第9話 選べない2つ
評議室の空気は重く沈んでいた。
誰の意見も否定できなかった。
それでも灯は減っている。
それだけが動かない現実だった。
年配の評議員がゆっくり立ち上がる。
「理屈は分かった」
「だが、このままでは街は保たん」
「支えが足りないなら、作るしかない」
ざわめきが走る。
「一定年齢以上の者は冒険登録を義務とする」
「遠征成果の一定割合を強制納付にする」
「拒否すれば罰則を設ける」
ノアの顔が強張る。
「それは自由を奪うことです」
評議員は淡々と返す。
「存続のためだ」
「街が滅びれば自由も何もない」
別の評議員が静かに続ける。
「ならば延命をやめるべきだ」
「この制度は時代に合わなくなった」
「灯が尽きるなら、それを受け入れ、新しい仕組みへ移るべきだ」
マレクが叫ぶ。
「その間に誰が死ぬ!」
評議員は目を伏せる。
「変化には犠牲が伴う」
エリスが石板を開く。
「強制すれば、短期的には回復します」
「ですが反発と逃亡で、長くは持ちません」
「受容すれば、新制度へ進めます」
「ですが移行期に、多くが失われます」
沈黙。
ルナの声が震える。
「どちらも壊れてる」
ラグスが低く笑う。
「結局、誰かが払うんだな」
バルドは灯を見つめたまま、何も言わなかった。
答えは出ない。
どちらも正しく、どちらも恐ろしい。
そのとき、地下から小さな音が響いた。
灯柱の一本が、ほんのわずか沈んだ。
誰も触れていない。
誰も決めていない。
それでも時間だけが進んでいた。




