第6話 支えてきたものたち
昼の補給所に、久しぶりのざわめきが走った。
重い足音が階段に響く。
白髪混じりの大男が姿を現した。
バルドだった。
かつて街を救った伝説の冒険者。
彼の名は、灯柱の下の刻名壁にも深く刻まれている。
「まだ元気そうだな、この炉は」
バルドは満ちきらない灯を見上げて笑った。
「若い頃はこれより低い日も山ほどあった」
ロアンが頭を下げる。
「あなた方のおかげで、ここまで育ちました」
バルドは誇らしげに頷いた。
「俺たちの世代はな、命削って支えた」
「深部へ行き、重い核を運び続けた」
「楽な日なんて一日もなかった」
周囲の若者たちは息をのむ。
その苦労が今の安定を作ったことは事実だ。
エリスは石板を差し出した。
「ですが、今は戻りが足りていません」
「支える人数も、量も減っています」
バルドはちらりと見るだけで言った。
「数字は波だ」
「豊かになれば一時的に緩むこともある」
「だがこの炉は強い」
「簡単には枯れない」
しばらく間を置いて、穏やかに付け加える。
「少なくとも、俺が生きている間はな」
その言葉に空気が緩む。
伝説の冒険者の確信は、安心そのものだった。
酒場では昔話が始まった。
「深部で仲間を失いながら核を運んだ」
「重さで肩が壊れそうだった」
「それでも納め続けた」
若者たちは尊敬の眼差しを向ける。
バルドは杯を掲げる。
「だから今は、受け取る番だ」
誰も否定できなかった。
功績は確かだった。
補給所の裏でルナが小さく言う。
「間違ってないですよね」
エリスは静かに答える。
「間違ってない」
「ただ、時間が違う」
灯柱は淡く光っている。
だがその光は、過去の犠牲と未来の削減の上に立っていた。




