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7 ミッション 娘っ子を守れ!

 さて、ここからが正念場さね。


 わたしらの役目は娘っ子を守り通して、この王城から外に出ること。


 密かに気合を入れて、わたしらは目の前にいるやつらを見据えていた。

 ……おっと、言葉の綾ってやつさ。

 実際はオドオド……とはしちゃーいないけど、おとなしく並んで立っていたとも。


 それにしても、やっぱりこの司令官はバカなんじゃないかと、わたしは思うね。

 なんで近隣に知れ渡っている『噂話』なんてものから話し出すのかね。

 その言葉を聞いた娘っ子は小さく舌打ちをして「ケッ」と吐き捨てた。

 可愛らしい悪態に、わたしの頬は緩みそうになって、口をギュッとした。

 なんとか神妙そうに見える顔で話を聞いていた。


 王族がかけた『重税』のことも『今更』な話なので、割愛してくれりゃいいのに。

 そう思ったけど、普通の使用人じゃあ『知らない話』だと気がついた。


 改めて気を引き締めて、司令官の言葉に耳を傾ける。


「そういうことで、この諸悪の根源である王女がどこにいるのか知るものはいないだろうか」


 そう言われて、つい周りの様子を伺ってしまった。

 どうやらこれは正しい行動だったようで、他の者も困惑したような顔で様子を伺っていた。


 さりげないアイコンタクトで誰が口火を切るか決めた。

 ここはやはり最年長のギムに任せるのがいいだろう。


「あんの、一言よろしいですじゃろか」


 この国の南の地方特有の訛りをいれて、ギムはおずおずと口を開いた。

 司令官は期待を込めた目をして発言の許可を出した。


「わしらは王宮の中でも下っ端ですがー、そんな王女様の話は知らんですわ」

「…… …… はっ?」


 数瞬動きを止めた司令官は訝し気に聞き返してきた。

 思った通りの反応をした司令官へ、ギムは呆れた目を向けながら口を開いた。


「わしらが知っとる話は、見捨てられた王女様の話ですじゃ」

「はっ? 見捨てられた?」


 司令官が茫然と繰り返した言葉にわたしらは大きく頷いた。


「そうですじゃ。国王様が戯れに手を出したメイドが懐妊し、王女様をお産みになったのですが、そのメイドが産後亡くなると、後宮の片隅に捨ておいたと聞いとります。哀れに思ったメイド仲間がこっそり育てたので五歳までは育ったそうですが、王妃にその存在を知られて、部屋を追い出されたそうですじゃ。じゃが、そんな小さい子ですからの、間もなく病で亡くなったとメイドが言うておりましたのじゃ」

「そ、そんな、ばかな。王女は生きていると、国王も王妃も言っていたぞ」


 司令官は動揺しながらも視線をさ迷わせる。

 そして、わたしの後ろに隠れるようにしている娘っ子を見つけたようで、軽く目を瞠った後、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。


「そこにいる者は、この中でも年若いではないか。その者が王女でお前達が王女を匿っていたのではないか」

「バカお言いでないよ! この子はわたしの娘さね。どこが王女に似ているというのさ!」


 やっと私の出番が来たと、胸を張って言ってやった。

 ついでに娘っ子を隠すように両腕を広げるパフォーマンスをしてやる。

 司令官は「ウッ」と言葉を詰まらせた。


「それにですねえ、おかしいと思わないんですかい。国王様の言葉に。その大切にしていたという王女様のお部屋をあなた様は検分なさったんですよね? 本当にその王女様のお部屋だとお思いになられましたんで?」

「何が言いたいのだ、お前は」


 司令官は気色ばんで、発言をした料理人のオーロのことを睨みつけるように言った。


「いや、こんな学のないわしらでも、おかしいと思うていることを、あなた様がお分かりにならないはずがないんですよ。いくら国王様が王女様を大切にしていたと言うても、居ない者のことをそれらしく取り繕えるわけがないんですよ。話に聞いた王女様は、確かに生きていらっしゃれば、この娘と同じくらいでした。ということは、この娘っ子くらいが着るドレスが、たくさんあるはずなんですよね。先ほどの話のとおりなら。なんせ溺愛されてそのことに調子に乗って、贅の限りを尽くしておられたようですからねえ。ですがね、王家にいる王女様方は亡くなられた王女様より、五年は早くお生まれになられていらっしゃるんですよ。まさか王家の者が発育不良ということはないでしょうから、そんなお小さいドレスがたくさんあるわけないでしょう」


 司令官はハッと表情を変えた。

 どうやら部屋を検分したようだけど、国王たちの言葉を鵜呑みにして、ドレス(・・・)のサイズ(・・・・)に注目していなかったみたいだね。

 いやいや、男なんてそんなもんだろう。

 実際に自分が贈ったドレスでもなきゃ、サイズなんてわからないだろうさ。


「それと、国王様が大切にしていた王女様はどのようなお姿をしていたのか、お聞きなさったんでしょうか。この娘のように亜麻色の髪に榛色の瞳をしていると言われたんでしょうか」


 オーロが司令官に追い打ちをかける。

 司令官は暫し考えているようだ。

 この国の王族は金髪とエメラルドのような碧色の瞳をしている。

 娘っ子は魔女に色を奪われたから、王族特有の色はしていない。


 さあ、次はどう出るんだい?


「魔法で色を変えることが出来るというが?」

「ハンッ」


 司令官の言葉にわたしゃ、小ばかにしたように鼻で笑ってやった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここから盛り上がるかッ!
[一言]  お、なんか短編の時のネタだ。
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