13 やはり小細工はしておくもんだね
ふっ この幼女趣味野郎が!
てめえらはあの子にも娘っ子にも会わせるもんかい!
おっと、いけない。
つい荒ぶってしまったよ。
落ち着け、わたし。
それにしても、あの時の勘は当たっていたようだね。
娘っ子にいやな視線を向けていたわけが、娘っ子を女王にして自分は王配に収まろうと考えていたなんてさ。
幼女趣味の腹黒かよ。
きっと娘っ子を名ばかりの女王にして実権は自分が握ったんだろうさ。
それからやつらが私らの前に現れることはなかったのさ。
どうしてかって?
言っただろう。
わたしらの居場所は、わからないようにしたことを。
まずはわたしらの名前さ。
私の名前はベラじゃないし、娘っ子の名前もラリマじゃない。
王宮を出る時に書いた身を寄せる先は、夫のところになっていたけど、あのあとしっかり別のものにすり替えられたからさ。
親子の名前で探し当てたとしても、別の場所に辿り着くしかないだろうね。
あれから一年経つけど、本当に奴らはわたしらに辿り着いてないさ。
少しは期待したんだけど、あっちのそういうやつらはその程度だったようだね。
まあ、辿り着けても、よく似た他人ですまされたろうけど。
んっ?
んんっ?
あー、そんな不思議そうな顔をしなさんな。
ちゃんと理由を教えてやるよ。
一応細工をしてわたしらの居所がわからないようにはしたさ。
だけど、別にわたしらは王都から出て行ったわけじゃない。
住んでいるのは下町だけど、何かの拍子に顔を遭わす機会が無いわけじゃないのさ。
で、顔を会わせたとしても、他人の空似で通るだろうというのは、容姿が違うからさ。
まずはわたしだけど、わたしゃ王宮の下働きとして馴染むように、そういう器量に見えるようにしていたのさ。
これは魔法なんかじゃなくて……ええっと、化粧って言ったほうが近いかね。
肌の色を変える薬草を使ったのさ。
髪色も薬草で染めていたしね。
本来の姿に戻ったわたしは美人ではないけど、愛嬌のある顔をしているんだよ。
おや、同意してくれるのかい?
えっ?
十分可愛らしいって……。
やだねえ、こんなおばちゃんを褒めても何もでないよ。
ええっと、コホン。
あの子と娘っ子は、まずあの子の色をもとに戻したのさ。
あの子はもともと赤茶色……艶のある髪をしていて、瞳は濃いめの青だったんだよ。
で、魔女様があの子の色を戻すと共に、娘っ子の色を母親と同じ色にしたのさ。
なんでも父親のほうより母親の血筋の色が濃く出るように調節したとか言ってたね。
わたしにゃ、わからんけどさ。
そういうわけで、もし奴らと会ったとしても、他人の空似で通せただろうさ。
そうそう、それでも安心はできないだろう。
あの子には最強の長がついているからいいけど、あちこち動きたがる娘っ子には同い年位の子らが友達と称して、守りにつくことになったのさ。
次期長候補のジョンがその子らを纏めて、采配しているそうだね。
さて、こんなところかね。
他に聞きたいことはあるかい?
ん?
これからのことかい?
そんなこと、わたしに分かるわけないだろう。
わたしらがやることはあの子と娘っ子が幸せに暮らせるように、見守ることさ。
どっちにしろこの国は分割されたんだし、もう娘っ子には関係ないことだろ。
王家の血を引いているだけで、見捨てられた王女に後始末させようと考える方が、無理ってもんさ。
というか、公式には王女は亡くなっているんだ。
責任をおっ被せようとするんじゃないよ。
じゃあ、もういいだろ。
わたしゃ、いくよ。
ん?
なんだい?
最後に聞きたいことがあるって?
わたしらの名前?
そんなもんを聞いてどうしようってんだい?
ほぅー、本にして出版したい、と。
おいおい、何を蒼褪めているのさ。
ああ、わたしが一息でそばに来たことかい?
それともどこから取り出したのかわからなかった、これのことかい?
あんたさ、なんでわたしがここまで詳しく話したと思ってんのさ。
もちろん長に頼まれたのもあるけど、亡国となったとはいえこの国に愛着があるからに決まってんだろ。
本にするのはあんたの勝手さ。
だけど、やっと平穏に暮らせるようになった、あの子や娘っ子に迷惑かけようっていうのなら、いまここでバラすことも吝かでないさ。
そこは長も許さないだろうよ。
だからさ、勘違いすんじゃないさ!
わたしの脅しが効いたのか、聞き手の奴はこけつまろびつ逃げて行きやがった。
たくっ!
最後の台詞に虚を突かれなければ、もう少し締め上げてやったのに。
というか、これだけ言ってんのに、まだ分かんなかったとは。
言葉使いや言い方なんて、その時々で変えることなんて朝飯前ですわ。
潜入先次第で変えるのは、当り前ですわね。
それを「丁寧な言い方のほうが似合います」……なんてさ。
あれから何年が経ったかねえ。
月日が経つのは早いもんだね。
わたしもしっかりおばあちゃんになったものさ。
今日は娘っ子の結婚式だ。
わたしの家族も式に招待されたのさ。
花婿……緊張しているねえ。
ん?
あれはジョンではないのかって?
あんたも何年経っても、変わんないねえ。
そうさ、ジョンだよ。
……プップッ 学習したようだね。
そうさ、本当の名前じゃないさ。
ん?
これはなんだい。
わたしから聞いた話をまとめたものだって?
まずは亡国の成り立ちについてかい。
ほう~、第二段が王家の横暴……特異性についても書いてあるんだね。
第三段は如何に王家が滅びに向かったか、かい。
いいんじゃないのかい。
ところで、そちらの女性とお子さんは?
はっ?
あんたの奥さんとお子さんだって?
あんた、結婚してたのかい。
はっ?
もうすぐ親戚になるって?
わたしの娘んとこの子と、その子が婚約?
おい、まだ十にもなってないじゃないか。
早すぎるだろ!
ふざけんなー!




