村での一幕
ゼロの超越のスキル効果を知ったリアとララは
村長に報告の為村の中央にある村長の家に来ていた。
村長「ふぉっふぉっふぉ、あの叫び声はそういう事じゃったか」
リア「あ、ゼロさんの叫び声聞こえてましたか?」
村長「うむ、多くの者が肩をビクつかせ驚いていたよ」
リア「あ、あはは…」
ララ「とにかく、彼はスキルこそ特殊ですが、悪い人ではないです」
村長「うむ、二人がそう言うのであれば信じようじゃないか」
リア「ありがとうございます!村長!」
しかし村長は何かを考えてる様に眉を顰める。
リア「村長?」
村長「ん?おぉすまんすまん、ボーっとしておった」
ララ「何か…気がかりな事でも?」
村長「超越スキル、それが何故彼に開花したのか…」
リア「でもゼロさんは喜んでましたよ?」
村長「喜んでおったのか?」
リア「戦闘狂の俺にぴったりだ!とか言って」
ララ「事実ロケットラビットの大群と戦ってる時笑ってましたしね」
村長「なんと…」
村長「まぁともかく、彼には恩があるのだ」
村長「彼が村に留まる間、二人の家に泊めてあげておくれ」
村長「それと出来る範囲ならば、必ず叶えると伝えておくれ」
リア「はい!分かりました!」
リアとララの二人が家に戻ると、ステータスと睨めっこしてるゼロがいた。
ゼロ「うーん…むむむ…」
リア「ゼロさんどうかされたんですか?ステータスをじっと見つめて」
ゼロ「いや…この職業って所が気になってさ」
リア「え?職業ですか?」
ゼロ「うん、ここなんだけど」
ララ「あら、そんな所弄れるなんて初めて知ったわ?」
ゼロ「え?普通ここって弄れないんですか?」
ララ「えぇ、基本職業というのはその人がつく仕事で変わるのよ」
ララ「だからゼロくんみたいに自分で弄れる人は初めて」
ゼロ「とはいえ、今ある職業盗賊と格闘家だけなんですよね…」
ララ「え?剣士とかの基本職は?」
リア「あ、本当だ、二つしかないわ」
ララ「え?おかしいわね」
基本職とはこの世界に四つの職業らしい、剣士、盗賊、魔法使い、狩人。
例えば城の兵士なら剣士、山賊なら盗賊、国に仕える魔法使い
狩りを生業としたときに狩人などなど、その人物によって変わるらしい。
リア「格闘家なんて職業初めて聞きましたね」
ゼロ「あ、やっぱりそうなんだ」
リア「はい、少なくとも王国でもこの村でも聞いた事ないですよ」
ゼロ「まぁ今は未設定でいいや、問題無いみたいだし、うん」
ララ「そうだゼロくん、考え事が終わったなら丁度いいわ」
ゼロ「え?何かあったんですか?」
ララ「ゼロくんはこれからどうするつもりなの?」
ゼロ「あ、そういえば俺に頼もうとしてた仕事解決しましたね」
ゼロ「この世界の事について何も知らないからなぁ」
リア「それなら、この村に歴史をまとめた本がありますから」
リア「それを調べる間、村に滞在するというのは?」
ゼロ「え?でもずっと家に泊めてもらう訳にはいかないよ」
ララ「いいのよ、これくらいでしか恩返し出来ないから泊まって?」
ゼロ「うーん…分かりました、ならお世話になります」
その後早速歴史をまとめた本を借りにある家に行く途中。
?? 「おう!英雄の兄ちゃん!目ぇ覚ましたかい!」
ゼロ 「英雄の兄ちゃんって…俺?」
?? 「ガッハッハ!それ以外誰が居るってんだ!」
ゼロ 「英雄なんて呼ばれた事ないので慣れないんですよ」
?? 「この村にとっちゃ兄ちゃんは英雄よ!ありがとな!」
ザガン「おっと、自己紹介してねぇな!俺はザガン!鍛冶師だ!」
ゼロ 「ゼロです、調べものの間リアさんのお宅にお邪魔します」
ザガン「そうか!なら恩返しの機会もまだありそうだな!」
