弟子たちの経過観察
「ジーク先生フラれたらしいよ。」
「えーっ!そうなの!かわいそう…」
弟子たちが噂話していた。
「自業自得よ!あの人には、性格上の問題があるんじゃないかしら。」
同じく弟子であるサシャが口を挟んだ。
弟子は反論していった。
「そう?いい先生だと思うけどな…」
「あの先生、やたらと弟子をひいきするじゃない?それにさ…」
話の途中でジークが入って来た。
「じゃあ今日も授業を始める。と言っても、いつもの如く実践授業だ。患者を連れてきているから治療を始めなさい。」
サシャが手を挙げて言った。
「先生!私たちはもう先生の指導がなくても一人前に治療できます。」
―なんで全然できないお前が言う―
心の中でジークは思ったが、言わなかった。代わりに諭すように説明した。
「君たちの中にはもう自分が一人前にできると思っている人もいるだろう。ただ、1度の間違いが患者の命を奪う場合、力が足りないで患者が死んでしまう場合が来ることもある。そういった可能性を少しでも減らすために私がついていることを忘れてはいけない。」
サシャはぼそっと言った。
「フラれたくせに…」
シンと静まり返ってサシャのその声が響いた。
ジークはその言葉を無視して、患者たちを連れてきた。
そして、20分ほどその部屋を出ていった。(別の部屋では異様な叫び声がしたと言う)
30分後…
「い、痛い痛い痛い!!こ、この人…いだだだだ!!」
サシャの患者が突然すごい痛みを訴えた。
サシャは呆然としていたが、ジークはすぐに来て、患者を治した。
「サシャ…かけた呪文が全然違うよ。これでは痛みを訴えて当然だ。」
「…」
「これが、重症患者の治療だったらどうする?少しの呪文の間違えで重大なことになることをよく理解しておきなさい。」
―すっきりした。-
と心の中でジークは思った。
「なによ…なによなによ!!私ばっかり非難して!!私が全部悪いってわけ!?」
「は?」
ジークは訳のわからないサシャの切れ方に呆然とした。
しかし、依然おさまらないサシャはジークに向かってとびきり強い黒魔術をかけた。
ジークはその魔法弾に当たったが、全然効かなかった。
「嘘…」
サシャは自分の黒魔術が効かないことにショックを受けた。
ジークはため息をついて言った。
「この程度の魔法力じゃ俺には傷一つつけることはできないよ…気がすんだらまた治療を始めなさい。」
「…」
サシャは悔しそうに患者の治療を再開した。
治療室にて…
「ジーク先生…聞きましたよ。よくサシャを首にしませんでしたよね。」
「わからないもんさ…誰が最後まで残ってくれるかなんてな。オータム、お前だってそーだったものな。」
「私はあんなにエキセントリックではなかったです!」
「でも、変な子で、仕事も全然できなかったから1日で辞めると思っていたんだけどな…」
「…そんなに…変では…」