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無限の世界  作者: 蒼風
五章「別れの果てに」
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五章二話「革命軍」(4)

「さて、君達の事は事前に聞いているのだが、できれば君達の口から聞きたい」

「……ネレス・リクレストです」

「風野刀弥」

「リア・リンスレットです」


 その自己紹介にすぐさま名乗り返す三人。特にネレスはグレリムに対し睨むような視線を放っている。

 そんな彼女に刀弥は内心ヒヤヒヤしっぱなしだ。チラリと彼はグレリムの反応を伺う。

 グレリムはというとそんな彼女の視線を顔色も変えずに平然と受け止めていた。どうやら本当に恨みなどといったものを受け止める覚悟を持っているようだ。その点に関しては素直に刀弥は感心する。


 と、そんな事を考えていると唐突にグレリムが次のような事を言ってきた。


「さて、折角だ。君達に来てほしい所がある。ついて来たまえ」


 この一言にオスワルドを始め革命軍の仲間は慌てふためく。


「い、いいんですか?」

「ああ、むしろそうした方が彼女も理解をしてくれるかもしれない」


 そう言って彼女ことネレスに視線を向けるグレリム。そんな彼の視線にネレスは反感の目で応じた。

 この彼女の反応に刀弥とリアはやれやれと肩をすくめる。

 それはグレリムも同じで、その後彼は部屋の奥へと歩き始めた。それを見て刀弥達も追従する。

 奥の部屋は簡素な内装だった。いくつも並ぶ黒の本棚、窓側に平然と突っ立ている机と椅子、そして壁に立て掛けられた絵、どうやらここは執務室のようだ。

 ここに連れてきたどうするのだろうかと刀弥がそう思っていると、グレリムはおもむろに立て掛けてあった絵の一つに近づくとその後ろに手を伸ばす。

 直後、本棚の一つが動き出しその裏側から地下へと通じる通路が姿を見せた。

 それを見て刀弥はこの建物に入る直前の遠ざかる足音の正体はこれだったのかと納得する。

そうして彼らは通路を降りていった。


 通路は長く視界の先まで続いている。幅は人二人分程。少し狭いという感じだ。

 そんな通路を刀弥達はグレリムの後に続いて歩いて行く。後ろには革命軍の仲間達が続いていた。


「一体、どれだけ歩くんだ?」


 果ての見えない通路に嫌気が差した刀弥は思い切ってグレリムに尋ねる。

 グレリムの返答はこうだった。


「安心したまえ。もう時期、目的地に到着する」

「もう時期って――」


 まだ通路の終わりすら見えてないじゃんと言おうとした刀弥。しかし彼はその言葉を止めた。突然、景色が変わり通路の終わりに到着していたからだ。


「え?」

「あれ?」


 この現象にネレスやリアも同じように驚く。


「どうしたんだね?」


 そんな彼らの様子に口の端を上げるグレリム。それは他の革命軍のメンバーも同様だった。


「これは?」

「ちょっとした仕掛けだ。向こうからは通路を長く見せかけることで心理的に断念させることができるし、こちらは姿を隠して相手を視認することができる。まあ、一度しか使えないトリックのようなものだがね」


 はははと声を上げて笑いながらグレリムは先へと進んでいく。それを見て刀弥達は慌てて彼の後を追いかけた。


 少し歩くと彼らは通路の右側に現れたドアの中へと入っていく。そこに刀弥達も続いて入っていった。

 そこは訓練室だったらしい。銃を持った男達が遠くの的に目掛けて射撃を放っている。皆の目は真剣でまるで実戦さながらの空気だ。


「……つまるところ、ここは革命軍の秘密基地といったところか?」


 目の前の光景を眺めながらそう確認する刀弥。実際、それ以外に思いつきはしない。


「そういう事だ」


 彼の確認に笑みを浮かべたまま頷きを返すグレリム。どうやら当たりだったらしい。


「長年掛けて完成させた我々の隠れ家だ。ここを拠点に活動している」

「兵士達には見つかっていないんですか?」


 検問などの兵士達の動きを思い出す。この村の近辺でそういうことをしているということは彼らもまたこの近辺に革命軍の拠点があるということを想定しているはずだ。当然、捜索の目が放たれているのは間違いない。


 この刀弥の質問にグレリムはこう答える。


「今のところ大丈夫だ。入り口は先程の以外にも存在しているが、全部カモフラージュを施している上に開けるためには複雑な仕掛けが必要となっている。簡単には見つからんよ」


