弟の事情
ロスが診療所に帰ってきて1週間が経った。
「ロス…お前が帰ってきて俺は本当にうれしい!」
ジークは今日の朝もそう言いロスにハグをし、眠りに入った。
緊急時の時以外はロスとジークで12時間ずつ交代勤務で当たることにした。
ジークはロスが帰ってきたことより、12時間ずつ交代勤務になったことに対して涙がでるほど感動していた。
ロスの処置中、オータムはロスに言った。
「さすがはロス先生ですね。ジーク先生と仕事を分けられるのは世界中であなたぐらいなものでしょうね…」
「いやあ、俺ぐらいの魔術医師は世界中にはごろごろいるよ。」
「…意味のわかんない謙遜しないで下さい。あなたほどの医師がごろごろいたら世界中に怪我人は一人もいませんよ。」
「ありがとう。オータム…でも、今なら僕とジーク兄さんなら、どっちが魔術医師として上なんだろうね?」
「…」
オータムは答えを差し控えた。
他の助手がロスに対して質問した。
「ロス先生はこの診療所を出て何をしていたんですか?」
ロスはオータムに聞こえるような声で言った。
「16才の時にここを出て、医療魔術先進国ロイツの魔術研究所で働き、勉強してたんだよ。」
「えっ!医療魔術の最先端じゃないですか!?…ももももしかして所長ロスってあなたのことだったの!?」
「…まあね。」
「すごーい!すごーーい!!オータムとジーク先生はこのこと知っていたの?」
オータムはバツが悪そうに首を縦に振った。
「なーんで教えてくれなかったんですか!?私たちにはロスは行方不明になったって言ってたじゃないですか!!」
「…」
オータムが答えに悩んでいるとロスが助けに入った。
「まあまあいいじゃないですか。」
3時間後…
ジークは体力が回復し、目が覚めた。(長年3時間睡眠以上取ったことがないため、どんなに疲れていても3時間後には目覚めてしまう。)
ジークにはある計画が頭に浮かんでいた。
そして自分なりのビジョンをなんとか紙にまとめることに成功した。
その紙を持って、ロスのところへ行った。
「ロス…お前が帰ってきて…」
「兄さん!1週間ハグされっぱなしだよ!もういいよもう!!」
しかし、相変わらずロスにハグをした。
ロスはハグされながらもジークに言った
「…もう…そんなことより、僕と兄さんのどっちが魔術医師として上だと思う?」
「そんなのロスに決まってるじゃないか!お前だよお前!!そんなことよりお前に見せたいアイデアがあるんだ!!」
「そんなこと…」
ロスはその言葉に非常にショックを受けた。
兄のジークを超える魔術医師になるようにロスは今まで頑張ってきた。
そして猛勉強と仕事によって医療魔術所長という誰もが世界一と評されるほどの地位も手に入れられた。
それほど超えたいと思っていた兄にさらっと流されて、ロスは非常に腹が立った。
ジークは手に持っていた書類をロスの前に広げた。