ようこそ君の独壇場へ
リアに導かれてゼロはある村の門前に辿り着く。
リア「到着しました、ここが私が暮らす村のステラト村です!」
ゼロ「ステラト村?」
リア「昔の人が、星の最果てって意味でこの村にそう名付けたそうです」
リア「夜になると星が煌めいて、本当に綺麗なんですよ!」
ゼロ「成程、そういう意味があったんですか」
その時「リア!」そうリアの名前を呼ぶ声がする。
リア「あ、お母さん…」
リア母「貴女!また村の外に出てたの?!危ないから駄目って言ったじゃない!」
リア「ご、ごめんなさい…お母さん」
リアの母はリアと同じ茶色の髪をポニーテールにし、同じ翡翠色の瞳をしていた
リアの母がゼロに気付き、申し訳なさそうな顔をして話始める。
リア母「申し訳ありません旅の方、お見苦しい所をお見せしました」
ゼロ「いえいえ、子を心配なされてるだけと分かりますから大丈夫ですよ」
ララ「リアが連れて来たという事は何か考えがあるのでしょう、私はララと言います」
ゼロ「ゼロと言います、街への願い事を伝えて欲しいと言われて来ました」
ララ「え?!そんな危険な事をわざわざ…」
ゼロ「危険な事?そんなに?」
ララ「そんなにって…知らないのですか?」
リアとゼロは顔を見合わせる。
リア「お母さん、彼はロケットラビットを倒せる人よ?」
ララ「そういう問題ではなくなってしまったのよ、リア」
リア「え?それってどういう事?」
ララ「ロケットラビットの大量発生が起こったの…」
リア「え…?」
ゼロ「ロケットラビットの大量発生?」
ララ「はい…この村には戦える人が居ないので、村を捨てると…」
リア「そんな…」
その時、ララの表情が強張るのを見たゼロ。
ゼロ「ララさん?どうかしまし…た…あぁ…」
ゼロが後ろを振り向くと、大量のロケットラビットが居た。
リアは恐怖が滲んだ声でゼロに向かって話す。
リア「ゼロさん…逃げてください」
ゼロ「え?」
リア「ゼロさんなら、多少強引にでも逃げられますよね?」
リア「私が…頼んでしまったから危険な目に…」
ララ「私達は門を閉じて、なんとか凌ぎますから!」
彼女達の目には決意が宿れど、怖さを隠せていない
だがゼロはその時、違う感情について考えていた。
ゼロ「門兵さん、そのナイフ、貸してくれない?」
門兵「いやこんなナイフあったって無理です!お逃げを!」
ゼロ「はーやーくー」
門兵「これを使って逃げて下さいね!」
ゼロ「ありがとう」
ゲームをやってると、皆興奮を覚えないだろうか
新しい街に来た興奮、強敵を倒した高揚、新しい武器に目を輝かせ
さぁ次の街まで頑張るぞ、次の強敵も倒すぞと、思わないだろうか。
ゼロ「おっかしいなぁ…数だけ見たら絶望なのに…」
ゼロ「楽しいなぁ…」
この世界がゲームなのか、それとも現実なのか分からない
だがどうでもいい、ただ今この時やるべき事は一つだけだ
皆が俺をこう呼んだ、戦闘狂、バーサーカーと
死がどれだけ近づこうとも、生がどれだけ遠のこうとも。
ゼロ「んじゃいっちょ…楽しみますかぁ!」
ナイフ一本を左手に携えて、ロケットラビットの群れに突撃する。
最初の一体の突進に合わせスライディング、すれ違いざまに斬りつけ
右手で体を持ち上げ低空で突進して来るラビットを避ける
左右から来るラビットは体を後ろにのけ反らせ同士討ちさせ
次から次に突進して来るラビットを打ち落とす。
リア「す…凄い…」
門兵「な、なんだあの動き…あんな動き、人間が出来るものなのか?」
ララ「あの子…笑ってるわよ?」
ラビットの突進に合わせて右に避け左手でナイフを上に切り上げ
ナイフを逆手に持ち替えて後ろから来るラビットの脳天に刺す
ゼロ「人が出来る動きかこれ…やべぇな俺…はは!」
ゼロ「でも、ここでなら出来る、ここだから出来る!」
ゼロ「この世界でなら…俺は!」
ゼロ「Willing to Die!(死をも厭わず)楽しもうか!」
ロケットラビットの特徴は攻撃が単調だという事
同時に攻撃してきたとしても直線的、軌道を読めば避けられる
突進に合わせて横に回り込み斬り下げて、下に潜り込み突き上げて
ロケットラビットの数を確実に減らしていく
ラビットが前後左右の四方向同時攻撃を仕掛けてくる。
ゼロ(高さを変えて来てる、足と喉元か、知能があるって事だ)
ゼロ「だがそれじゃあ…」
ゼロ「この高さで避けられる」
体を後ろにのけ反らせ膝が空を向くタイミングで軽くジャンプする
体を右方向に捻る、着地までに体を地面に向ける為だ
右手を地面にあて体が地面に落ちる前に体勢を整える。
ゼロ「どうしたウサ公、終わりか?」