 その返答に刀弥はなるほどと応じた。


「まあ、それでもいつまでもという訳にはいかないだろう。故にここが潰された時のことを考えていくつかの拠点は確保している。ここと比べるとだいぶ小さいが、その分気付かれにくいのが特徴だ。隠れ家としては打って付けだろう」


 どうやら見つかった時のことも既に想定しているようだ。その用意周到さに刀弥やリアは思わず感心してしまう。

 と、そんな時だ。


「あ、グレリムさん。ここにいましたか。例の荷物、届きましたのでお知らせに来ました」


 訓練室に新たな男が現れグレリムにそう告げてきた。


「そうか。わかった。すぐに向かう」


 グレリムがそう応えると男は軽く頷き去っていく。そうして男が去った後、仲間の一人がグレリムに対し次のような問いを投げてきた。


「荷物というと……あれですか?」

「ああ、そうだ。急いで確認するとしよう。君達も来るか?」


 君達、すなわち刀弥達に向かって声を掛けるグレリム。そんな彼の対応に刀弥達は不審な表情を浮かべてしまう。いくらなんでも施設内を見せすぎなのだ。

 例えネレスがオスワルドの妹でしばらくの間、彼らと一緒にいることになっていたとしても、情報は万が一の事を考え必要な事以外は伏せておくのが基本だ。にも関わらず、グレリムはそんな刀弥達に迷う素振りもなく施設内を見せてくる。とても革命軍のリーダーがやることとは思えない。


「……実は革命軍のリーダーはお飾りというオチなのかな?」

「それなら最後は口封じという可能性のほうが高くないか?」


 ヒソヒソとそんな会話をしながら、とりあえずグレリムに首肯を返す刀弥達。

 それを見てグレリムは大きく頷くとドアを開け、その向こうへと消えていった。そんな彼を刀弥達は追いかける。

 

 そうして通路をしばらく歩いていると、やがて彼らは武器庫にやってきた。

 室内には武器がそこら中に溢れている。


「……基本は銃なんだな」


 室内を見回し刀弥が呟く。彼の言う通り武器庫に揃えられている武器はその大半が銃系だった。


「この世界では銃が基本的な武器でね。だからこそ、武器を密輸する際も使い慣れている銃系を手に入れることにしたのだ」


 そんな刀弥の呟きを拾うグレリム。そんな彼は入り口付近に置かれたボックスケースに向かっている。

 ボックスケースは緑色の塗装がされており、サイズは人の体格よりも大きい。全体的に長方形の立体でそれが横たわっている形だ。天井を向いている面には何かのマーキングがされており名称も書かれている。名称は『レグイレム』と読めた。

 そんなボックスケースの蓋をグレリムは開く。

 開いたタイミングを見計らって刀弥達が中を覗くと、中には武器がギッシリと詰め込まれていた。よく見ると武器は武器庫に並べられている物と同種。どうやら納品物らしい。


「他世界から送られてきた武器だ。主動力はマナ。それを風の弾丸へと変換して放つ銃だ」


 ご丁寧にグレリムが武器の説明を始める。その説明を聞いて刀弥は以前ファルセンで出会ったシェナやアレンを思い出した。確か彼女が使っていた銃も似たようなタイプだったはずだ。


「このレグイレムというのはなんなんだ?」

「我々を支援している他世界の組織だ。この武器はそこから贈り物という訳だ」


 その返答に刀弥は表情を曇らせる。


「……その組織、大丈夫なのか?」


 この大丈夫かというのはそこが信用できるのかという問いだ。グレリムにはその意味がちゃんと通じていたようで、彼は頷きを一つ見せるとこう答えてきた。


「正直言えば胡散臭い組織と言わざるを得ない。しかし、現状としては利用しなければならないのが実用なのだ。なにせ我々を支援してくれる組織はそう多くはないのでな」


 つまり、それほど余裕があるという状況でもないらしい。

 選択肢の少ない状況に刀弥は少しだけ同情しつつ話を続ける。


「でも、怪しいのならこのまま付き合い続けるという訳にもいかないだろ?」

「その点については同意だ。故に密かに監視と調査を行なっている」

「なるほどな」


 どうやら出来る限りの手はしっかり打っているようだ。

 その事に納得し刀弥はフムフムと軽く何度か首を縦に振る。


「……さて、他の場所も案内するとしようか。こっちだ」


 その後もグレリムの先導で秘密基地内をくまなく案内される刀弥達。結局、その案内が終わったのは三人が寝泊まりする部屋に案内された時だった。

 いろいろな事があり、いつも以上に警戒していたこともあってクタクタだった彼らはベッドに入ると同時に深い眠りに入ったのは無理もないことだろう。

 こうしてエリビスに辿り着いてからの一日目がようやく終わりを迎えたのだった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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