限界の限界の限界を超えて
「せ、先生!クラナック地方で大合戦があって、1500人の患者がこちらに向かっているそうです。」
「…おい!どーすんだよ!?そんなの俺一人どーにかできるわけないだろ!!」
「そんなの…やるしかないじゃないですか!!」
「お前!俺が死ぬわ!!」
その時、ドアが開き患者がなだれ込んできた。
「ええい!やったるわ!とりあえず重症患者だけ連れてこんかい!」
36時間後…
「次!あと、何人だ!?」
「今500人目です!」
「ご…まだ500人か!?1200人ぐらいは見ただろ!?」
「いえ!むしろ10人くらいサバよんで500人です。」
「なんなんだー!もう皆死んじゃえばいいじゃん!!なんで戦争なんかするんだー!」
その時、助手から強烈なビンタが飛んで来た。
「被災者たちに向かってなんてことを言うんだー!」
「な…殴ったな!36時間休みなしで働いているこの俺を!」
「あんたがいなきゃ皆死ぬんだからしょうがないじゃない!死んでも働きなさい!!」
72時間後…
「もう嫌だー!!」
ジークは治療中にもかかわらず、突然叫びドアの方に走り出した。
それを助手2人(一人は仮眠中)は手慣れた感じで羽交い絞めにした。
「あと300人じゃないですか!?あなたがいなければ死んじゃうんですよ!!」
「もう寝たい!俺は寝たいだけなんだ!なんで俺だけ…なんで俺だけこんなめに!!」
「あなたは魔術医療の大天才だからでしょう!…聞いてください。絶大な魔法力、天才的な判断力、膨大な知識、経験…全てが備わっているあなたしかできないことです。それを誇りに思って最後までやり遂げなさい!」
「ぬあー!!次のやつはとりあえず一発殴るからなー!次!!」
「次はナーヒちゃん5歳です!」
「があー!大人の男連れてこいやー!こんな可愛い子殴れるわけないだろうが!!」
「ナーヒちゃん怯えてるじゃないですか!早く魔法をかけなさい!」
96時間後…
「ジーン先生…あと、あと10人です!」
「誰か、誰か俺を殺してくれ!」
助手から鉄拳が飛んで来た。
「しっかりしろ-!」
「そいつら、4日前から死んでないんだろ!じゃあもう大丈夫だろ!」
「私たちが魔法で出血を抑えてるからでしょ!ってか知ってるでしょ!!あと10人だからごちゃごちゃ言わずに働きなさい。」
「…もう魔法力も気力も判断力も出てこないよ…本当だよ…誰か助けてよ…」
「しかたない…これはやりたくなかったけど…」
「…嫌だ!それだけはやめてくれ!?いっ嫌だーーー…」
100時間後
「ジーン先生!全員終わりました。」
「…」
「先生?…力尽きて寝てる。…本当に凄い先生だわ。1500人休みなく全ての人を救うなんて…」
「そうね…そして私たちも今回はよくやったわね。さあ寝ましょうか。」
「寝かせてくれーー!もう寝かせてくれ!!」
「ジーン先生、寝ながら治療してる…」
魔術医師ジーンの苦闘は続く