小さなあめ玉の夢
あめ玉が転がる。
ころころとどこまでも転がる。
しかし、あめ玉は小さいので、遠くへはいけない。
そのうち疲れて、立ち止まってしまう。
このままでは、近くしかいけない。
あめ玉は危機感を覚えた。
それでは世界の果てを見るという己の夢をかなえられないからだ。
だから、遠くへ行きたいあめ玉は、とりひきをすることにした。
ほかの動物に舐めさせてあげるかわりに、自分を遠くへ運んでほしいといったのだ。
犬や猫、カラスやねずみにくわえられたあめ玉は、舐められながら今までよりずっと、早いスピードで遠くへ行くことができるようになった。
しかし、あめ玉は、そのかわりにどんどん小さくなっていく。
命が残り少なくなっていく。
しかし、あめ玉はほかの動物と取引するのをやめなかった。
世界の果ては遠い。
想像できないくらいに、果てしなく遠い。
生きているうちにたどり着けないとわかっていても。
あめ玉は目指すことをやめなかった。
そうして、舐められつづけて、砂粒ほどのサイズになってしまったあめ玉。
結局世界の果てにはたどり着けなかったけれども、あめ玉は満足だった。
夢に生きている間は、大変でも幸せだった。
いいあめ玉生だったと思い、あめ玉は最後に日の光にとけて、なくなっていった