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体調不良とメイド

最悪だ、と透野颯斗(とおのはやと)が思ったのは目が覚めて間もない時だった。

頭痛と倦怠感に襲われた起床は気分が良いものではなく、覚束ない足取りでリビングへ向かった。一人暮らしなので看病してくれる人などおらず学校への連絡と棚から薬を取ったらすぐに横になろう――そう思ってドアを開けると、そこにはメイド姿の美少女がいた。

(あぁ、幻覚か…)そう考えた矢先、どこかで見たことある顔だと気づくとそちらに思考が回った。

しかしその思考を停止させるかのように体調が悪化した。いよいよ立つことすら許されず、その場に倒れ込んだ。その美少女が駆け寄って必死に声を掛けてくれたが、耳に届くこともなく意識を手放してしまった。



目が覚めるとベッドの上だった。

少し治った頭痛と共に先ほどの光景が思い出された。「あれは夢だったのか…?」そう独り言ち、薬と連絡をしようと思い自室のドアを開けた。リビングに向かうと――先ほどの夢にいたメイド姿の美少女がいた。

「あぁ…幻覚を見るほど重症らしい…」そう呟き、顔を洗いに行こうとした瞬間、

「いいえ、幻覚ではありません」

聞き覚えのある声と衝撃の内容に声のした方を振り向くと、そこには葉月琴音(はづきことね)がいた。葉月琴音はクラスメイトで、整った容姿と誰にでも優しい性格から学校では「学園の聖女シスター」というあだ名で呼ばれている。

(今思うと、聖女ってなかなか中二っぽいよな)

颯斗は目の前にいるメイド姿の美少女もとい琴音について思い巡らせていた。

そんなことより、と颯斗は琴音に尋ねた。

「なんで葉月が俺の家にいるんだ?やっぱ夢?」

葉月は呆れた態度を隠しもせず溜め息をつくと颯斗に近づき、

「こうしたら分かりますか、ねっ!」と言い放ち、颯斗の頬を遠慮なく引っ張った。

「ちょぉぉぉ!とれる、ほっぺとれるからぁぁぁぁ!」

「寝惚けているようので私なりに起こしてあげているのですが?」

「起きましたはい!起きましたから!いひゃいって!」

「あら、そうですか」

そう言うと、葉月はほんの少し残念そうに手を離した。

「あー…痛ってぇ……んで、結局何でいるんだよ?」

「その前にご主人様、体調は大丈夫なのですか?」

「ご、ごしゅ…?うん、まぁ決して良くはないけど今は大丈夫かな。完全にアドレナリンのせいな気がするけど」

葉月は少し微笑み、安心したように言った。

「それは何よりです。では、私がなぜこの家にいるか、ですね。それは端的に言えば“雇われた”ということです」

「めちゃめちゃ簡潔だな。でも申し訳ないけど雇った覚えてはないんだが?」

「ええ、そうでしょう。何せ私を雇ったのはご主人様のお父様のご意向ですから」

「父さんが?なんで?」

「なんでも1人暮らしは流石に不安になってきたそうで」

「そんなまた急に…」

というのも颯斗の両親は仕事の都合で海外にいるため一人暮らしをしていた。

「なるほどな。」

「ご理解いただけましたか?」

「あぁ、それは分かった。分かったんだが…」

「?」

「なんで葉月なんだ?普通こういうのって専業の人がやるものじゃないのか?」

颯斗はアニメやドラマで出てきたメイド像をなんとなく想像した。

すると今までの空気が嘘のように凍りつき、

「それは職業差別、と捉えてよろしいのでしょうか」

絶対零度の視線と声色で琴音が問い詰める。

「いや!違うから!あくまでイメージの話だって!」

颯斗は焦りから慌てて弁明する。

すると葉月は先ほどの態度とは打って変わってにこやかに笑い、

「なんて言ってみました。冗談です」

と言った。颯斗は安堵の表情を浮かべ、

「よかった…」と呟いた。

(葉月ってこんなキャラだっけ…?)

颯斗は疑問に思いながら目の前にいる美少女を見つめながら、

「そんな悪い意味じゃなくて、純粋な疑問だよ」

と、早くなった鼓動を落ち着かせながら言った。

すると琴音は頬を赤らめながら慌て始め、

「そっ!それは…えっと…なんでもです!気にしないでください!」とこちらから視線を外しながら大きな声で答えた。

「えっ、まぁ深掘りされたくないって言うならこれ以上聞かないけどさ」

これからお世話になるのにそこは不透明なのか、という続きは胸の奥にしまった。

「ご配慮ありがとうございます。では改めまして」

琴音は颯斗の方を向き直り姿勢を正した。

「これからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく…というかお世話になるのは俺のほうな気がするけど」



こうして颯斗と琴音の不思議な関係は始まった。

こんな感じで連載していこうと思います。

ペースが遅いかもしれませんがご了承ください。

少しでもいいなと思ってもらえたら嬉しいです!

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