ご主人様とメイド
衝撃の出来事から数日後。
琴音の甲斐甲斐しい世話と充分な休養のおかげですっかり体調が良くなった颯斗は学校へ向かっていた。琴音とともに。――あの日あの後、もう一つ衝撃のことを聞かされた。なんでもこれから颯斗の家に住み込みで働くことになったそう。年頃の男女2人が一つ屋根の下にいるのは色々問題がありそうなので自宅から来るよう遠回しに伝えたが、琴音曰く、それではメイドの矜持を保てないのだとか。そんなことを言われてしまったら世話になる側の颯斗は何も言えなかった。しかし、問題はそこからだった。なんと登校まで一緒にすると言い始めた。琴音が近くにいるだけで目立ってしまうので登校は別々にすることを頼んだが、琴音は雇い主の側にいないメイドなどメイドではないと主張した。颯斗は一応雇い主は自分ではないのだが…と思ったが論点はそこではない。もう一度やんわりと断りの旨を伝えると琴音は少し悲しそうな目をした。自分は邪魔なのか…?そんなことを伝えるような目だった。罪悪感に苛まれた颯斗は迷惑ではないことを伝えた。その上で琴音が自分の近くをいると目立ってしまうこと、自分たちが主従関係であること周りに知られてしまうことへの不安を感じていることを正直に伝えた。すると琴音は安堵の表情を浮かべたあと細心の注意を払って行動するから大丈夫だと言った。まだ少し悩みはあったが、本人が気をつけるといっているし、何より琴音にさっきのような顔をさせてしまうのは嫌だったので颯斗は折れることにした。
――こんなやり取りから、2人は共に登校していた。
流石にすぐ隣にいられるとどうしても落ち着かなかったので、少し後ろを歩いてもらっていた。先を歩いてもらっても良かったのだが、後ろからの方がよく見えるのだとか。
そんな登校中、少し周りの視線を感じた。最初は自分たちのことを気付いて…?とも自意識過剰気味に思ったが、すぐにその理由はわかった。琴音の存在だ。容姿や振る舞いが整っているせいで周りの目を引くらしい。本人もそれに気付いたのか、恥ずかしそうに下を向きながら歩いていた。
(毎日こんな感じだと大変だろうな)と琴音には申し訳ないが他人事のようにそう思った。
そこに気を取られていたからだろう、颯斗は周りを見ていなかったせいでちょっとした段差に躓いた。
余りにも突然のことで頭が働かせるのが遅れてしまった。
「っ…!」倒れ込むことを覚悟して歯を食いしばったが、なんらかの後ろからの力が加わり、倒れ込むことはなかったが、逆に思わず頭から倒れるところだった。
「ごしゅ…大丈夫ですか!!」助けてくれたのは言わずもがな琴音だった。
「ありがとう、助かったよ」
礼を言いながら顔を上げたとき、数メートル先で立ち止まっている生徒と目が合った。
こちらを見ており、こっちが視線を送り返すと軽く睨むような目つきで見た後、目を逸らされた。
胸の奥に、嫌な予感が落ちてくる。
――ああ、見られたな。
どうすれば怪しまれることなくこの状況を説明できるだろうか、そう考えた颯斗はある一つの案が思いついた。が、それが現時点において得策どうかはわからなかった。
(こうなったらもうどうにでもなれだ!)
颯斗は周りに違和感を持たれないくらいの大きい声で、
「葉月のお陰で転ばずに済んだよ。たまたま通りがかってくれなかったら本当に危なかった。」と伝えた。
琴音が不思議そうな顔をしたので、さりげなく顔を近づけ、「合わせてくれ」と耳打ちした。葉月は目を見開いた後、小さく頷いた。
再び葉月に向き直り、「葉月は怪我をしてないか?もし何かあったら言ってくれ。俺のせいで葉月が怪我をするのは心苦しいからさ」と続けた。
葉月は何故か顔を赤らめながら、
「ご無事でなによりです。大丈夫です!私に怪我はありませんので」と慌てながら言った。
「そうか、それなら良かった。本当にありがとうな」と一通り他人行儀なやり取りをして、学校へ向かった。
歩くのを再開した颯斗はとあることを思い、授業休みに声をかけ、昼休みに葉月を呼び出すことにした。
投稿が遅くなってしまい申し訳ありません!
忙しくて失踪しかけてました…。
待っていてくださった方、本当にありがとうございます!
また遅くなってしまうかもしれないのですが、感想やアドバイスを書いて気長に待っていていただけるとありがたいです!




