第4話 削られるもの
朝霧の森を、マレクは一人で進んでいた。
装備は古い。
刃は何度も研ぎ直され、鎧には補修の跡が残る。
それでも彼は深部へ向かっていた。
危険が増える場所ほど、重い核が得られるからだ。
魔獣を倒し、肩で息をしながら核を拾う。
重たい核が二つ。
軽い核が一つ。
今日の成果としては悪くない。
彼は迷わずすべて袋へ入れた。
売ることなど考えもしない。
蒼灯の蔵を支えるのが当然だと思っている。
補給所へ戻ると、納付台は空いていた。
以前なら並んでいた時間帯だ。
マレクは核を落とす。
軽い音、重い音、重い音。
炉が明るく脈打ち、灯がしっかり伸びる。
その隣で、ラグスたちが戻ってきた。
装備は新しく、傷は少ない。
袋から出るのは軽い核ばかり。
「今日は浅く回しただけだ」
ラグスが笑う。
「重い遠征は割に合わない」
マレクは眉をひそめる。
「それじゃ支えにならない」
「灯は十分だろ?」
「皆で少しずつやればいい」
その言葉が胸に重く落ちた。
次の遠征。
ラグスたちはさらに成果を上げて戻る。
安全に、速く、効率よく。
装備の差が動きの差になっていた。
マレクは深部で負傷した。
回復薬を多く使い、成果は減った。
重い核は一つだけ。
酒場では笑い声が上がる。
「危険は避けた方が得だ」
「軽い狩りを回せ」
「売って装備を整えろ」
マレクは杯を置いた。
反論できなかった。
現実が否定していたからだ。
数日後。
納付台の前で立ち止まる。
袋には重い核が一つ。
生活は苦しい。
装備は古いまま。
(俺一人が支えても変わらない)
初めて迷いが生まれた。
彼は深く息を吸い、核を袋に戻した。
その日、納付台には軽い核だけが落ちた。
協力は、選択になった。
補給所の奥で、エリスは灯の伸びを見つめていた。
今日も弱い。
誠実な者ほど削られ、
合理的な者ほど強くなる。
その構図が静かに完成していた。




