記念日(2)
「どーしよー!非常に困った。プレゼント探す時間なんかないよ。」
「とりあえずロス先生に相談しては?」
「…そーだなー。」
ジークの仕事の時間が終わり、ロスが交代勤務で診療室に入って来たので相談することにした。
「ロス…オータムのことなんだけど…」
「ああ…さっき話したよ。新助手の面接のことでしょ?」
「えっ!?…オータム何か言ってた?」
「いや…『兄さんに新助手の面接の時間聞いたけど、19時からなら、俺も参加できるから行くよ』って言ったら何か考え出して…」
「それで!?」
「いや…『わかりました』って笑顔で言ってたけど…」
「…どーしよー。完全に怒ってる…」
「何かあったのかい?」
「いや…実は明日はオータムがこの診療所に勤めて7年目なんだ…」
「うん。知ってるよ。」
「えっ!お前知ってたの?」
「だって1年目と3年目は祝ってたでしょ?今回も驚かせてやろうと思って内緒で数人の弟子たちに密かに準備させてるよ。」
「なーんで俺にも言ってくれないんだー!?」
「いや…特に理由はないけど…兄さんは多忙だし助手には口が軽いやつがいるし…」
「そーかー…わかった。ありがとうな。」
ジークは結局オータムに謝るしかないと思い、部屋へ行った。
ノックしたが返事がない。
部屋へ入ると、オータムはベッドに包まっていた。
「オータム…あのさ…」
「なんで返事がないのに入ってくるんですか!?出てってください!!」
「明日のことなんだけど…」
「新助手の面接が19時からあるんでしょ?ちゃんと覚えてますよ!」
「いや…記念日のことなんだけど…」
「…誰から聞いたんですか?」
「…アリーから…」
ジークは弱弱しそうな声で言った。
すると、オータムは起き上がりジークを見た。
ちょっと目には泣いた跡があったような気がした。
「ごめん。」
ジークがそー言うと、オータムは手を両手に重ねて思いっきりみぞおちに両手をぶち込んだ。
「あごは!!!」
ジークは思わずそんなうめき声がとびだし、みぞおちを抱えてうずくまった。
オータムはうずくまっているジークを見て言った。
「これで許してあげます。」
ジークは苦しみながらも言った。
「ちゃんとパーティーは開くから…」
「私は!!…パーティーをして欲しいから怒ってるんじゃないんです!」
「じゃあ…なんで…」
「もーいい!!出てってください。」
オータムはそっぽを向いた。
その時のオータムの肩は震えていた気がする。
突然、ジークはオータムの肩を抱いた。
オータムはびっくりして言った。
「ば、なななにするんですか!?」
「お前には本当に感謝してる。俺が今ここにいるのはお前のおかげだよ。」
「…」
「ただ、こーゆー記念日とかには無頓着で…本当にごめん。」
「…」
「…」
「…あの…もう少しこうしてもらっていても…いい…ですか?」
「…」
「…」
「…」
それから2分くらい経った後、部屋にノックがした。
2人はノックにびっくりして即座に離れた。
結局、ロスは昼ごろにサプライズパーティーを開いて、オータムはとても喜んだ。
19時には新助手の面接があり、2人を採用した。
ジークとオータムはお互いを少し意識していたのか口数が妙に少なかった。