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蒼灯の蔵  作者: Log_A
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第3話 合理的な選択

雨上がりの森は足を取られやすかった。


ラグスは息を切らしながら剣を引き抜く。


倒した魔獣は小型だ。

得られた核も三つだけ。


どれも軽い。



「これじゃ納めて終わりだな」


仲間が苦笑する。


「補給分で消える」



ラグスは黙って頷いた。


最近はこれが増えている。


無茶をしても利益が残らない。



補給所へ戻り、納付台へ向かう途中で足が止まった。


隣で年配の冒険者が袋の中を整理している。


軽い核を台へ。


黒く濁った核は別の袋へ。



「それ、入れないんですか」


ラグスが思わず聞く。



男は当然のように言った。


「灯には伸びにくい」


「でも錬金街なら銀貨になる」



「重いし運ぶ価値がある」



ラグスは手の中の核を見た。


軽い核ばかり。


黒核は一つもない。



「皆やってますよ」


男は小声で付け足す。


「最近は重い核を狙う遠征自体、減ってきてる」


「危険の割に得にならないからな」



その言葉が胸に残った。



その夜、ラグスは初めて錬金街へ向かった。


数日前に譲り受けた黒核を差し出す。


商人の目が光る。



「いい品だ」


「これ一つで回復薬が何本も買える」



銀貨が手のひらに落ちた。


納付では一切残らなかった重み。



翌日、ラグスは新しい刃を手に森へ入った。


以前より深く、速く動ける。


倒せた魔獣も強くなった。



成果は増えた。


だが得られた核はやはり軽いものが中心だった。



補給所へ戻ると、同じような冒険者が増えている。


台へ落とされる核は小さく軽いものばかり。


列も短い。



酒場で噂が広がる。


「黒い核は売った方がいい」


「重い遠征は割に合わない」


「軽い狩りを回した方が安全だ」



誰かが言った。


「納めても生活は楽にならない」



別の者が頷く。


「売れば装備が良くなる」



合理的な選択だった。



その頃、補給所ではエリスが石板を見つめていた。


納めに来る人数が減っている。


一人が落とす核も小さい。



灯の伸びは、また弱い。



(遠征が浅くなっている)


(危険と支えが一緒に減っている)



誰も奪っていない。

誰も裏切っていない。


皆、生きやすい方法を選んでいるだけだった。



だがその選択は、灯を支える力を確実に細らせていた。

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