ゼロ「それじゃあこっちから行くぜぇ!」
どれくらいの時間戦っていたのだろうか
もうそんな事覚えてもいないし、数えてる訳もない
ただ覚えてるのは、戦ってる最中の高揚感のみ。
ゼロ「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
最後に立っていたのは、ゼロだった
ゼロ「はぁ…はぁ…やっと終わったか…」
その言葉を最後に、ゼロは大の字に倒れる。
リア「ゼロさん!大丈夫ですか?!ゼロさん!」
リアの声がかすかに聞こえたが、意識は深い眠りに落ちて行った。
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ゼロはとあるベッドの上で目が覚める。
ゼロ「あれ…ここは…」
リア「あ!ゼロさん!起きましたか?」
ゼロ「リアさん…?俺、寝てたのか」
リア「はい、ロケットラビットの大群と戦った後、倒れたんです」
リア「医者の話では、疲れがピークに達したんだって」
ゼロ「あはは…あれだけ戦ったの、初めてだからなぁ」
リア「初めてであれだけ出来るの凄いですけどね、本来は」
リアは苦笑いをしながらそう答える。
ゼロ「リアさん、ここは?」
リア「ここは私とお母さんの家です」
リア「ゼロさん、もう一週間も寝ていたんですよ?」
ゼロ「一週間?!すみませんそんな長い間」
リア「何言ってるんですか!謝る必要ありませんよ!」
リア「ゼロさんのお陰で、こうして平和に過ごせてるんですから」
リアが窓の外指差し、ゼロがそちらを向く。
ゼロ「あれ…こんなに人沢山いましたっけ?」
リア「王国からのお客さんですよ」
リア「詳しく話してなかったんですけど、鉱石が採れなくなったのは」
リア「あの大量のロケットラビットのせいだったんです」
リア「なので、ゼロさんが全て倒してくれたからお仕事も再開出来て」
リア「こうして私達やその師匠の品を買いに来てくれたんです」
ゼロ「成程…そういう事でしたか」
その時、ララが部屋に入ってくる
ララ「あらゼロくん、起きたのね」
ゼロ「ララさん、すみません一週間もベッドをお借りして」
ララ「気にしないで頂戴、恩人なんだものこれくらいはね」
ララ「貴方のお陰で私もお仕事再開、交易路も復活でね」
ララ「村に活気が戻って来たの、ありがとう!」
ゼロ「交易路もロケットラビットに塞がれてたんですか?」
ララ「あれだけの数だからね、王国の兵士でも何十人犠牲になるか…」
その言葉を聞いて、ふとゼロは疑問に思った事を聞いてみる
ゼロ「あのララさん、ロケットラビットって弱い魔物ですよね?」
ララ「何言ってるの?!ロケットラビットはレベル60よ?!」
ゼロ「リアさんレベルって?」
リア「えぇ?!知らないんですか?!」
リア「レベルはその人の実力を表す数値ですよ」
リア「レベルが上がれば上がるほど身体能力も上がるんです」
ゲームみたいな世界だと思ってたが、レベルの概念があるらしい
ゼロ「あの…人間の平均的なレベル数値って?」
ララ「そうねぇ、高くても30じゃないかしら」
ゼロ「ロケットラビットの半分ー?!」
リア「そ、それはそうですよ、皆危険を避けますから」
ゼロ「あ、言われてみればそうですね」
ゼロ「ちなみに自分のレベルって何処で知れます?」
ララ「ステータスオープンって念じれば出ないかしら?」
ゼロ「ステータスオープン?」
その言葉発した途端目の前に青いモニターの様なものが現れる
ゼロ「わぁお、凄いゲームだぁ…えっと、どれどれレベルはと…え?」
リア「どうしたんですか?ゼロさ…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」
ララ「レ……レベル…1?」
リア「レベル1なのに、ロケットラビットの1.5倍くらいのステータス…」
ゼロは超越のスキル効果を確認する
~超越スキルの効果解明~
レベルが上がる事が無くなる、アイテムの使用でステータスが強化されなくなる
武器の特殊効果、防具の特殊効果も無効化されステータス強化が適用されない
アクセサリーの特殊効果無効化、ポーションなどの一時バフも無効化
スキルの保有者が心の底から戦闘を楽しんだ時のみスキル効果発動
永続的に相手の1.5倍のステータスを得る
ゼロ「な……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ゼロ「戦闘狂の俺にぴったりだ!」
リア・ララ「喜んでただけ?!」
その叫びに村人も商人もこぞってビックリしたのを知るのはもう少し先