ゼロ 「気にしなくてもいいんですけどね、俺としては」
ザガン「そうはいかねぇさ!なにせ不出来なナイフで戦わせちまったんだからな…」
ゼロ 「不出来って…あのナイフの事ですか?」
ザガン「おうよ、なにせあれは急ごしらえ、今使えるもんで作ったもんだからな」
それであれだけの切れ味なら十分なのではないかと思うゼロだが
職人のプライドという物があるのだろうと黙っておくことにした。
鍛冶師というザガンの工房には武器が多く飾ってあった
ザガン「興味あるかい?」
ゼロ 「沢山種類あるんですね、剣だけじゃなくて刀、槍、手甲まで」
ザガン「どれもこれもこの数日で打ったもんよ、兄ちゃんのお陰で仕事再開出来たからな!」
ザガン「ほれ、これ持ってみな」
ザガンが渡して来たのは店頭に置いてあった剣の一本だった
ゼロ 「両刃の剣…結構重いですね、鉄?」
ザガン「錬金と鍛冶は密接な関係でな、腕を磨けば色んな事に仕えるのが錬金よ」
~職業取得通知~
剣士、大剣士の職業を取得しました
ゼロ 「ん??」
ザガン「どうした?」
ゼロ 「すみません、この剣振ってみていいですか?」
ザガン「いいが、剣士の職業持ちじゃねぇと振れねぇぞ?」
ザガン「裏手に試し切り用のカカシあるぜ」
裏に行くとそこには鉄製の訓練用ダミーが置いてある
ゼロ 「さっき、剣士の職業持ちじゃないと振れないって言ってましたけど」
ザガン「言葉通りの意味だ、剣士は剣、狩人は弓、盗賊は短剣、魔法使いは杖」
ザガン「そんな風に使える武器が限られてんのさ」
ゼロ 「修行して覚える、なんて事は?」
ザガン「いや、出来ねぇ、そいつの職業に応じた武器じゃないとダメだ」
ザガン「武器の強さを発揮できない所か、持つのも一苦労だ」
ゼロ(剣を持った時剣士の職業を取得した、盗賊の職業はあのナイフを持った時か)
ゼロ(格闘家ってのは恐らく最初にロケットラビットと戦った時だな)
ゼロは職業を剣士に変更し、剣を振るう
ゼロ 「へぇ…?」
ザガン「て…鉄だぞ、そのダミー」
鉄の訓練用ダミーが真っ二つに切れたのだ
~超越スキル効果解明~
武器種制限の解除:全ての武器を使用可能
手にした武器によって最適な職業を取得する事が出来ます。
ゼロ「武器種制限の解除?武器効果無効化の代わりか?」
どれだけ強力な効果を持った武器を持っていてもステータスは変動せず
その武器の元々の切れ味、超越した時点で使える身体能力
それのみで今、鉄の訓練用ダミーを斬れる程の力になってるという事だ。
ゼロ 「ロケットラビットの1.5倍のステータスプラス武器性能か」
ザガン「お前さん…とんでもなかったんだな」
ゼロ 「いえ、どちらかと言えば凄いのはこの剣ですよ」
ゼロ 「あれだけ力任せに振ったのに刃毀れ一つしてない」
ゼロ 「これでなければ恐らく…剣の方が折れていた」
ザガン「お前さんにそう言ってもらえると自信になるってもんよ!」
ザガンの工房を離れ、本来の目的だった歴史書を見に書庫へ向かう
?? 「いらっしゃい」
ゼロ 「こんにちわ、すみませんララさんにここに行けって言われたんですが」
スワレ「聞いてるわ、私はスワレ、宜しくね?」
そこには魔女の衣装に身を包み、妖艶に笑う女性が居た
スワレ「なんか…意外そうな顔してるけど」
ゼロ 「錬金とはかけ離れてそうな衣装だなぁと」
スワレ「素直ね、そういう子好き」
ゼロ 「実際錬金とかするんです?スワレさんって」
スワレ「しないわ、だってスクロール専門だから」
ゼロ 「ですよね」
スワレ「まぁとりあえずはいこれ、歴史書」
ゼロ 「ありがとうございます」
