才能
オリビアは続けて言う。
「魔力を流してみるわね。…どう、何か感じる?」
手に意識を集中させる。
すると、オリビアの体内で何かがうごめいているのを感じた。
何だろう。あれを思い出す…あれ。
植物の細胞内の液体がぐるぐる回るやつ。
顕微鏡で葉緑体が動くのを観察する授業があった気がする。
あの現象なんていうんだったかな。全然覚えてない。
「感じます。何か動いているような…」
「そう!それが魔力の流れ。いま、ノアは魔力回路を感じ取ったということ。
この流れに意識を向ける。ちょっと打ってみるわ。」
「水の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください。
『水球≪ウォーターボール≫』!!」
オリビアは腕を前に振り出しながら、詠唱を唱えた。
オリビアが作り出した水球は直径1メートルくらいとなり、
勢いよく的に当たった。
的は破壊され、落ちてしまった。
「ざっと、こんな感じね。
あと、重要なのは放出の瞬間ね。
今みたいに腕を前に出すと、放出する時の感覚がつかみやすいわ。」
「なるほど、母上は流石ですね。」
「さっきも言ったけど、昔は結構強い方だったのよ。
都市で冒険者やったりしててね。
まあでも、これは感覚をつかむまでがかなり時間がかかるのよね。
私も苦労したわ。だから、ノアも焦る必要はないわ。」
「そうなんですね。
とりあえず、やってみますね。」
腕を前に出し、詠唱を唱える。
「風の神よ、力なき我にその力の一端をお与えください」
詠唱を始まると、さっきオリビアの体内から感じた動きがわかる。
これが魔力の流れか。
全身の神経がどのように通っているのかがわかるみたいだ。
そして、伸ばした腕に流れを集中させるイメージをする。
肩、二の腕、前腕へと意識を向け、魔力を流す。
「『風球≪ウィンドボール≫』!!!」
俺の作り出した風球は直径1メートルほどの大きさになり、
的の近くにある木にあたり、傷をつけた。
さっきとは大違いの威力。
これなら魔法と胸を張って言えるぞ!
「母上! できました!」
オリビアはとても驚いた顔をしていた。
「…すごい、すごいわ、ノア!
ちょっとコツを教えただけでこんなすぐにできるようになるなんて!
ノア、あなたは天才よ!私が保証するわ!」
「そうですか? 嬉しいです!」
美人に褒められて気分がいいな。
でも、まさかこんなに俺に才能があったなんて。
やっぱり、チートが与えられているのかもしれない。
これくらいないと中々やる気にならないしね。
「今日は頑張ったノアのために、ごちそうを準備するわ。
楽しみにしておいてね。
今日のところは、魔法は終わりにして、家に入りましょう。」
「うん、そうします。」
そういって、俺とオリビアは並んで家に入った。
時間なく短めです。
また、細胞のくだりの名称は原形質流動または細胞質流動です。