達を始末するのには丁度いい塩梅なんだぜ」


 その直後、廃棄物の山の中から何かが飛び出してきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拍手もらえたらやっぱり嬉しいです。
ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