この世界で主に交易の主柱となってる国は四つ
東の大国鬼灯、西の大国アガメス、南の大国メイサル、北の大国アキュス
そしてこのステラト村は西の大国アガメスの領地になるという事だった。
以前は四つの大国でいがみ合っていたようだが、魔王出現の際に和解を果たし
魔王討伐後も関係は続き、良き友、ライバルとして共存しているらしい。
ゼロ 「あらぁ~ありがとう魔王様、貴方のお陰で平和な世界です」
ゼロ 「とはいえ魔王と戦った?にしては人のレベル低いよな、平均30程度って」
ゼロ 「永遠のレベル1が言えた事じゃないけど、低いよなぁ」
スワレ「魔王と戦ってレベルを上げたのは勇者一行だけだからね」
ゼロ 「あ、やっぱりいたんですか勇者」
スワレ「えぇ、今の時代に勇者も魔王も居ないから関係ないけどね」
ゼロ 「でも勇者と魔王の戦いの事は書かれてないんですね」
スワレ「恐怖の象徴なのよ…あの戦いはね…」
それが人と違う力だからなのか、単純な恐怖から来る言葉なのか分からない
スワレ「ゼロ、貴方戦えるなら冒険者になったらどう?」
ゼロ 「冒険者?ギルドでもあるんですか?」
スワレ「書いてあった四つの大国にね、この村には支部も無いけど」
ゼロ 「冒険者になるとなんかメリットあるんですか?」
スワレ「少なくとも自分で稼いで生活出来る様になるわね」
スワレ「なにせ貴方、生産職はからっきしでしょ?」
ゼロ 「戦闘特化型の戦闘狂ですからね俺」
スワレ「生産特化型の戦闘狂も変だけどね…」
スワレ「冒険者は全大国に出入り自由なの、証明書を無くさない限りは」
スワレ「貴方がこの世界を見て回りたいなら、お勧めよ?」
ゼロ 「そうですね、少し考えてみますよ」
スワレ「暫くはこの村で色々見て回りなさいな」
ゼロ 「えぇ、そうします」
スワレと挨拶を交わし書庫を後にするゼロ
既に外は夕暮れに差し掛かる時間帯だった
リア 「ゼロさーん!」
ゼロ 「リアさん、どうしたんですか?」
リア 「いえ、調べものに熱中して時間忘れてるのかと思って迎えにです!」
ゼロ 「あはは…事実忘れてましたね」
リア 「集中力ありますよねゼロさんって」
ゼロ 「一つの事に集中した後はどっと疲れますけどね」
リア 「それだけ深く集中してるって事ですね」
他愛もない会話をしながらゼロとリアは家に帰る
日は落ち切り、夕食の時間になった。
ララ 「それでゼロくんは冒険者になる事も考えてると」
食卓を囲んでる時、スワレとした話を二人に話していた
ゼロ 「まだ決めた事ではないんですけどね、世界を見る事には興味があって」
ゼロ 「それにこの超越のスキルの事を知るのには、旅するのが一番かなと」
リア 「でも、別に無理して知る必要もないんじゃ…」
ララ 「そうね、なんならずっとここに暮らしてくれてもいいのよ?」
ゼロ 「いえ、自分の手で金を稼いで色んな所に自由気まま旅、やってみたかったんです」
ララ 「そう…そういう事なら止めないわ」
リア 「で、でもでも!冒険者になるの大変ですよ?!」
リア 「レベルが1から上がらないから、厄介な人に目をつけられる事だって」
ゼロ 「まぁ確かにそれはあるかもしれないけど、それもまた楽しみ方次第だよ」
ゼロ 「それにすぐに行く訳じゃないんだ」
ゼロ 「まだこの村で試してみたい事があるからね」
リア 「あ、そうなんですか…良かった」
食事の後、ゼロは借りた部屋に入り考える
この村の防衛機能が無い事、木の門と木の壁のみな事を
ゼロ 「武器を持てばそれに応じた職業が…錬金とかは何持てばいいんだ?」
そんな事を考えてる内に、いつの間にか眠りに落ちていくのだった。