歌が上手くなりたい
弟のロスに元医療魔術研究所副所長のザックス、診療所創設者のガラのおかげでジークの仕事は昔よりも格段に楽になっていた。
弟子たちも中々成長していて、診療所は本当に順調だった。
ジークには暇な時間がかなりできたので、本格的に歌を趣味にするべく活動を始めた。
ある時、ジークの部屋に見知らぬ女の人が入ってきた。
「ジークさんですか?」
「はい。そうですが…患者さんの受付はあちらですよ。」
「いえ…違うんです。私、歌手のテノーと言います。今日はジークさんのレッスンに伺いました。」
「えっ!あなたがテノーさんですか!よろしくお願いします。」
ジークはそう言ってリズムに乗り、歌い始めた。
テノーはジークの歌を聞くや否やこう言った。
「…手ごわいですね。」
2時間後…
「ららららららーーー!!」
「ちがーーーう!何度言ったらわかるんですか!!」
「ららっららーーー!!」
「ちがーう!!!」
4時間後…
「らららららららーーー!」
「なんで言っても治さないんですか!治さないなら私帰りますよ!!」
「らららあららっらー!!」
「違う!!ってかひどくなってるし!」
6時間後…
「ららあららららーーー!!!!」
「…今日のレッスンはここまでにします。」
「テノー先生ご指導ありがとうございます。一生懸命やりましたがどうでしたか?」
「伸びしろがない…」
「えっ?」
「あなたは歌の才能がありません。最初は下手だと思いました。ですが、あなたはタダのへたくそじゃありませんでした…今後あなたは少しも上達しないでしょう。」
「そんな…」
「才能があなたには全く感じられません…残念ですが、別の趣味を探した方がいいでしょう。」
「…」
その夜ジークは人知れず泣いた。