弟が帰ってきた
「おお!息子のあのひどい火傷が跡形もなく…先生!なんとお礼を言っていいやら。」
「さっさと帰れ!次!!」
そのあまりに冷たいジークの言動に対して、オータムがジークに向かって叫んだ!
「先生!いくらなんでもひどすぎませんか!?せっかくお礼を言ってくれているのに…」
「その理由を教えてやろうか!?それは、俺が156時間不眠不休だからだよ!!最近の患者数は尋常じゃないぞ!このままじゃ本当に発狂しちまうよ!次!!」
―確かにな―
オータムは思った。
ジーク先生といえどさすがに最近の患者の数は尋常じゃない。オータムたち助手は3人でローテーションしているが、それでさえ最近は倒れそうなほど忙しい。ジークの顔も殴りまくってもはや原型をとどめていない(ジークは自分で治療できるが…)
「次って言ってんだろうが!患者連れてこいよ!!」
しかし、次の患者は現れなかった。
代わりに診療所に入ってきたのは弟のロスだった。
「患者はもういないよ、兄さん。他の患者は全員治したよ。」
「ロッロロロロス!お前なのか!!本当にお前なんだな!」
「ただいま。今まで一人にさせて本当にごめんよ。」
ジークはロスに熱いハグをした。そして、即座に倒れこんだ。
「ロス…」
「オータム…ただいま。」
「今更どの面下げて帰ってきた!って言いたいけど…今の状況じゃ受け要らざる負えないわね。」
助手の2人もロスの帰還に素直に喜んだ。
3時間後…
ジークは目覚めた。
診療所に行ってみると、ロスが自分の代わりに患者の治療をしてくれていた。
ロスがジークに気づき穏やかな声で言った。
「まだまだ寝てていいのに。しばらくは俺に治療は任せて自由にするといいよ!」
「ロースー!お前はなんていい弟なんだ。」
そういってまたロスにハグをして、外へ出ていった。
「どこへいったんだろ?てっきり寝ると思ったんだけど…」
「大方、恋人のところにでも行ってるんでしょ…」
「恋人!?今兄さんには恋人がいるの?」
「だから、そういってるでしょ!」
「じゃあ、オータムは?」
「…仕事しろよ!バカロス!!」
「ふーん!そっか…」
この会話を、助手たちがカーテン越しで聞き耳をたてていた。
助手の2人はひそひそ声で話し出した。
「えーっ!何!?この三角関係!」
「いや…オータムは前からジーク先生に好意を持ってたんじゃないかな…」
「なるほど…でロスはオータムのことを!?あっもしかしてロスが突然出ていったのってそれが原因じゃ!」
話に夢中になっていると、ベッドの患者が死にそうな声で助手たちに話しかけた。
「あのー早く先生の元へ連れてってくれんと…いっ息が…」
魔術医師ジークの苦闘は続く