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第一話 「アンタを好きになってくれる人」

咲良

「ねぇ…あんたは自分が思ってるより

ずっとずっとかっこいいんだよ?」


旅の山中、満天の星空の下

焚き火を挟んで咲良は言った


留八

「そうかなぁ?」


咲良

「うん…アンタは誰よりも優しくて

本当は素敵な男なんだよ、みんながバカにしたって姉ちゃんは分かってるんだ…

アンタのいい所を分かってくれる人がいつか必ず現れるさ…」


留八

「それじゃあ留ちゃんにもいつかお嫁さんが出来るかなぁ?」


咲良

「絶対に出来るさ…

もしアンタを好きだと言ってくれる人が現れたら

こう言うといいよ…」


そう言うと咲良は優しく笑いながら

そっと口を開いた…



【私だけの好きの言葉 -留八の恋-】


それは自分だけが知っている

人々から馬鹿にされる男の本当の魅力のお話

私だけにしか言っちゃダメだよ…?

泣きながらそう言った女侠客と人からバカにされ続けたある男の話


この御伽話はある街から始まる…




留八

「うわぁ!凄く綺麗です!」


遊郭に足を踏み入れたどこか風変わりな男

【留八】

辺りを見回し煌びやかな街並みに目を輝かせていた

ここは遊郭、華やかさと男と女の夢が灯る場所


留八

「お腹が空きました…

姉ちゃんが言ってたお店はどこかなぁ…?」


留八が辺りをキョロキョロ見回しながら歩いていると


慌てた男

「どきやがれ!!!」


大声をあげながら一人の男が走ってきた


留八

「はい?なんですか?」


慌てた男

「いいからどけってんだ!!」


すると向こうから声が聞こえた


絹羽

「そこのアンタ!

そいつを止めておくれ!!」


慌てた男

「うわっ!!来やがった!!

おい!テメェ!そこをどけ!」


慌てた男は留八に掴みかかった


慌てた男

「えっ?」


慌てた男はいつの間にか宙を舞い

留八から押さえ付けられた


慌てた男

「離しやがれ!!」


留八

「でも、あの人が止めてくれって言いましたから…」


そこに慌てて一人の女侠客が若衆を引き連れやって来た


絹羽

「ありがとうよ

そいつはウチの店でイカサマをして逃げたんだ

捕まえてくれて助かったよ」


留八

「イカサマ?なんですかそれ?」


絹羽

「ん…?

アンタ、ひょっとしてイカサマを知らないのかい?」


留八

「はい!」


絹羽

「変な人だね、イカサマってのはズルをして勝負に勝つ事だよ」


留八

「ズルですか、それはいけないですね

ダメですよ?そんな事しちゃ」


慌てた男

「うるせえ!!いいから離せよ!!」


絹羽

「黙りやがれ!!

ウチの店でイカサマしてタダで済むと思ってたのかい?

アンタ達!連れていきな!!」


そう言うと絹羽の後から付いてきていた屈強そうな若衆達が慌てた男を引きずりながら連れて行った


慌てた男

「うわぁぁぁ!!許して下さい!!

もう二度としませんから!!」


若衆

「騒ぐんじゃねぇ!!

ウチでイカサマなんぞしやがって!

どうなるか分からせてやるよ!

いいから来い!!」


絹羽

「全く…ウチの店でイカサマするなんざ100年早いよ

ねぇアンタ、本当にありがとうね

お陰でイカサマ野郎を捕まえる事が出来たよ

アンタには何かお礼をしなくちゃいけないね」


留八

「お礼なんていいですよ

それよりも扇屋ってお店を知ってますか?」


絹羽

「扇屋?それなら私がやってる店だけど?」


留八

「本当ですか?

良かったです!留ちゃんはその扇屋さんを探してたんです!」


絹羽

「ウチを探してたって?どういう事だい?

ウチは博打もやってる遊郭だよ?

言っちゃ悪いけどアンタみたいな人が来るような店じゃないと思うけど…」


絹羽はみすぼらしく

どこか抜けている雰囲気の留八を見てそう言った


留八

「姉ちゃんがこの土地の扇屋さんを訪ねろって言ったから

扇屋さんを探してたんです!」


絹羽

「アンタの姉ちゃんが私の店を訪ねろって言ったのかい?

姉ちゃんの名前は?」


留八

「咲良っていいます」


絹羽

「咲良!?

もしかしてアンタの姉ちゃんって背中に桜の刺青をしてないかい?」


留八

「そうです!咲良姉ちゃんです!

留ちゃんは咲良姉ちゃんの弟です!」


絹羽

「えぇ!!

アンタが留八かい!?

咲良は私と五分の兄弟分でね

二人で色々ヤンチャしたもんさ

私がこの土地で一緒に店を構えないかって話をしたら

親から売られて奉公に出された留八って弟がいて

その弟を探して旅に出るから帰って来たら一緒に世話になるからって一人で旅に出たんだ

そうかぁ…見つける事が出来たんだねぇ

ところで咲良は?

アンタと一緒じゃないのかい?」



そう言われると涙を浮かべながら留八の口が開いた



留八

「姉ちゃんは…お空に行きました」


絹羽

「え…?」


そう言うと留八は泣きながら膝をついた



第二話へ…






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