表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/13

11 王家の秘密は貴重な魔法の使い手に変換された

 王宮を出たわたしは……いや、家に着いたらわたしは驚かされることになったのさ。

 家にはなんと、息子の嫁予定のお嬢さんと、娘の旦那予定の男が待っていたんだよ。

 二年の間なんにも知らされてなかったからね。

 わたしゃ、目を白黒させちまったのさ。


 本当はわたしが王宮に残ることになる前に、結婚の話は出ていたそうで。

 だけど、何があるかわからないからと、返事を保留にしていたんだと。

 結婚式にはわたしにいてほしいと、言われちまったい。


 戻ってきたばかりのわたしを泣かして、どうすんだい!



 王宮から我が家に戻って、その三日後にはわたしらは引越しをした。

 これは連合の奴らを警戒……じゃなくて、目をくらませるためさ。


 一応警戒するべきなのは司令官だね。

 最後に見たあいつの目が気に食わなかったのさ。


 まあ、あいつがこちらを訪ねてこようとしても、簡単には辿り着けないだろうけど、さ。

 わたしが書いた身を寄せる先は、仲間が入れ替えて別の場所になっているはずさ。

 あいつには娘っ子の名前を、偽名でさえ目の前で呼び掛けちゃいないし。

 それに訪ねてこられても、わたしが王宮で会った洗濯婦だとはわからないだろうね。

 わたしは王宮で働いていた時の変装をやめたからさ。


 それでも念のために棲み処は変えておくのは有りだろう。

 それに何といっても引越し先はあの子の家のそばになるからさ。

 こんなご褒美はないだろうさ。



 そうそう、そういえばこの話をしていなかったね。

 あの王家の髪と瞳に特別なもんがあるって話をさ。

 ほら、魔法使いが言っていたことさ。


 あの魔法使いはもともとこの国の者でね、歴史を習った時にある疑問が湧いたそうで、それを検証したいと常々思っていたそうだとか。

 たまたま仕事で接触したうちの者が、魔法使いの呟きを拾って長に届けたんだと。

 長はその報告に興味を抱いて、自ら魔法使いに接触したのさ。


 長と魔法使いは何が気が合ったのかわからないけど、意気投合したそうだよ。

 魔法使いのほうが、十歳以上年が上だったけどさ。


 そのうちに魔法使いから聞き出したのは、王族は何かの魔法を持っているのではないかと疑っていたんだ、とね。

 魔法使いが着目したのは、王族特有の美貌と光り輝くような金色の髪、それからエメラルドと間違えそうな輝く宝石のような瞳だそうで。


 そしてそういう考えに至った理由というのが、この国の成り立ちだというのさ。

 いや、成り立ちじゃなくて、この国が大国になった理由がおかしい……だったかね。


 この国の王……いや、王族は特に統治に長けていたわけじゃない。

 どちらかというと人の良い穏やかな人たちだったらしい。

 国民もそんな王家を敬愛していたそう。

 そんな穏やかな国に、いくら流行り病によって王族がいなくなったからといって、統治を頼むものだろうか。

 最初は助力を頼んだだけだったはずで……。

 それがどうしたら統治をお願いすることになるのだろう……と。


 そんな時に魔女様からある話が届いた。

 それが王女の色を奪うように依頼された、と。

 長は直ぐにこの話を魔法使いにしたそうで……。


 どうやったのか、魔女様が色を奪うところに立ち会ったらしい。

 いや、立ち会ったというと語弊があるねえ。

 隠れて見ていたという方が正しいか。

 そのあと魔女殿から『王家の色』を見せられて、疑惑が確信に変わったんだそうだ。


 この王家はすごく弱いけど『美貌に魅了の力』があり、『髪には増幅』の作用がみられ、『瞳には従属させる力』があったそうだ。

 四代前まではこの力は良い方向に作用していたのだが、三代前でおかしくなった。

 王の部屋から行ける隠し部屋にその理由らしいものが見つかった。

 どこぞの魔術師が書き残した魔導書があったのだ。

 内容から推察するに、邪な考えを持った者だったらしく、その当時の他の魔術師に力を封印されたそうだ。

 それを恨み悪質な思いを書き連ねた魔導書を残した。

 それがたまたまこの国の王家に渡り、三代前の王が好奇心から内容を読んで……悪意を植え付けられたみたいだ。

 疑心を持つようになった王は、周りを疑って心が休まらなくなり、安寧を得るために魔法誓約に手をだした。


 ということらしい。


 魔術師は『この王家の特異体質』を、平和のために役立てられないかと考えて、研究をしていった。

 その結果『神を崇拝させる』魔道具を開発した。

 発動させるためには『この王家の色』が必要ということを条件づけたそうだ。

 えーと、何だったかねえ……魅了を崇拝に変換させる……だったかねえ。

 それと先に魔道具に魔力を充填しておくんだったか。


 まあ、むずかしいこたぁ、わたしにはわからんわ。


 とにかくそういうことで、この国の王族は『貴重な魔法の担い手』ということにして、生かすことにしたんだと。

 もちろん今までのように王族として傅かれる生活じゃないからねえ。

 王や王女たちだけでなく王妃や側妃も魔力が多いから、死ぬまで魔力を提供することが決まったようでね。

 彼らからしたら、死んだ方がマシだと思うかもしれないね(悪意ある笑い)


 そんなことはわたしらには知ったこっちゃないけどさ。



 さて、そのあとのことだね。

 王国は分割されて、近隣諸国に併合されることになった。

 王宮に勤めていた下男下女は、だれ一人として王宮に再度勤めようとしなかったそうだよ。

 文官や兵士はかなりの人数が勤務するようになったそうで。


 落ち着きを取り戻してきたのは、連合軍がこの国に攻めてきて三か月後くらいのことだろう。

 連合軍は司令官である隣国の王弟の元、まとまりを見せていた。

 そろそろ一部を帰国させ、別の部隊と入れ替えることになるらしい。


 そんな時に、連合軍に潜り込んでいる影の者から驚愕の知らせが届いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 意外な事実でした!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