マザコンの秘密
「また、お母さん来たんですか!?」
ロスはあきれながら言った。
「だってチャちゃんがいじめられてないか心配で…」
「あなたがこう頻繁に来ては皆から逆に変な目で見られてしまいますよ。なんで毎日毎日来るんですか!?本人のためにも全くよくないことですよ!!」
「だって私チャちゃんが心配で…」
「いいですか!?今後チャとお母さんが接触するのは週で2回までとさせて頂きます。それ以外は一切この診療所には来ないでください!!」
「そんな…チャちゃんがいじめられて自殺でもしたらどうするんですか!?」
「一生あなたが付いていてはチャはいつまでたっても成長しません。」
「でも…」
「わかりましたか!!」
「…わかりました。」
「…では今日はお引き取り下さい!!」
「ええっ!!今日からですか!?」
「はい!」
「わかりました。」
30分後…
ロスによる診療講座中、何かに気づき、急にロスは壁に向かって呪文を唱えだした。
すると、チャの母親が姿を現した。
「お母さん!!透明になったって駄目です!!」
「透明になって見守るぐらいいいじゃないですか!?」
「ダ・メです!!お引き取り下さい。」
2時間後…
ジークが見守る中、チャの重症患者の治療が始まった。
チャが魔法を掛けると、重症患者の傷は塞がっていった。
ジークは何かに気づき窓のそばにいる鳥に向かって呪文を唱えた。
すると、チャの母親が姿を現した。
「お母さん…なんでチャの代わりに呪文を掛けてしまうんですか!?チャのためにならないでしょう!」
「だってだってチャちゃんができない風に思われるのは耐えられないんです!!」
「そんなことやってたらチャは何時まで経っても成長しないでしょ!!お引き取り下さい。」
そんなやりとりが後5,6回続いた。
そして2日後…
ザックスが見守る中、チャが重症患者の治療に呪文を掛けた。
すると、重症患者の傷が見る見るうちに治っていった。
「凄いじゃないか!!自力で治すなんて大したもんだ!!」
チャは頬を赤らめながら頷いた。
同じく弟子であるサシャがふざけてこんなことを言った。
「また、お母さんがどっかに隠れてるんじゃないのーー??」
周りからドッと笑いが起きた。
ザックスはサシャを睨み、こう言った。
「サシャ…私は一流の魔術医師だよ。私の目をかいくぐれる魔法使いなんて…あれ…」
ザックスは何か違和感に気づきその場所に魔法をかけた。
するとチャの母親が飛び出してきた。
「いたーーーー!!」
その叫び声と同時に一段と大きな笑いが起きた。
チャの赤らめた顔が一気に青白く変わっていった。
そして、チャが突然叫んだ!!
「もーたくさんだーーー!!」
そう言うや否や診療所を飛び出して行った。
「チャ、チャちゃーーーん!!」
そー叫びながらチャの母親はチャを追いかけた。
2時間後…
結局、チャは見つからず、治療している者以外の皆で捜索することになった。
魔術医師で最年長であるガラがうなだれているチャの母親に話しかけた。
「やれやれお母さん…今回は失敗しましたな。」
「…皆は私のことを多少過保護だと思っているでしょうが…私は…私は…」
「どれ…聞かせてはもらえないでしょうか?」
「…あの子は8年前に死にかけたことがありました。大戦が起きる前でしたが、盗賊団と防衛隊との魔法弾に巻きこまれて…」
「あまりの傷にどの魔術医師たちも一斉に匙を投げました。私はこの子の命を一回諦めました。」
「8年前…」
「覚えてらっしゃらないでしょうね…奇跡の魔術医師がいるというかすかな希望にすがって来た一人の母親のことなんて…」
「なるほど…そうでしたか…」
「九死に一生を得たあの子を…私はずっと守ってきました。またあの子の命を諦めることになるくらいなら…ずっとあの子を守っていようって。」
「…不思議とチャは私にだけは心を開いてくれていましてな…なんで魔術医師になりたいかを聞いたことがあったんです。」
「…あの子はなんて?」
「『僕は今までずっと母さんに守られてばっかりだった。これからは母さんを守れるような人になりたい』そうですよ。」
「…」
「子供の成長は著しいものです。やがてお母さんも息子さんに抜かれる日がやってくるでしょう。その日を心待ちにするのは…ダメですかな?」
「…」
「あっ、そうそういい忘れたことがありました。8年前にある子供を治療した時子供がこんなことをいっていたんです。『お母さんは大丈夫?』って。もしかしたらその子はお母さんを守ろうとして魔法弾にあたったのかもしれませんな…」
「…」
結局4時間後チャは見つかり、ガラ先生がチャをなだめていったんは落ち着いた。
チャの母親はそのことがあって以来あまり顔を出さなくなった。
あるガラ先生とオータムの治療の時、オータムはガラに向かって話しかけた。
「ガラ先生はやっぱり凄いですよね。あんなに自分のことをしゃべらないチャから色々と聞き出していたんですもんね。」
「いや…心は開いてくれたけど、何も聞いてないよ。」
「えっ!!じゃあ、あの話は全くの嘘なんですか!?」
「嘘じゃないよ…あの子の心がそう言っていたんだよ。」
そう言ってガラはオータムに笑いかけた。