困ったなぁ
バラとガラが診療所に来て2週間が経った。
診療所を建てたのは他ならぬガラだった。
さすがはガラは並外れた魔法力と豊富な経験で立派に診療をこなせた。
だが、バラは…昔から大した魔術医師ではなかったが、今では昔とは比べ物にならないくらいレベルが落ちていた。
そのくせ、プライドは高く調子乗りだったので弟子や助手からは大いに嫌われた。
ジークとオータムの診療中、オータムにジークが話しかけた。
「オータム…なんであの時バラを追い出さなかったんだ?お前が一番バラにいじめられたじゃないか…」
「いじめられたなんて…あの人がいたから今の私があるんです。それに、あの人はガラ先生の弟です。ガラ先生の気持ちを考えると…」
「…時々、お前の気持ちを考えると胸が痛くなるよ。もっと好きに生きればいいのに…もっと感情で人にぶつかっていければいいのにって。人のことばかり優先してるお前を見てると…」
そういってジークはオータムの頭をそっと撫でた。
「ジーク先生…」
オータムは涙が落ちないように目をつぶった。
ある診療中…
「バラ先生…早くしないと患者さん死んじゃいますよ!!」
「うるさいなー!じゃあお前やってみろよ!!」
「…」
ジークがバラの怒鳴り声で駆けつけた。
「何やってるんですか!?死にそうじゃないですか!!」
そうジークは言い、呪文を瀕死の患者にかけた。
すると、患者の傷はたちまち治った。
「バラ先生!今日のあなたの担当患者は軽症患者のみのはずです。重症患者なんてどうやって連れてくたんですか?」
「さあねぇ…こいつが間違えて連れてくるもんだからなぁ!こっちはいい迷惑だったんだがなぁ!!」
「…」
「まぁ、お前なんていなくても俺一人でこんなの治せたがな!」
「…」
ジークは黙ってその部屋を後にした。
その部屋の助手がジークの後を追ってきた。
「ジーク先生…」
「わかってる…すまないな。バラ先生が何かやらかしたらまたすぐに呼んでくれ。」
月末日…
「おかしいな…」
助手の一人が首をかしげていると、オータムがそこへやって来た。
「どう計算しても診療代が全然足りないんですよ…」
「そんな…ちょっと計算さして…」
オータムも計算してみるが、やはり3割ほど足りない。
「なんででしょ…困ったね。」
そこへ明らかに高そうな服や装飾品を身に着けているバラが歩いていた。
「オータムさん!きっとバラ先生ですよ!!」
「…あそこまでわかりやすく横領する人も珍しいわね…」
「尋問しましょう!」
「いや…バラ先生とガラ先生がこの診療所を建てたんだから、本来あの人たちがいくら使おうと…しょうがないのよ。」
「そんな…」
「大丈夫…ジーク先生にはちゃんと報告するし、ガラ先生にも注意してもらうようにするから。それにあなたたちの給料だってちゃんと払えるだけは残ってるんだから。後は、金庫の暗証番号を変えましょうか。」
「…」
後日、ジークにオータムがこの件について相談した。
「バラ先生…本当に困った人だな。」
「どうしましょう…」
「どうしましょうっていわれてもなぁ…ガラ先生に言ってもしガラ先生が責任感じて辞めるなんてことになったら困るしなあ…」
「困りましたね。」
「困ったなあ。」
ジークとオータムは困った。