砂漠の国へ
数日後、空は晴れ渡っていた。
孤児院の中庭、グリは小さな荷袋をくちばしにぶら下げていた。
ミラはその前に立ち、両手でグリを包むようにそっと抱きしめた。
その目には、また涙がにじんでいる。
グリが「マッテル、カナラズ、モドル」と言った。
それは主人公の言葉だった。ミラには、グリの中にあの声がまだいると信じられていた。
レオナが静かに車椅子で近づき、ミラの肩に手を添える。
「大丈夫よ。彼——神獣様なら、きっと戻ってくるわ。」
ミラは何度も頷きながら、最後にグリを空へと送り出した。
グリは羽ばたき、森の方角へ飛び立った。
——目指すは、灼熱の砂漠の国『バルハッド』。
セリアと再び合流するため。 そして、新たな魔王軍の幹部と向き合うために——。
グリは森を進んでいった。
しかし、やがて地面が揺れた。
低い唸り声。木々の影から現れる、屈強な腕と醜い顔。
「……オオム……? クエル……?」
獰猛な牙を剥いたオークたちが、グリの前に現れた。
四方を囲まれ、グリはピクリと首をかしげる。
「……マズイ?」
オークたちは棍棒を振り上げ、唸り声をあげながら迫ってくる——!
オークたちがグリに迫ったその瞬間——
「炎槍・紅蓮裂波!」
空間が一気に焼き上がるような轟音と共に、巨大な炎の槍が森の中を駆け抜けた。
数秒後、地鳴りのような爆発音と共に、オークたちはまとめて吹き飛ばされ、あっという間に灰となって消えた。
グリは「アチチ!」と叫びながら、ふわりと宙に飛び上がる。
その頭上から、軽やかな足音と共に、一人の少女が姿を現した。
「神獣様~、おひとりですか?」
緩やかな笑顔を浮かべて、杖を抱えた見習い召喚士——セリアだった。
グリの目がぱちくりと見開かれ、次の瞬間、ばさばさと羽ばたきながら彼女の肩へと飛び乗った。
「セリア! セリア!」
「はいはい、元気そうで何よりです♪」
セリアはグリの頭を優しく撫でる。
再会の喜びが静かに、でも確かに森の中に広がっていた。
「神獣様がいないと、なんだか調子が狂うんですよね。ほら、私って一人じゃちょっと不安で……」
「フアンデー!」
「……そこは繰り返さなくていいです!」
二人は再びそろった。




