表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/13

3 見捨てられたメイドとその娘(王女)

 一応現在の王にも、尊敬……じゃあないね。

 う~ん、そうだねえ、認められること……でいっか……そういうものがあったのさ。


 それは何かって?

 それは平民には手を出さなかったことさね。

 色ボケだったけど、そこは選民意識のなせる業なのか、貴族と平民は違うものだと思っていたようで、手を出す価値がないとでも思っていたんじゃないかねえ。


 ああ、そうそう、言い忘れたけど、今の王も姿だけはとっても麗しくて、女性が憧れるに値する容姿をしていたよ。

 だから側妃になりたがる女性が絶えなかったんだろうね。


 だけど、側妃が増えたことで王族が使う費用が格段に跳ね上がっていったのさ。

 そんなことを王たちが気にすることはなかったけどね。


 そんな時に悲劇が起こったのさ。

 あんたも聞いただろ。

 ちまたに流れている噂ってやつを。


『その王国にはとても大切にされている王女様がいる。

 末の王女様はとても可憐で、国王は手中の珠とでもいうように、大切に大切に王宮の奥で育てている。

 王女の願いは何でも叶えてあげるのだ。

 贅沢をさせているのだ。


 そのために国王は国を傾けてしまった』


 そう、その噂の王女の母親になった、男爵家の令嬢が王宮に働きに来たんだよ。

 あの子は身分的にもメイド、下級侍女になったんだが、身分が低いことで他の侍女の下働きをさせられてね。

 侍女の下働きっていっても、本当の下働きと違って……えーと、なんと言ったかね、小間使い……そう、小間使いさ。

 侍女の仕事は王妃や側妃、その王女の身の回りの世話をすることだろ。それを用意するために走りまわされていたのが、その子さ。


 王が側妃たちのところに来る時には、顔を合わせないようにさせられていたんだけど、たまたま運悪く王と顔を合わせてしまったようでね。

 無理矢理寝所に連れ込まれたそうさ。

 そのあとは何とか逃げ回っていたそうだけど、ある日具合が悪くなって動けなくなったところを王に見つかってね。

 さすがに王も王妃や側妃たちの様子を見ていたから、その子が身籠ったことを察したようで、すぐさま部屋を与えて囲っちまったのさ。


 えっ? 

 王が自分の子だと思った理由かい?

 後宮というのは特殊なところでね、基本女しかいないのさ。

 例外は産まれた王子だけだろうね。

 その子も五歳になると王子宮に移ってしまうんだよ。


 それに王はあの子のことを探していたんだよ。

 後宮を出入りする者を見張らせていたのさ。

 あの子は上手く見つからないように隠れていたようだけど、後宮から出て行くことが出来なかったんだよ。


 そんな隔離されたところで妊娠したのがわかれば……王の子供でしかないだろうね。


 さて、あの子を見つけた王はあの子と交わろうとしたけど、周りから止められたね。

 妊娠している時に無理矢理そういうことをすれば子供が流れてしまうかもしれないだろ。

 臣下の者たちも、もしかしたらと期待したんだよ。

 こんどこそ王子が産まれるんじゃないかとね。

 だから、危険なことから遠ざけるために、王には新しい側妃があてがわれたのさ。


 ん? 

 あの子は側妃じゃなかったのかって?

 いや、あの子は側妃にはなってないよ。

 一応側妃になるには最低でも伯爵家の出でなければいけないらしくてね。

 だから……妾……かねえ。

 いや、そんな呼び方もされなかっていなかった。


 というのも、産まれたのが王女だと知った王はあの子に興味を示さなくなったのさ。

 あのあと入った側妃に夢中になっていたようだよ。

 ……ああ、そうそう、大きな声じゃ言えないんだけど、王妃と最初の二人の側妃以外はそれぞれ子供を一人しか産んでいないのさ。

 王も高官たちも王子を望んでいただろう。

 王女しか産まないのであれば、二人以上子供をつくる必要がないってことなのさ。

 で、そうすると新しい側妃が入ってくるんだよ。


 ただねえ、あの王女が産まれてから、そのあとの側妃に子供が出来ることはなかったのさ。

 いや~、女は怖いねえ。


 ……そういうことであの子とその娘は捨て置かれることになった。

 もともと用意された部屋も後宮の一番寂れた一角だったからねえ、どう思われていたのかも分かろうってもんじゃないか。


 ここでわたしら影の一族の長が思案してねえ。

 あの子の娘はそれでも王に認められた王女であるわけだ。

 立場的には弱いけど、逆に変に染まる心配はなさそうだろ。

 それならその王女に教育を施して、将来は王位につけたらいいのではないかと考えたのさ。


 まだ赤ん坊でしかないのに、何を考えているのだろうと思ったね。

 だけど長はあの子に接触させて、こちらの意図を伝えさせたのさ。

 あの子は聡い子で、娘の将来を危ぶんでいてね、だけどよく考えて出した答えは、娘を王位につけたくないというものだった。


 まあ、わからんでもないさ。

 わたしにだって子供がいるからね。

 あの子とわたしはちょうど十くらい離れていてさ、わたしも十年前と八年前に子供を生んでいたのさ。

 子供たちは夫と両親が世話してくれるから、こうして王宮にいることが出来るけど。


 伝え聞いた長は納得しなかったけど、それでも……あの子のそばに影の一族をつけることにしたんだ。

 ついた者たちは娘に教育をしていったそうだよ。

 娘は成長するにつれ聡明さがうかがえるようになっていったのさ。


 あの子は複雑そうな顔をして娘に教育が施されるのをみていたとさ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ここでつながっていくと・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